[HDS10-P13] 遠地津波のための線形分散波方程式を効率的に解く新しい方法
キーワード:遠地津波、線形分散波方程式
我々は、竹中・他 (2017, 日本地震学会)で、近地津波シミュレーションのための、デカルト座標系における2次元線形分散波方程式を効率的に解く新しい方法を提案した。2次元線形分散波方程式(例えば、Saito et al. 2010, JGR)は、分散項を含む2本の運動方程式と1本の連続の式から成るが、線流量変数に置き換えを施すことによって分散項を運動方程式から連続の式に移すことができる。すると、分散項を含まない運動方程式(2本)を陽解法、分散項を含んだ連続の式(1本)を陰解法で解くことで、分散項を含んだ運動方程式2本を陰解法で解く従来の方法に比べて計算のサイズを4分の1以下まで小さくすることができる。この分散項を含む連続の式を解く差分スキームとして2種類のスキームが提案された。さらに、秦・他 (2017, 日本地震学会)では、この2種類のスキームを既存の線形長波方程式を解くコードに実装し、これらのスキームの有効性を確認した。本研究では、竹中・他 (2017)のアイデアを、例えば太平洋を横断するような遠地の津波シミュレーションの計算に適用した。コリオリ力を含む球座標の線形分散波方程式(例えば、Tanioka, 2000, 気象研究所研究報告)に上記と同様の変換を施し、運動方程式の分散項を連続の式に移して解くスキームを提案する。このスキームでは、分散項を含む連続の式を波高の時間微分についてのポアソン方程式とみて陰解法(ポアソンソルバー)で解いた後、時間積分して波高を求める。今回ポアソンソルバーには、秦・他 (2017)と同様に収束条件の簡易さなどを考慮してICCG 法を用いる。本発表では、具体的な差分スキームを示すとともに、球座標の線形長波方程式の解との比較やデカルト座標系による分散波計算との比較など様々な計算例を通して、このスキームの特徴や有効性を示す。