[SCG63-P04] 低–高速度域条件下における速度状態依存摩擦構成則のパラメターのすべり速度依存性
キーワード:摩擦、摩擦実験、速度状態依存摩擦構成則
1. はじめに
速度状態依存摩擦構成則は、すべり弱化や断層の強度回復などの特徴的な摩擦挙動を記述することができることから、地震サイクルのシミュレーションなどで利用されている。この構成則は、元来低速度域条件下(<mm/s)で行われた摩擦実験の結果を説明するために提唱されたものであり、中速度域で見られる緩かな弱化や、高速度域で見られる急激な弱化を記述できるかどうかは未だ明らかになっていない。
速度状態依存摩擦構成則はa , b , L の3つのパラメターを用いて記述される。これらは一定として扱われることが多いが、実際には摩擦実験の条件によってその値が変わることが知られており、低速度域条件下にて行われた実験から、a , b , L の値はそれぞれ、a とb は10-3-10-2のオーダーを、L はµmのオーダーとなることが報告されている。しかし、これらのパラメターのオーダーでは中-高速度域にて見られる弱化現象を説明することはできない。したがって、速度状態依存摩擦構成則が中-高速度域においても適用可能かどうかを議論するためには、実際に中-高速度域条件下における摩擦実験を行い、その結果を用いてそれぞれのパラメターの値を推定することが必要である。
この発表では、本研究で行った摩擦実験およびパラメター推定の結果について報告する。ただし、本研究で行った実験の条件は、「低」-高速度域であることに注意されたい。
2. 方法
実験は京都大学の回転式中-高速剪断摩擦試験機を用いて行った。実験条件は、室温・室内湿度であり、垂直応力は1.5 MPaである。試料として、ジンバブエ産の斑レイ岩を、内径・外径がそれぞれ26・40 mmの円筒形となるよう加工したものを一対使用した。すべり速度は、88.1 µm/sから881 mm/sであり、速度ステップ実験と速度一定実験の2種類の実験を行った。速度状態依存摩擦構成則の各パラメター値の推定には、Levenberg-Marquardt法を使用した。
3. 結果
3.1 速度一定実験
摩擦係数の定常値は、~200 mm/sのすべり速度まではほぼ一定の値をとり、そのすべり速度を超えると急激に減少した。この速度弱化はRice [2006]によるflash heatingの記述式をよくフィットさせることができたため、~200 mm/sを超えたすべり速度域においてflash heatingが起きていたと考えることができる。
3.2 速度ステップ実験
実験結果から推定された速度状態依存摩擦構成則のパラメターのすべり速度に対する依存性は以下の通りであった。パラメターa は0.05よりも低い値をとり、ほぼ一定であった。パラメターb は0.5よりも低い値をとり、0.1-1 mm/sのすべり速度まではほぼ一定であったが、そのすべり速度を超えると急激に増加した。パラメターL は0.3 mよりも低い値をとり、すべり速度に対して線型に増加した。
パラメターb と摩擦係数の定常値の挙動が急変するすべり速度は大きく異なる(パラメターb は0.1-1 mm/sであるのに対し、摩擦係数の定常値は~200 mm/s)。この違いは、パラメターb の変化はflash heating以外のものが原因であることを示唆している。
パラメターL については、実験室内での摩擦実験から推定される値と天然の断層を解析して得られる値との間に大きな違いがあることが知られている。この違いは、これまではスケール則を用いて説明されてきた。しかし、本研究で得られたパラメターL の線型的なすべり速度に対する依存性は、スケール則とは全く異なるものである。この依存性を使うことで、断層の摩擦特性を異なる視点から解釈できる可能性がある。
速度状態依存摩擦構成則は、すべり弱化や断層の強度回復などの特徴的な摩擦挙動を記述することができることから、地震サイクルのシミュレーションなどで利用されている。この構成則は、元来低速度域条件下(<mm/s)で行われた摩擦実験の結果を説明するために提唱されたものであり、中速度域で見られる緩かな弱化や、高速度域で見られる急激な弱化を記述できるかどうかは未だ明らかになっていない。
速度状態依存摩擦構成則はa , b , L の3つのパラメターを用いて記述される。これらは一定として扱われることが多いが、実際には摩擦実験の条件によってその値が変わることが知られており、低速度域条件下にて行われた実験から、a , b , L の値はそれぞれ、a とb は10-3-10-2のオーダーを、L はµmのオーダーとなることが報告されている。しかし、これらのパラメターのオーダーでは中-高速度域にて見られる弱化現象を説明することはできない。したがって、速度状態依存摩擦構成則が中-高速度域においても適用可能かどうかを議論するためには、実際に中-高速度域条件下における摩擦実験を行い、その結果を用いてそれぞれのパラメターの値を推定することが必要である。
この発表では、本研究で行った摩擦実験およびパラメター推定の結果について報告する。ただし、本研究で行った実験の条件は、「低」-高速度域であることに注意されたい。
2. 方法
実験は京都大学の回転式中-高速剪断摩擦試験機を用いて行った。実験条件は、室温・室内湿度であり、垂直応力は1.5 MPaである。試料として、ジンバブエ産の斑レイ岩を、内径・外径がそれぞれ26・40 mmの円筒形となるよう加工したものを一対使用した。すべり速度は、88.1 µm/sから881 mm/sであり、速度ステップ実験と速度一定実験の2種類の実験を行った。速度状態依存摩擦構成則の各パラメター値の推定には、Levenberg-Marquardt法を使用した。
3. 結果
3.1 速度一定実験
摩擦係数の定常値は、~200 mm/sのすべり速度まではほぼ一定の値をとり、そのすべり速度を超えると急激に減少した。この速度弱化はRice [2006]によるflash heatingの記述式をよくフィットさせることができたため、~200 mm/sを超えたすべり速度域においてflash heatingが起きていたと考えることができる。
3.2 速度ステップ実験
実験結果から推定された速度状態依存摩擦構成則のパラメターのすべり速度に対する依存性は以下の通りであった。パラメターa は0.05よりも低い値をとり、ほぼ一定であった。パラメターb は0.5よりも低い値をとり、0.1-1 mm/sのすべり速度まではほぼ一定であったが、そのすべり速度を超えると急激に増加した。パラメターL は0.3 mよりも低い値をとり、すべり速度に対して線型に増加した。
パラメターb と摩擦係数の定常値の挙動が急変するすべり速度は大きく異なる(パラメターb は0.1-1 mm/sであるのに対し、摩擦係数の定常値は~200 mm/s)。この違いは、パラメターb の変化はflash heating以外のものが原因であることを示唆している。
パラメターL については、実験室内での摩擦実験から推定される値と天然の断層を解析して得られる値との間に大きな違いがあることが知られている。この違いは、これまではスケール則を用いて説明されてきた。しかし、本研究で得られたパラメターL の線型的なすべり速度に対する依存性は、スケール則とは全く異なるものである。この依存性を使うことで、断層の摩擦特性を異なる視点から解釈できる可能性がある。