日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG32] 海洋地球インフォマティクス

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:坪井 誠司(海洋研究開発機構)、高橋 桂子(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、金尾 政紀(国立極地研究所)

[MAG32-P08] 津軽海峡東部海洋レーダーデータサイト「MORSETS」による流況情報の準リアルタイム配信

*堀川 博紀1北山 智暁1齋藤 秀亮1船越 留里1佐々木 建一1山本 秀樹1渡邉 修一1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

津軽海峡東部は,日本海を北上してきた対馬暖流の分岐流である津軽暖流とオホーツク海起源と考えられている沿岸親潮が鬩ぎ合う海域であり,海峡内の海洋環境は地球規模の環境変動に大きく影響される.
この地球環境変動に対する津軽海峡の海洋環境変動の応答を把握するため,海洋研究開発機構(JAMSTEC)むつ研究所(MIO)では,津軽海峡東部を取り囲む3箇所(大畑局:むつ市大畑町木野部,岩屋局:青森県下北郡東通村岩屋,えさん局:北海道函館市大澗町)に海洋短波レーダー局を設置し,2014年4月より津軽海峡海表面における流況を継続的に観測している.
海洋短波レーダーにより取得した流向・流速の観測データは,30分毎に流況マップとして可視化し,津軽海峡東部海洋レーダーデータサイト「MORSETS」(MIO Ocean Radar data Site for Eastern Tsugaru Strait)[1]にて,インターネット上に準リアルタイムで公開している.また,MORSETSでは流況マップを過去2日間に遡ってWebブラウザ上で流況変化を連続表示することが可能であり,時刻変化による流況変化を視覚的に把握することが容易となっている.さらに,流況マップの基となる数値データについても,Webブラウザからダウンロードが可能となっており,準リアルタイムでのデータ公開・提供による漁業や海難防止,船舶航路選択,海洋環境変動研究等への利活用が見込まれる.
MORSETSの利活用の事例として,特に漁業関係において本システムが利活用されている可能性がアクセス解析の結果から示された.通常,当機構が運用するデータ公開システムでは,日中にアクセスのピークを示す傾向にあるが,MORSETSでは午前4~5時前後の早朝にアクセスのピークを示す.早朝の時間帯におけるMORSETSへのアクセスのピークは,出漁時間帯(午前4~5時前後)と良い相関を示すことから,出漁時に漁業者が海況状況の確認を行っているものと推察できる.
これらの利活用事例を踏まえ,漁業者をはじめとした利用者が必要とする海域情報の拡張とシステムの利便性向上を目的に,2017年度には津軽海峡東部沿岸域における定置水温情報を流向マップに表示する機能強化を実施した.これにより,これまでの流向・流速データの可視化による情報配信の他に,沿岸域における水温情報の変化についても情報配信が可能となった.
本発表では,津軽海峡東部海洋レーダーデータサイト「MORSETS」の紹介を行うと共に,観測データ公開による社会への観測研究成果の還元や利活用についても議論を深めたい.

参考:
[1] http://www.godac.jamstec.go.jp/morsets/j/