[SCG63-P03] ローソナイトの脱水と稍深発地震に関する実験的研究
キーワード:ローソナイト、稍深発地震、脱水不安定、その場観察
沈み込み帯における稍深発地震は,その震源での圧力下では岩石の摩擦強度が高くなると推定されるため,浅発地震と同じメカニズムとしての地震は発生しないと考えられる.発生機構として主に相転移断層モデル (Kirby, 1987),塑性変形の熱的不安定モデル (Ogawa, 1987),脱水不安定モデル (Raleigh and Paterson, 1965) が考えられている.脱水不安定モデルは含水鉱物が脱水することにより生じる間隙水が岩石の有効法線応力が低下させるため,含水鉱物が安定な稍深発地震の発生する高圧下でも不安定すべりが発生するというものである (Kita et al., 2006).近年,脱水不安定モデルはその是非が問われている.Okazaki & Hirth (2016)はGrigg変形試験機を用いてローソナイトを封圧1GPaの下で脱水境界を跨ぐように昇温変形実験を行なった.その結果,不安定すべりを観測し,ローソナイトのすべり面に沿ってアノーサイトが分布していたため,ローソナイトの脱水不安定が稍深発地震を引き起こすとしている.しかしIncel et al. (2017)はローソナイトとグロコフェンの混合物をD-DIA変形試験機を用いて封圧2.5GPaのもとで変形させ,ローソナイトの脱水境界を跨がないにも関わらず脆性破壊を観測したため,ローソナイトの脱水と脆性破壊には関係性がない,としている.このように,ローソナイトの脱水により稍深発地震が発生するか否かは明らかにされていない.
本研究ではローソナイトの変形実験を行い,脱水不安定モデルの検討を行った.試料はローソナイトの粉末(粒径20~45μm)を用い,D-CAP 700変形試験機を用いて一軸圧縮と加熱を同時に行った.その際,試料の応力,歪測定,鉱物同定には放射光を用いた.
封圧4.5GPa,270℃の下で試料を1時間焼結させた後,3時間で歪速度3.35×10-5 s-1の変形(最大歪0.4)、670℃への昇温を行った結果,ローソナイトは脱水していないにも関わらず,差応力は4.5GPaのピークを過ぎた後,急速に歪軟化を示した.また,組織観察を行った結果,塑性変形組織は見られず脆性破壊とすべり面が見られた.
ローソナイトが脱水していないにも関わらず脆性破壊が起きたという点においてIncel et al. (2017)と調和的な結果となった.またOkazaki & Hirth (2016),Incel et al. (2017)と本研究を比較した結果,ローソナイトの破壊強度に圧力依存性があることがわかった.従って,ローソナイトは4.5GPa(稍深発地震の発生深度である地下150kmに相当)の下でも脆性的に振る舞うと考えられる.
本研究ではローソナイトの変形実験を行い,脱水不安定モデルの検討を行った.試料はローソナイトの粉末(粒径20~45μm)を用い,D-CAP 700変形試験機を用いて一軸圧縮と加熱を同時に行った.その際,試料の応力,歪測定,鉱物同定には放射光を用いた.
封圧4.5GPa,270℃の下で試料を1時間焼結させた後,3時間で歪速度3.35×10-5 s-1の変形(最大歪0.4)、670℃への昇温を行った結果,ローソナイトは脱水していないにも関わらず,差応力は4.5GPaのピークを過ぎた後,急速に歪軟化を示した.また,組織観察を行った結果,塑性変形組織は見られず脆性破壊とすべり面が見られた.
ローソナイトが脱水していないにも関わらず脆性破壊が起きたという点においてIncel et al. (2017)と調和的な結果となった.またOkazaki & Hirth (2016),Incel et al. (2017)と本研究を比較した結果,ローソナイトの破壊強度に圧力依存性があることがわかった.従って,ローソナイトは4.5GPa(稍深発地震の発生深度である地下150kmに相当)の下でも脆性的に振る舞うと考えられる.