[G05-P16] 地学教育の高等学校-小学校接続のアプローチ
キーワード:地学への拒否感、なぜ?、高小接続
1. 高等学校の地学教員採用状況
筆者が教員採用試験を受けた平成元年には,すでに高等学校理科(地学)の募集はされていなかったため,兵庫県の教員採用試験は理科(生物)で受けて採用された.この傾向は兵庫県に限ったことではなく,全国の地学教育関係者が危機感を募らせている.地震,火山の噴火,異常気象,地球温暖化,などの問題を考える上で地学教育は欠かせないものであるし,そもそもそのような問題があろうとなかろうと,すべての理科の分野が教育されなければならないはずである.地学の履修者を増やすために,地学教育の重要性をもっと積極的に説くべきだとか,教育委員会に地学専門の教員を採用するように強く申し入れをすべきだ,理科の教員を目指す者には大学で実験実習の講座を必修とすべきだ,などの提案がある.地学の学習が重要であるということは,おそらく誰もが理解しているだろうが,その理解が行動に結びついていない.学習内容が少ないから楽だとか,センター試験で高得点が期待できるとか,地球の歴史に対するロマンを語ったりするなどしても,地学履修者を増やすことはできない.
2.筆者による小学校教員へのアプローチ
中高生の理科(地学)好きを育てるために,小学生時代の経験は極めて重要である.本校生徒で科学研究に熱心に取り組む生徒は,小学生時代に先生と自然についてよく話をした経験がある.筆者は,兵庫県教育委員会がすすめるサイエンストライやる事業(高等学校の教員を小中学校教員の授業に役立つ講師として派遣するというもの)の講師に登録しており,小学校との関係が深い.小学校の先生は,自身の地学分野の理解が十分ではないと感じており,地学分野に対する拒否感が強く,その思いが授業に反映してしまうのだという.地学分野の実験の方法がわからない,参考書に書いてはあるが児童に教えるには不安だ,野外に連れて行って露頭を見せても,岩石や鉱物を判断できず,児童に質問されたらどうしようと不安になる,という切実な声を聞く.兵庫県の若い小学校の先生は,地学の授業が開講されていなかったため,学生時代に地学の授業を受けた経験をもたない.そこで筆者は,小学校の教員に地学分野の面白さを知ってもらい,拒否感をやわらげるための講演や模擬授業をおこなっている.また,実験においては,必ずしも正解を求めるのではなく,うまくいかなかった場合にこそ学びのチャンスがあることを伝えている.このような依頼は各市町教育委員会や研修会,各小学校から多く寄せられる.
3.本校地学部員による小学生へのアプローチ
本校地学部は2014年に筆者の赴任を機に新生発足し,活発に活動を始めた.現在60名の部員が5~6班にわかれて,日々グループ研究に励んでいる.日本地質学会などの専門学会での発表や,高校生を対象にした文部科学省認定論文コンテストでは,毎年応募したすべての論文が全国上位入賞を続けている.本校の地学部は,身近な自然現象の「なぜ」を明らかにする研究活動で成果をあげると,自らの成果を小学生に伝える活動に積極的に取り組んでいる.本校の生徒が小学校に出向き,理科の授業を定期的におこなっている.この取り組みは,地元や近隣の市役所や教育委員会,市議会などを巻き込んだ活動に発展しており,地域の小学生を小学校の体育館に集めて実施する体験型実験室や,本校理科室を小学生に開放し,共同で研究活動を行う取り組みも実施している.出版されている実験書によるのではなく,高校生自身が不思議に思い,苦労して取り組んで明らかにした身近な自然現象の「なぜ」をわかりやすく伝える活動なので,教える高校生には熱が入るし,教わる小学生は目を輝かせている.
筆者が教員採用試験を受けた平成元年には,すでに高等学校理科(地学)の募集はされていなかったため,兵庫県の教員採用試験は理科(生物)で受けて採用された.この傾向は兵庫県に限ったことではなく,全国の地学教育関係者が危機感を募らせている.地震,火山の噴火,異常気象,地球温暖化,などの問題を考える上で地学教育は欠かせないものであるし,そもそもそのような問題があろうとなかろうと,すべての理科の分野が教育されなければならないはずである.地学の履修者を増やすために,地学教育の重要性をもっと積極的に説くべきだとか,教育委員会に地学専門の教員を採用するように強く申し入れをすべきだ,理科の教員を目指す者には大学で実験実習の講座を必修とすべきだ,などの提案がある.地学の学習が重要であるということは,おそらく誰もが理解しているだろうが,その理解が行動に結びついていない.学習内容が少ないから楽だとか,センター試験で高得点が期待できるとか,地球の歴史に対するロマンを語ったりするなどしても,地学履修者を増やすことはできない.
2.筆者による小学校教員へのアプローチ
中高生の理科(地学)好きを育てるために,小学生時代の経験は極めて重要である.本校生徒で科学研究に熱心に取り組む生徒は,小学生時代に先生と自然についてよく話をした経験がある.筆者は,兵庫県教育委員会がすすめるサイエンストライやる事業(高等学校の教員を小中学校教員の授業に役立つ講師として派遣するというもの)の講師に登録しており,小学校との関係が深い.小学校の先生は,自身の地学分野の理解が十分ではないと感じており,地学分野に対する拒否感が強く,その思いが授業に反映してしまうのだという.地学分野の実験の方法がわからない,参考書に書いてはあるが児童に教えるには不安だ,野外に連れて行って露頭を見せても,岩石や鉱物を判断できず,児童に質問されたらどうしようと不安になる,という切実な声を聞く.兵庫県の若い小学校の先生は,地学の授業が開講されていなかったため,学生時代に地学の授業を受けた経験をもたない.そこで筆者は,小学校の教員に地学分野の面白さを知ってもらい,拒否感をやわらげるための講演や模擬授業をおこなっている.また,実験においては,必ずしも正解を求めるのではなく,うまくいかなかった場合にこそ学びのチャンスがあることを伝えている.このような依頼は各市町教育委員会や研修会,各小学校から多く寄せられる.
3.本校地学部員による小学生へのアプローチ
本校地学部は2014年に筆者の赴任を機に新生発足し,活発に活動を始めた.現在60名の部員が5~6班にわかれて,日々グループ研究に励んでいる.日本地質学会などの専門学会での発表や,高校生を対象にした文部科学省認定論文コンテストでは,毎年応募したすべての論文が全国上位入賞を続けている.本校の地学部は,身近な自然現象の「なぜ」を明らかにする研究活動で成果をあげると,自らの成果を小学生に伝える活動に積極的に取り組んでいる.本校の生徒が小学校に出向き,理科の授業を定期的におこなっている.この取り組みは,地元や近隣の市役所や教育委員会,市議会などを巻き込んだ活動に発展しており,地域の小学生を小学校の体育館に集めて実施する体験型実験室や,本校理科室を小学生に開放し,共同で研究活動を行う取り組みも実施している.出版されている実験書によるのではなく,高校生自身が不思議に思い,苦労して取り組んで明らかにした身近な自然現象の「なぜ」をわかりやすく伝える活動なので,教える高校生には熱が入るし,教わる小学生は目を輝かせている.