日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG23] 惑星大気圏・電磁圏

2018年5月20日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:関 華奈子(東京大学大学院理学系研究科)、今村 剛(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、寺田 直樹(東北大学大学院理学研究科、共同)、前澤 裕之(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学科)

[PCG23-P05] 弱磁場天体磁気圏におけるプラズマダイナミクスの全粒子シミュレーション解析

*沖 知起1臼井 英之1寺田 直樹2関 華奈子3三宅 洋平1加藤 雄人2八木 学4 (1.神戸大学大学院システム情報学研究科、2.東北大学大学院理学研究科、3.東京大学大学院理学系研究科、4.理化学研究所計算科学研究機構)

キーワード:全粒子シミュレーション、弱磁場天体、小型磁気圏、プラズマダイナミクス

本研究の目的は、弱い固有磁場を持つ小型天体と太陽風との相互作用によって形成される小型磁気圏を3次元電磁粒子シミュレーションにより再現し、その中でのプラズマダイナミクスを粒子の軌道レベルで理解することである。代表的な弱磁場磁気圏としては水星磁気圏がある。これまでの観測から、水星の固有磁場を形成する磁気モーメントは地球のものよりも約2000倍程度小さく、地球磁気圏の約1/20のサイズの小型磁気圏が形成されると予想されている。また、水星本体が磁気圏の中に占める割合が大きいことも特徴の一つである。このような特異な水星磁気圏の巨視的構造については、磁気流体力学(MHD)シミュレーション解析が試みられているが、磁気圏各領域形成におけるイオンや電子の運動論的効果の役割や重要性に関する議論はまだ進んでいない。
 本研究では、電子及びイオンを粒子として扱う全粒子シミュレーションにより、弱磁場小型磁気圏内のプラズマダイナミクスに関して粒子軌道を含めて考察を行う。シミュレーションモデルでは、弱い磁気ダイポールを持つ小型球体を中央に置き、境界領域から南向きIMFを持つ太陽風を流す。昼間側において、ダイポール中心から磁気圧と太陽風動圧が釣り合う点までの距離をDpとすると、水星環境の場合、イオン慣性長λiに対するDpの比は10以上になるが、今回は、運動論的効果を強調させるためにλi/Dp=1と設定した。また, 球体半径をRbとすると、Rb/Dp=0.6とし、磁気圏における球体の割合を比較的大きく取った。これまで、赤道面におけるプラズマ空間分布のdawn-dusk非対称性について報告したが、今回は、その領域におけるプラズマダイナミクスについて粒子軌道解析を含めて行い、非対称分布形成に関する考察を行った。特に、南向きIMFと磁気圏磁場が相殺する領域において電子の加速が見られたので、そのメカニズムについて定量的な解析を行った。また、赤道面のみならず、極域や磁気圏尾部領域におけるプラズマダイナミクスについても着目し、小型天体近傍の内部磁気圏において太陽風プラズマがどのような振る舞いをしているかについて解析も実施した。同時に小型天体表面に流入するプラズマフラックス量から表面帯電や電界についても検討を行った。これらの知見は、水星磁気圏における外圏起源のイオン(Na+など)の分布、加速などを理解する上で重要である。今後、今回形成した磁気圏環境下に、あるスケールハイトを持つ重イオンや光電子の空間分布を導入し、小型磁気圏環境におけるそれらの分布及びダイナミクスを解き明かすことも計画している。