日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT26] 地殻応力研究の最前線:観測・実験・モデリングの統合

2018年5月20日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:呉 泓昱(海洋研究開発機構)、林 為人(京都大学大学院工学研究科)、真田 佳典((国研)海洋研究開発機構、共同)、Chan Chung-Han(Earth Observatory of Singapore, Nanyang Technological University)

[SIT26-P02] 断層の滑りやすさを考慮した応力逆解析

*佐藤 活志1 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:応力逆解析、小断層解析、滑り傾向

構造地質学や地震学で用いられる応力逆解析は,断層が剪断応力と平行に滑るというWallace-Bott仮説に基づいている.この仮説は剪断応力や法線応力の大きさに何ら仮定を設けないので,高間隙水圧や低摩擦の条件で滑る断層や,既存の弱面を利用する断層など,いわゆるmis-orientedな方位を持つ断層を許容する.しかしその反面,応力に対する制約が弱いので,Wallace-Bott仮説のみに依拠する解析法は応力の検出能が高くない.そこで本研究は,断層の滑りやすさを表すfault instability(Vavrycuk et al, 2013; Sato, 2016)の評価を組み込んで,応力の検出能向上を試みた.

Mohrダイアグラム上で断層面に働く剪断応力と法線応力を表す点と,摩擦則の直線との距離が小さいほど断層は滑りやすいと考えられる.そこで,その距離が小さいほど大きくなるようにfault instabilityを定義する.Fault instabilityの算出には摩擦係数が必要である.本研究は応力をグリッドサーチで決定するが,候補の応力ごとに最適な摩擦係数をSato (2016)の方法で決定した.その摩擦係数に基づいて算出したfault instabilityを用いて,応力の適合度に重み付けをした.これにより,滑りやすい方位の断層面が多くなるような応力が検出されやすくなる.

本手法を,大分県別府湾周辺に分布する更新統碩南層群を切る小断層群に適用した.その結果,NNE-SSW引張,NNW-SSE引張,E-W引張の3つの正断層型応力が検出された.従来の解析法(Sato, 2006)では1つないし2つの応力しか検出できなかったが,本研究の改良により検出能が向上したことが確かめられた.

References
Sato, K., 2006, Tectonophysics, 421, 319-330.
Sato, K., 2016, Journal of Structural Geology, 89, 44-53.
Vavrycuk, V., Bouchaala, F. and Fischer, T., 2013, Tectonophysics, 590, 189-195.