[BBG03-P08] 好塩性アーキアが生産する脂質コア中の不飽和アーキオール誘導体の構造決定
キーワード:アーキア、好塩性、エーテル脂質、構造決定
アーキアは全て特徴的な脂質コアであるアーキオール(C20イソプレノイドジエーテル)(1)を持っている。さらに好塩性アーキアはC25イソプレノイドを一つ持つC25-C20ジエーテルを生産する[1]。また近年Dawsonらは幾つかの超好塩性アーキアでは,アーキオールとC25-C20ジエーテルおよびその不飽和体が生産され,高塩分培養条件下で不飽和化合物の割合が増加することを報告した[2]。発表者は一昨年度本年会にてDawsonの提唱する構造の化合物(構造2)を既報[3]に従い合成し,そのTMS誘導体の構造解析を行なった。本化合物は,そのマスフラグメントが明らかに異なり,少なくとも2ではない二重結合の位置が異なる異性体が真の不飽和ジエーテルであることが示唆された[4]。
このアーキオール誘導体の真の構造について,1)Dawsonの不飽和ジエーテルの“真の”構造はテトラエーテル脂質の生合成過程に関する研究結果[5]から,イソプレノイドの末端側に二重結合を持った3または4であると推定した。2)また構造2の不飽和イソプレノイドのグリセロールへの結合位置が異なる異性体である5もヒドロキシアーキオール類との関連から可能性はあると考えた。そこでこの3異性体を化学的に合成し,そのトリメチルシリル(TMS)エーテル誘導体のマススペクトルを比較した。結果2から5までの化合物について誘導体化しDawsonの不飽和ジエーテルのTMS化体として報告されているマススペクトルと比較を行なった。2および5はそのマススペクトルがかなり異なり,3または4については類似しているものの少し異なる点もある,という結果になり全てがDawsonの不飽和ジエーテルのものと一致しなかった。これは,Dawsonの不飽和ジエーテルは通常のイソプレノイド生合成から生じた(たとえばフィトールのように)メチル基分岐位置に二重結合を持つものでなく,おそらく完全な飽和イソプレノイドであるアーキオールが生成した後に二重結合を生物が作ったような,全く異なった位置に二重結合を持ったものか,3と4(にさらに二重結合の異性体を含む)の混合物であると推察される。
[1] De Rosa et al., J. Gen. Microbiol., 128, 343 (1982). [2] Dawson et al. Org. Geochem., 48, 1 (2012). [3] Yamauchi Res. Org. Geochem., 29, 71 (2013). [4] Yamauchi (2016) JpGU meeting 2016 BA001-P05. [5] Nemoto et al. (2003) Extremophiles, 7, 235.
このアーキオール誘導体の真の構造について,1)Dawsonの不飽和ジエーテルの“真の”構造はテトラエーテル脂質の生合成過程に関する研究結果[5]から,イソプレノイドの末端側に二重結合を持った3または4であると推定した。2)また構造2の不飽和イソプレノイドのグリセロールへの結合位置が異なる異性体である5もヒドロキシアーキオール類との関連から可能性はあると考えた。そこでこの3異性体を化学的に合成し,そのトリメチルシリル(TMS)エーテル誘導体のマススペクトルを比較した。結果2から5までの化合物について誘導体化しDawsonの不飽和ジエーテルのTMS化体として報告されているマススペクトルと比較を行なった。2および5はそのマススペクトルがかなり異なり,3または4については類似しているものの少し異なる点もある,という結果になり全てがDawsonの不飽和ジエーテルのものと一致しなかった。これは,Dawsonの不飽和ジエーテルは通常のイソプレノイド生合成から生じた(たとえばフィトールのように)メチル基分岐位置に二重結合を持つものでなく,おそらく完全な飽和イソプレノイドであるアーキオールが生成した後に二重結合を生物が作ったような,全く異なった位置に二重結合を持ったものか,3と4(にさらに二重結合の異性体を含む)の混合物であると推察される。
[1] De Rosa et al., J. Gen. Microbiol., 128, 343 (1982). [2] Dawson et al. Org. Geochem., 48, 1 (2012). [3] Yamauchi Res. Org. Geochem., 29, 71 (2013). [4] Yamauchi (2016) JpGU meeting 2016 BA001-P05. [5] Nemoto et al. (2003) Extremophiles, 7, 235.