日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG40] 陸域生態系の物質循環

2018年5月24日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:加藤 知道(北海道大学農学研究院)、平野 高司(北海道大学大学院農学研究院)、佐藤 永(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野、共同)、平田 竜一(国立環境研究所)

[ACG40-P10] ウランバートル市におけるゲルからのCO2排出量のマッピング

*額尓 徳尼1王 勤学1岡寺 智大1艾 治頻1オチルバト バトヘシゲ2 (1.国立研究開発法人 国立環境研究所、2.モンゴル科学院 地理研究所)

キーワード:二酸化炭素の排出量、モンゴル、地域分布、グーグルアース

モンゴル国は、草原大国であり、牧畜産業を長く営んできた。しかし、1990年以来の市場経済の導入による経済産業の構造の急激な変化に伴い、地方から首都への人口移動が増加してきた。現在は、首都ウランバートル市に全国人口の約半数以上が暮らすことになっているため、交通や大気汚染などの都市化問題が顕在化してきた。首都大気汚染対策部門の大気汚染排出源の調査結果によると、遊牧に用いる移動式住居であるゲルは大気汚染の主要発生源である。しかし、首都圏に約18万戸のゲルが散在するため、排出源による大気汚染や温室効果ガスの空間的分布や地域特徴に関する研究が見当たらない。そこで、本研究は、首都ウランバートル市における主要な排出源であるゲルの空間分布の特定およびゲルからのCO2排出量のマッピングを行った。まず、ゲルの空間分布を特定するため、Google Earthツール及び統計言語R[1-3]を用いて、大量な画像解析を行い、ゲルを検出するアルゴリズム手法を開発した。具体的に、まず、Google Earthツールを用いてゲルが抽出可能なRGB画像を首都圏で約4万枚を取得し、地理座標情報を当て、HSL色空間法[4]で篩別する。次に、S(彩度)、H(色相)、L(明度)の算出アルゴリズム手法を用いて、ポリゴン処理を行う。さらに、ゲルの特徴に基づき、面積と形状を指標として、ポリゴン面積が20~60平米且つ円形指標0.6以上のポリゴンを対象にゲルを検出した。この手法により首都ウランバートル市に散在するゲルの抽出に成功し、主要な大気汚染の排出源を特定できた。最終的に、ゲルに燃焼される年平均の石炭と薪の量の統計値[5]に基づき、CO2排出量の係数でCO2の年間排出量を推定し、分解能が1kmメッシュの空間分布マッピングを行い、首都ウランバートル市における主要なCO2排出源であるゲルからのCO2排出量の地域分布特徴が示された。但し、石炭と薪の使用量及び燃焼率は地域での差異があると考えられる。そのため、今後実地調査を行うことにより推定結果の精度向上を図る。本研究は、二国間クレジット(JCM)推進のためのMRV等関連するモンゴルにおける技術高度化事業委託業務「モンゴル全土の草原域の二酸化炭素吸収量の評価」の一部である。

参考文献

[1] Gregoire Pau, Florian Fuchs, Oleg Sklyar, Michael Boutros, and Wolfgang Huber (2010). EBImage - an R package for image processing with applications to cellular phenotypes. Bioinformatics, 26(7), pp. 979-981, 10.1093/bioinformatics/btq046
[2] Robert J. Hijmans (2016). raster: Geographic Data Analysis and Modeling. R package version 2.5-8.
https://CRAN.R-project.org/package=raster
[3] Roger Bivand and Nicholas Lewin-Koh (2017). maptools: Tools for Reading and Handling Spatial Objects. R package version 0.9-2. https://CRAN.R-project.org/package=maptools
[4] Tsai, S.-H. & Tseng, Y.-H. (2012). A novel color detection method based on HSL color space for robotic soccer competition.. Computers & Mathematics with Applications, 64, 1291-1300.
[5] P.Qagaan (2010). Агаарын бохирдлыг бууруулах Үндэсний хорооны илтгэл