日本地球惑星科学連合2018年大会

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[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 海洋底地球科学

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)

[SCG61-P07] 佐田岬半島沖における詳細海底地形、浅層構造、重力調査

*富士原 敏也1金松 敏也1笠谷 貴史1 (1.海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センター)

キーワード:佐田岬半島、中央構造線、サンドウェーブ、海底地形、サブボトムプロファイラ、重力異常

調査船新青丸KS-16-E01航海(2016年6月27日:横須賀~7月2日:横須賀)で、佐田岬半島沖瀬戸内海において、海底地形、浅層構造、重力調査を行った。本調査は中央構造線断層帯の詳細マッピング、基礎地質情報取得が目的である。中央構造線断層帯の西端は瀬戸内海の海域にあると推定されている。

調査域は半島の先端部、海岸線から約1 kmの沖から南北約8 km、東西約11 kmの範囲である。調査主測線は海岸線に直交する北西~南東方向で、測線間隔は約280 mであった。浅層構造調査は5測線おき、約1400 m間隔で行われた。船速は海底地形調査時に約8 kt、浅層構造調査時は約4.5 ktであった。

海底地形はマルチビーム音響測深機SeaBat 7125SV2 (200 or 400 kHz)を用いて調査された。航海中に9回のXBT観測を行い海中音速構造を更新し、また、得られた水深データに松山検潮所の潮位データを利用して潮位補正を行い、精密な海底地形が得られた。浅層構造調査にはサブボトムプロファイラKongsberg TOPAS PS18 (1次波15-21 kHz、2次波0.5-6.0 kHz)が用いられた。船上重力計はMicro-g LaCoste Air-Sea Gravity Meter System II (S-177)である。航海前後のJAMSTEC横須賀着岸時に、重力結合のための重力計測が行われた。重力値のドリフトは無かったのでドリフト補正は行っていない。フリーエア重力異常の計算には測地基準系1980に基づく正規重力式を使用した。調査域内で主測線に交差する測線とのクロスオーバーエラーの標準偏差は1.79 mGalである。ブーゲー重力異常の計算では本航海で調査した海底地形を用いた。仮定密度は2.67 g/cc (2670 kg/m3)とした。

調査域内での水深は60~120 mであった。調査域東側の海底地形には、サンドウェーブ、メガリップル構造が見られた。サンドウェーブ、メガリップルは北西~南東走向で、波長は約200 m、高さは約20 m、メガリップルの波長は約40 m、高さは約3 mである。これらは強い潮流により形成され維持されているものと考えられる。調査域の西側はサンドウェーブが発達せず、比較的滑らかな海底地形である。既存研究で報告されている中央構造線断層帯(産業技術総合研究所地質調査総合センター活断層データベース)に対応するような段差地形、横ずれ断層の活動によって形成されたと考えられる窪みが見られた。本調査は2016年熊本地震後間もなくに行われたが、最近の断層活動を示唆するような、シャープな段差形状(地表断層)を持つ海底地形などは見つからなかった(金松他, 2017)。

調査域東側ではサブボトムプロファイラ記録が不明瞭であった。これは海底面のサンドウェーブを構成する砂層により音響の透過が阻害されているためと推定される。調査域西側のサブボトムプロファイラ記録からは、完新世と更新世の堆積層境界と解釈できる音響層序(e.g. 七山他, 2002)が確認された。
本研究によって求められた重力異常は、既存研究とも調和的(小泉他, 1994; 大野他, 1994; 地質調査所, 2000; 名和他, 2008)で、中央構造線に沿って重力異常の急変帯があり、海岸沿いの南東側が高異常、北西側が低異常となっている。測線密度が高い本調査でも、極めて2次元性のある重力異常パターンであることがわかった。より高分解能である低速4.5 ktの測線計測にも短波長(波長数百m以下)の重力異常が見られないことは、浅層構造内の密度変化が小さいことを示唆し、重力異常はより深部の重力基盤構造を反映するものと思われる。本研究による重力異常プロファイルは重力変化をより正確にとらえている。中央構造線に直交するプロファイルは、既存調査と比較して、下に凸な形状になっている。調査域付近の中央構造線の地殻構造は、三波川変成岩帯と境を接する領家変成岩帯が、リストリック正断層によってずれ下がりハーフグラーベンが形成され、グラーベンを堆積層が埋めたと解釈されている(e.g. 由佐他, 1992)。本研究によって推定される下に凸な重力基盤構造(三波川帯)の形状は、リストリック断層を伴うハーフグラーベン構造を支持する。