日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 津波とその予測

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山本 近貞 直孝(防災科学技術研究所)、今井 健太郎(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、対馬 弘晃(気象庁気象研究所)

[HDS10-P12] 南米沖を波源とする遠地津波振幅の時間推移の共通性

*山本 剛靖1中田 健嗣1対馬 弘晃1 (1.気象研究所)

中田ほか(2017,地震学会)では、観測波形において第1波到達から最大波群到達までの時間(Tatmax)と第1波到達から振幅があるしきい値を下回るまでの時間(Tdur)について整理し、外れ値はあるものの、各観測点のTatmax、Tdur、さらにTdur/Tatmaxのそれぞれが、2010年2月27日と2015年9月17日(日付は日本時間。以下同じ)に発生した2つのチリ中部沿岸の地震による津波の間で相関をもつことを示した。しかし、2014年4月2日のチリ北部沿岸の地震による津波では、バックグラウンドレベルに対する津波振幅の比が小さく気象擾乱等により結果が乱されている観測点があって、相関を見いだすのに十分なデータが得られなかった。
そこで、本研究では、南米チリ沖及びペルー沖を波源とする津波を日本の沿岸で観測した振幅の時間推移を調査するにあたり、津波振幅の小さい事例も解析対象に含めるため、観測波形そのものからではなく、観測波形を平均化・平滑化した波形から特徴量を抽出することにした。対象とした津波は、上記3つのチリ沿岸の地震津波と、2001年6月24日と2007年8月16日のペルー沿岸の地震津波を合わせた5イベントである。気象庁の検潮所のうち、3つ以上のイベントで津波観測が認められる北海道から沖縄までの33検潮所のデータを使用した。波形の平滑化には、林ほか(2010)によるMRMS振幅を使用した。
第1波到達時が不明なデータについてMRMS振幅の立ち上がりを参考に改めて読み取ったうえで、イベントごとに全観測点のMRMS振幅の第1波到達時を揃えて平均振幅を計算した。平均振幅に対する各観測点での振幅は、いずれのイベントでも0.3倍から1.9倍の幅に収まった。
第1波到達時から12時間経過までの振幅の時間推移はチリ中部沿岸とチリ北部沿岸・ペルー沿岸の2グループに大別され、チリ中部沿岸の2イベントは比較的急な立ち上がりと減少を示すのに対し、チリ北部沿岸・ペルー沿岸の3イベントは増加と減少は緩やかである。
第1波到達時から12時間経過以降の振幅の時間推移は、5つのイベント間で大きさは異なるが似通っていた。第1波到達時の12時間後から48時間後までの期間で各イベント間の時間推移の相関を調べると、グループの異なるイベント間でも強い相関を示した。
12時間経過以降の期間で求めた振幅係数は、12時間までの期間におけるイベント間の振幅の大小関係も概ね説明した。また、5イベントの振幅係数は、地震のマグニチュードから計算した地震エネルギーの1/2乗に比例した。このことは、地震発生の時点で平均的な津波継続時間を推定できる可能性を示しているが、観測点個別や地域ごとの継続期間を推定するためには、各観測点の観測波形がMRMS振幅に対してどの程度大きな振幅をもつか検討する必要がある。