[G04-P06] 東京都新島における地質的特徴を活用した地球科学STEM教材化の可能性
キーワード:STEM教育、新島、高温石英、砂、教材開発、抗火石
本研究は砕屑物、特に砂の成因論の視覚化、地球科学STEM開発の提案、そして、子どもたちの鉱物に対する好奇心育成を目的として、東京都新島に産する白色の砂 (SiO2 rich)、黒色の砂 (SiO2 poor, MgFe rich)、軽石流紋岩、そして玄武岩を使用した教材開発を行った。
国内における砂の成因に関する内容は、小学校6年と中学校1年で扱われる。河川下流や海岸線に堆積した砂は、後背地の地質を反映しており、地域ごとで砂の構成鉱物は異なる。特に本州の砂は、上流部から下流部にかけての各地域の砕屑物が混ざり合い、後背地の特定が極めて難しく、なおかつ、母岩の特定ができず、砂が岩石の風化侵食から構成されることを標本から視覚化することが難しいとされてきた。
対する新島は島の殆どが流紋岩で構成される為、この地域の白色の砂は、本州の海岸砂と比較して、後背地と母岩が極めて明確であり、岩石の風化・侵食によって砂が形成される事を明示することが出来る。新島における砕屑物のコンタミネーションとしては、新島北部に産する玄武岩や新島周辺海域の砕屑物等である。その為、初学者向けの教材として有用性が認められる。また、島の北部には黒色の砂の砂浜が分布しており、後背地の地質の差異が砂浜の構成鉱物に反映することを示すことが出来る。
さらに新島砂や母岩は、新島硝子や新島耐火煉瓦などの産業・工業においても利用されている。新島硝子や新島耐火煉瓦は、日本の世界向け輸出品目の一つである。つまり、鉱物の産業・工業利用等を説明する教材として価値があり、なおかつ、鉱物を利用したSTEM教育への教材化に活用することが可能であることを示唆する。 そして、新島の砂の魅力は世界有数の比較的粒形の大きな(約 1 mm/grain) 透明度の高い高温石英(β-quartz)が多量に含んでいる為、肉眼観察ならびに実体顕微鏡観察において綺麗に見える。
この教材開発に伴って、本研究者らは、全国各地で展開されるサイエンスフェスティバルにて、新島の白色の砂・黒色の砂とその砂の母岩、軽石流紋岩(抗火石)、そして新島ガラス作品を使用して、地球科学STEM教育(科学・技術・工学・数学)の実践を行った。本研究にて科学展示ブースを展開した会場は、「第9回青少年のための科学の祭典富士山大会inごてんば」(静岡県御殿場市)で、約15分間の鉱物観察、砂と母岩の比較観察、新島ガラス工芸の紹介を行い、その中でデータを得た。子どもの参加者総数(解説後アンケート回答者)は117名 で内訳が、4歳:4名、5歳:12名、6歳:15名、7歳:18名、8歳:17名、9歳:17名、10歳:14名、11歳:6名、12歳:3名、14歳:5名、15歳:1名、16歳:3名、17歳:1名である。参加者には解説後に感想を答えてらった(質問項目:どんな事が初めて分かりましたか)。すると、岩石が粒の集まりである(7歳)、岩石が砂になる事(8歳)、岩石は鉱物が集まってできている事(10歳)などの砂の成因に関するコメントや、岩石は私たちの生活に役立っていること(7歳)、岩石からガラスが出来ること(9歳)、鉱物は加工されて生活に役立っていること(10歳)など、岩石・鉱物の二次的利用に関するコメントも確認された。これまでに、岩石・鉱物の私たちの生活における有用性の認識は、地学履修済みの中学生に対してアンケート調査154名をしたところ、56%(n=87)の生徒が「有用ではない・わからない」との回答を得られている(Takebayashi and Kumano, 2017)。故に、本教材は砂の成因のみならず、鉱物の生活に役立つことを示す実証的データの一つになりえる。
