日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS08] 地球掘削科学

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山田 泰広(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)、黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系、共同)、菅沼 悠介(国立極地研究所)

[MIS08-P12] 掘削サイトC0019の応力状態決定を目的としたコア試料のASRコンプライアンス比測定

*永田 翔1林 為人1 (1.京都大学)

キーワード:東北地方太平洋沖地震調査掘削、非弾性ひずみ回復法、原位置応力測定

東北沖において2011年に北米プレートと太平洋プレートの境界で東北地方太平洋沖地震が発生した。この地震直後の日本海溝付近の震源域における応力状態の把握のために,IODP第343次研究航海において掘削サイト C0019から採取されたコア試料に対して非弾性ひずみ回復法(ASR法)が適用されている。このASR法では応力の絶対値を推定するために、コア試料の物性値であるASRコンプライアンス比が必要となる。本研究では,一軸圧縮状態で先行応力の載荷・保持・除荷の後に発生するASRを測定することにより、コンプライアンス比の経時変化特性を評価したうえ、その比を用いて原位置応力の大きさの決定を行った。

ASRコンプライアンス比の測定は次のように行った。船上でのASR測定で使用した直径が約56 mmコア試料を直径40 mmの円柱状にするとともに、円柱面に直交する両端面が水平になるように加工した。この試料に一軸圧縮の先行応力を24時間載荷することで試料にひずみを生じさせ,除荷した後の非弾性ひずみ回復の経時変化を軸方向と円周方向で測定した。ある程度の時間が経過すれば十分にひずみが回復し、ASRコンプライアンス比の値は一定になる傾向が認められた。ASRコンプライアンス比がほぼ一定になるまでの時間は、掘削直後にコアに生じる非弾性ひずみ回復が十分回復するまでの時間に対して短いため,この比を定数としてASR法に適用できると考えられる。

ASRコンプライアンス比の測定を二つの試料(海底下深度約177mと697m)で行った。それぞれに対して、一軸圧縮応力を数段階に分けて試験することでASRコンプライアンス比の応力レベル依存性を調べるとともに,測定したコア試料の原位置鉛直応力に最も近い先行応力の大きさで求めたコンプライアンス比を用いて、原位置応力状態を決定した。その結果、この2深度とも、正断層の応力状態であることが確認された。