日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG10] 顕生代生物多様性の変遷:絶滅と多様化

2018年5月21日(月) 10:45 〜 12:15 102 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:磯崎 行雄(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、澤木 佑介(東京大学大学院総合文化研究科)、座長:澤木 佑介(東京大学)

11:50 〜 12:05

[BCG10-11] ケニアの大地溝帯に分布する新生代後期の珪藻土層:地球創世記の類似環境における生物進化

*鈴木 寿志1 (1.大谷大学)

キーワード:ケニア、更新世、珪藻、放射線

アフリカ東部を縦断する大地溝帯は、大陸が分裂しようとしている場である。そこではアルカリ火山岩の噴火による隆起と正断層で画され沈降した地溝の形成が起こっている。沈降した地溝の一部には水が溜まり、湖が形成されている。そのような場は、ウランやトリウムを含む火山岩の噴火とアルカリ熱水系の湧出という点で、地球創世紀に大陸が出現した頃の陸域環境に比較される。

演者は大地溝帯において起こった生物進化過程の一端を明らかにするために、ナイロビ西北西約13kmの場所に分布する更新統ムンユ・ワ・ギシェル層を調査してきた。同層は珪藻土を主体とし、所々に火山砕屑岩や凝灰岩を挟む。ムンユ・ワ・ギシェル層は、196万年前のリムル粗面岩を基盤とし、その上に約30mの厚さで堆積している。上部層の上には72.4万年前の響岩が重なる。上下の火山岩の年代を差し引きすると、123.6万年の時間間隔を記録していることになる。ただし、上部層に挟まれる凝灰岩の年代は165.5万年前で、響岩との間には大きな時間間隙がある。

演者は平成28・29年度の2回にわたり、ムンユ・ワ・ギシェル層の層序と岩石特性、珪藻化石を調べてきた。その結果、以下のことが明らかになった。
(1) 従来基盤もしくはその直上に位置するとされた黒曜石角礫岩の一部が、下部層の中に大規模な指交関係で挟在されている。(2) 中部層に降下火山灰起源とみられる凝灰岩が複数枚、および軽石を含む薄層が一枚挟まれる。(3) 黒曜石角礫岩分布地の放射線量(0.50 µSv/h)および軽石薄層分布地の放射線量(0.44 µSv/h)が、珪藻土分布域のそれ(0.14 µSv/h)より有意の差で高い。(4) 顕微鏡観察の結果、Aulacoseira属、Stephanodiscus属、Cocconeis属、Campylodiscus属などの珪藻化石が検出された。(5) Stephanodiscus属の有基突起の付随孔数は、同一個体で2~3と一定しない。(6) Stephanodiscus属の個体に虫食状の孔をもつものが認められた。