現在、世界各国では子どもたちへの科学教育においてSTEM化構想が広がりを見せ、日本も学校・博物館の教育現場に導入していく基盤が整備されつつある。これに伴い、地球科学分野でのSTEM化への構築と実践は、今後の科学教育分野において重要な課題の一つとなりつつある。本論では、地質学的視点における教材開発と、それらを活用した教育現場での実践報告の双方から、新島の砂・岩石を利用した地球科学STEM教育開発の可能性を考察する。
国内における砂の成因に関する内容は、小学校6年と中学校1年で扱われる。河川下流や海岸線に堆積した砂は、後背地の地質を反映しており、地域ごとで砂の構成鉱物は異なる。特に本州の砂は、上流部から下流部にかけての各地域の砕屑物が混ざり合い、後背地の特定が極めて難しく、なおかつ、母岩の特定ができず、砂が岩石の風化侵食から構成されることを標本から視覚化することが難しいとされてきた。
対する新島は島の殆どが流紋岩で構成される為、この地域の白色の砂は、本州の海岸砂と比較して、後背地と母岩が極めて明確であり、岩石の風化・侵食によって砂が形成される事を明示することが出来る。新島における砕屑物のコンタミネーションとしては、新島北部に産する玄武岩や新島周辺海域の砕屑物等である。その為、初学者向けの教材として有用性が認められる。また、島の北部には黒色の砂の砂浜が分布しており、後背地の地質の差異が砂浜の構成鉱物に反映することを示すことが出来る。
さらに新島砂や母岩は、新島硝子や新島耐火煉瓦などの産業・工業においても利用されている。新島硝子や新島耐火煉瓦は、日本の世界向け輸出品目の一つである。つまり、鉱物の産業・工業利用等を説明する教材として価値があり、なおかつ、鉱物を利用したSTEM教育への教材化に活用することが可能であることを示唆する。 そして、新島の砂の魅力は世界有数の比較的粒形の大きな(約 1 mm/grain) 透明度の高い高温石英(β-quartz)が多量に含んでいる為、肉眼観察ならびに実体顕微鏡観察において綺麗に見える。
この教材開発に伴って、本研究者らは、全国各地で展開されるサイエンスフェスティバルにて、新島の白色の砂・黒色の砂とその砂の母岩、軽石流紋岩(抗火石)、そして新島ガラス作品を使用して、地球科学STEM教育(科学・技術・工学・数学)の実践を行った。本研究にて科学展示ブースを展開した会場は、「第9回青少年のための科学の祭典富士山大会inごてんば」(静岡県御殿場市)で、約15分間の鉱物観察、砂と母岩の比較観察、新島ガラス工芸の紹介を行い、その中でデータを得た。子どもの参加者総数(解説後アンケート回答者)は117名 で内訳が、4歳:4名、5歳:12名、6歳:15名、7歳:18名、8歳:17名、9歳:17名、10歳:14名、11歳:6名、12歳:3名、14歳:5名、15歳:1名、16歳:3名、17歳:1名である。参加者には解説後に感想を答えてらった(質問項目:どんな事が初めて分かりましたか)。すると、岩石が粒の集まりである(7歳)、岩石が砂になる事(8歳)、岩石は鉱物が集まってできている事(10歳)などの砂の成因に関するコメントや、岩石は私たちの生活に役立っていること(7歳)、岩石からガラスが出来ること(9歳)、鉱物は加工されて生活に役立っていること(10歳)など、岩石・鉱物の二次的利用に関するコメントも確認された。これまでに、岩石・鉱物の私たちの生活における有用性の認識は、地学履修済みの中学生に対してアンケート調査154名をしたところ、56%(n=87)の生徒が「有用ではない・わからない」との回答を得られている(Takebayashi and Kumano, 2017)。故に、本教材は砂の成因のみならず、鉱物の生活に役立つことを示す実証的データの一つになりえる。
現在、世界各国では子どもたちへの科学教育においてSTEM化構想が広がりを見せ、日本も学校・博物館の教育現場に導入していく基盤が整備されつつある。これに伴い、地球科学分野でのSTEM化への構築と実践は、今後の科学教育分野において重要な課題の一つとなりつつある。本論では、地質学的視点における教材開発と、それらを活用した教育現場での実践報告の双方から、新島の砂・岩石を利用した地球科学STEM教育開発の可能性を考察する。