[MIS10-P18] 後期完新世における南極宗谷の沿岸湖沼の珪藻化石分析を用いた古環境復元
キーワード:南極、完新世、湖沼堆積物、珪藻
南極氷床は地球上で最も大きい氷床であり、世界の氷河の90 %を南極氷床が占めている。このように莫大な氷に覆われている南極大陸は地球全体の気候に重要な働きをしているとともに、地球全体の変化が顕著に反映される場所でもある。東南極の宗谷海岸には南極氷床の後退により形成された数多い湖沼が分布している。氷床の拡大期には海であったところが氷床の後退により陸化し、湖沼として形成されたとみられている。
研究方法として用いる珪藻分析は、真核藻類の一つである珪藻を用いる方法である。珪藻はケイ酸質の殻を持っているため、化学的・物理的風化に強く、堆積物中に化石としてよく保存されることから、現生や過去の環境を解釈するうえで極めて有効である。さらに珪藻はあらゆる水域に生息しており、10万種以上いるともいわれるほど多様な生物である。それぞれの種は好む生息環境が異なり、種を同定することで水域のpH、塩分、水温などの情報を得ることができる。珪藻は南極大陸の湖沼や融氷水の川を始め、水分を持つ土壌中までほとんどの水域に存在し、化石としてよく保存される特徴から南極の環境変動を復元するための重要な指標の一つである。
本研究は東南極宗谷海岸の沿岸に分布している湖沼から採集した堆積物コア(親子池:Ok4C-01、丸湾南池:MwS4C-01、丸湾大池:Mw4C-01)について、堆積物中の珪藻化石群集の時系列分析を用いて後期完新世における湖沼の形成過程・水環境の変遷を復元することを目的とする。
本研究では放射性炭素年代測定、堆積層の観察,元素分析(CNS測定)、クロロフィル化合物やカロチノイドの分析、藻類やシアノバクテリアの観察ならびに珪藻分析の結果から、3つの海水起源の淡水湖の親子池・丸湾南池・丸湾大池の沿岸海の環境から淡水湖沼へ変遷した時期を復元した。親子池(Ok4C-01)では1260年前までは沿岸の環境であったが、塩分による成層があったと考えられる汽水湖の時期を経て1000年前からは淡水湖の環境が確立したことが分かった。丸湾南池(MwS4C-01)2560年前まで沿岸の環境であったところが、親子池と同じく成層化した汽水湖の後、2330年前からは淡水湖の環境に変遷してきた。丸湾大池(Mw4C-01)では2950年前まで沿岸の環境であって、その後成層化した汽水湖から2800年前に淡水湖になったことが明らかになった。
3湖沼に共通して海から隔離され淡水湖になる過程で、 珪藻群集の多様性の減少し、付着性珪藻のみが産出することが分かった。沿岸環境の時期には浮遊性・付着性ともに種が豊富であったが、 淡水湖になると浮遊性の珪藻は全く産出せず、付着性の珪藻だけが産出するようになる。このような多様性の減少は海洋からの隔離により湖沼内では低塩化と低栄養化が進んだことを示唆する。
海洋の環境から淡水湖までの変遷にかかった期間を見ると、親子池では260年、丸湾南池では230年、丸湾大池では140年と湖沼間で期間の差がでた。このような期間の差は淡水の供給源、海洋からの影響程度から起因したと考えている。最も変遷期間が短い丸湾大池の場合、氷床からの融氷水を直接受けており、丸湾南池からの流入もある。最も長い親子池の場合は淡水の起源が氷床ではなく、融雪水のみを受ける。3つの湖沼の変遷過程とTakano et al. 2012の宗谷海岸の相対的海水面変化の結果を比較すると先行研究の平均隆起速度の3.2 mm/yrと整合性(親子池1.72 mm/yr, 丸湾大池3.8 mm/yr, 丸湾南池3.5 mm/yr)のある結果が出た。この結果は東南極地域の他の露岩地域よりも相対的海水面の変動が宗谷海岸で完新世以降に激しかったことが分かる。
研究方法として用いる珪藻分析は、真核藻類の一つである珪藻を用いる方法である。珪藻はケイ酸質の殻を持っているため、化学的・物理的風化に強く、堆積物中に化石としてよく保存されることから、現生や過去の環境を解釈するうえで極めて有効である。さらに珪藻はあらゆる水域に生息しており、10万種以上いるともいわれるほど多様な生物である。それぞれの種は好む生息環境が異なり、種を同定することで水域のpH、塩分、水温などの情報を得ることができる。珪藻は南極大陸の湖沼や融氷水の川を始め、水分を持つ土壌中までほとんどの水域に存在し、化石としてよく保存される特徴から南極の環境変動を復元するための重要な指標の一つである。
本研究は東南極宗谷海岸の沿岸に分布している湖沼から採集した堆積物コア(親子池:Ok4C-01、丸湾南池:MwS4C-01、丸湾大池:Mw4C-01)について、堆積物中の珪藻化石群集の時系列分析を用いて後期完新世における湖沼の形成過程・水環境の変遷を復元することを目的とする。
本研究では放射性炭素年代測定、堆積層の観察,元素分析(CNS測定)、クロロフィル化合物やカロチノイドの分析、藻類やシアノバクテリアの観察ならびに珪藻分析の結果から、3つの海水起源の淡水湖の親子池・丸湾南池・丸湾大池の沿岸海の環境から淡水湖沼へ変遷した時期を復元した。親子池(Ok4C-01)では1260年前までは沿岸の環境であったが、塩分による成層があったと考えられる汽水湖の時期を経て1000年前からは淡水湖の環境が確立したことが分かった。丸湾南池(MwS4C-01)2560年前まで沿岸の環境であったところが、親子池と同じく成層化した汽水湖の後、2330年前からは淡水湖の環境に変遷してきた。丸湾大池(Mw4C-01)では2950年前まで沿岸の環境であって、その後成層化した汽水湖から2800年前に淡水湖になったことが明らかになった。
3湖沼に共通して海から隔離され淡水湖になる過程で、 珪藻群集の多様性の減少し、付着性珪藻のみが産出することが分かった。沿岸環境の時期には浮遊性・付着性ともに種が豊富であったが、 淡水湖になると浮遊性の珪藻は全く産出せず、付着性の珪藻だけが産出するようになる。このような多様性の減少は海洋からの隔離により湖沼内では低塩化と低栄養化が進んだことを示唆する。
海洋の環境から淡水湖までの変遷にかかった期間を見ると、親子池では260年、丸湾南池では230年、丸湾大池では140年と湖沼間で期間の差がでた。このような期間の差は淡水の供給源、海洋からの影響程度から起因したと考えている。最も変遷期間が短い丸湾大池の場合、氷床からの融氷水を直接受けており、丸湾南池からの流入もある。最も長い親子池の場合は淡水の起源が氷床ではなく、融雪水のみを受ける。3つの湖沼の変遷過程とTakano et al. 2012の宗谷海岸の相対的海水面変化の結果を比較すると先行研究の平均隆起速度の3.2 mm/yrと整合性(親子池1.72 mm/yr, 丸湾大池3.8 mm/yr, 丸湾南池3.5 mm/yr)のある結果が出た。この結果は東南極地域の他の露岩地域よりも相対的海水面の変動が宗谷海岸で完新世以降に激しかったことが分かる。