[SSS06-P03] 津波沿岸反射を用いたテ・アラロア地震 (ニュージーランド,Mw 7.1) のセントロイド水平位置・断層サイズの推定
キーワード:2016年テ・アラロア地震、ニュージーランド、津波、沿岸反射波、セントロイドモーメントテンソル(CMT)
2016年9月1日 (UTC) に,ニュージーランド (NZ) 北島の北東の~ 80 km沖合においてMw 7.1の地震が発生した (GCMT, テ・アラロア地震).この地震は正断層型の発震機構解を持ち,ヒクランギ沈み込み帯に沈み込むプレートの内部で発生したと考えられている (Warren-Smith et al., 2018).地震発生時,震源域から~ 150 km南に海底圧力計が設置されており,震源域からの直達波 (振幅 ~ 2 cmの引き波) と沿岸での反射波 (~ 1.5 cmの押し波) が明瞭に観測された.この地震についてGCMT,USGS,およびNZのGNS Science により展開されているGeoNet観測網によってセントロイドモーメントテンソル (CMT) 解が推定されている.これらの深さ,走向,傾斜,すべり角,地震モーメントの値はほぼ等しいが,それらの水平位置は異なる.GCMT,USGSのセントロイドはいずれも沿岸から北東に~ 80 km離れた点にあるが,両者は南北に~ 20 km離れている.また,GeoNetセントロイドは,GCMT,USGSのセントロイドよりもさらに~ 50 km北東にある.セントロイド位置の推定精度は,観測点のカバレッジ,S/N比や地震波速度構造の誤差などの条件に左右される.特に,この地震は沿岸から遠く離れた沖合で発生したため,地震波形からセントロイド水平位置を拘束することは容易ではないと考えられる.一方,津波の伝播速度は地震波よりもはるかに遅く,また,津波の伝播過程の再現に必要な詳細な海底地形は高い精度で観測可能である.また,地震波を用いて震源断層のサイズを推定する場合,断層面上の破壊伝播過程速度と断層サイズの間にはトレードオフの関係があり正確に推定するのが難しい一方,津波の波源分布の空間的広がりはおおよそ震源断層の広がりによって決まるため,震源断層のサイズを拘束するのにも津波は有効であると考えられる.本研究では,2016年にニュージーランドで発生したテ・アラロア地震について,海底圧力計が捉えた津波記録を用いてセントロイドの位置および断層サイズの推定を試みた.
まず,セントロイドの水平位置をグリッドサーチにより推定した.断層のスケーリング則 (Wells and Coppersmith, 1994) に基づいて矩形断層を仮定して津波を計算し,最も観測波形を説明する震源断層の水平位置を探索した.この際,深さ,マグニチュード,走向,傾斜,すべり角についてはGCMTの値を用いた.観測波形の再現度の評価の指標として,計算波形と観測波形のVR (Variance Reduction) を用いた.まず,津波の直達波を説明するセントロイドを探索したところ,最良解の水平位置はGeoNet解の近傍 (北に~ 15 km) に得られた.しかし,VRが高い領域 (VRが最良解のVRの90%より大きくなる領域) の水平方向の広がりは西南西–東北東方向に~ 100 kmとなり,GCMTのセントロイドもこの領域に含まれていた.したがって,セントロイドの位置は拘束できていないと考えられる.次に,沿岸からの反射波をVRの計算に使用してセントロイド位置の探索を試みたところ,最良解はGCMTセントロイドから北西約10 kmに得られた.この時のVRが高い領域の広がりは西南西–東北東方向に~ 40 kmとなり,その中にGeoNetおよびUSGSのセントロイド位置は含まれていなかった.このことから,この地震のセントロイドの位置としてGCMTの位置が最も適しており,沿岸からの反射波を使うことで,地震のセントロイドの位置が拘束できたと考えられる.
続いて,震源断層の大きさを変えて津波を計算することにより,震源断層の大きさの推定を試みた.計算では,断層の長さ (L) と幅 (W) の比をL/W=2とし,GCMTの地震モーメントの値に固定した.その結果,津波の直達波部分のみを用いた場合の断層の長さはL = 40 ± 20 kmと推定された.一方,沿岸からの反射も用いて断層の長さを推定すると,L = 50 ± 15 kmとなった.断層サイズはさほど拘束できていないと考えられるものの,断層長さの上限はほぼ同程度となり,また沿岸からの反射を用いることで極端に小さい断層 (L < ~ 30 km) は不適であることが分かった.このときの解析結果を用いると,地震時の応力降下量は ~ 0.5 – 3.0 MPa程度となり,おおむね一般的な値 (e.g., Kanamori and Anderson, 1975) が得られた.
まず,セントロイドの水平位置をグリッドサーチにより推定した.断層のスケーリング則 (Wells and Coppersmith, 1994) に基づいて矩形断層を仮定して津波を計算し,最も観測波形を説明する震源断層の水平位置を探索した.この際,深さ,マグニチュード,走向,傾斜,すべり角についてはGCMTの値を用いた.観測波形の再現度の評価の指標として,計算波形と観測波形のVR (Variance Reduction) を用いた.まず,津波の直達波を説明するセントロイドを探索したところ,最良解の水平位置はGeoNet解の近傍 (北に~ 15 km) に得られた.しかし,VRが高い領域 (VRが最良解のVRの90%より大きくなる領域) の水平方向の広がりは西南西–東北東方向に~ 100 kmとなり,GCMTのセントロイドもこの領域に含まれていた.したがって,セントロイドの位置は拘束できていないと考えられる.次に,沿岸からの反射波をVRの計算に使用してセントロイド位置の探索を試みたところ,最良解はGCMTセントロイドから北西約10 kmに得られた.この時のVRが高い領域の広がりは西南西–東北東方向に~ 40 kmとなり,その中にGeoNetおよびUSGSのセントロイド位置は含まれていなかった.このことから,この地震のセントロイドの位置としてGCMTの位置が最も適しており,沿岸からの反射波を使うことで,地震のセントロイドの位置が拘束できたと考えられる.
続いて,震源断層の大きさを変えて津波を計算することにより,震源断層の大きさの推定を試みた.計算では,断層の長さ (L) と幅 (W) の比をL/W=2とし,GCMTの地震モーメントの値に固定した.その結果,津波の直達波部分のみを用いた場合の断層の長さはL = 40 ± 20 kmと推定された.一方,沿岸からの反射も用いて断層の長さを推定すると,L = 50 ± 15 kmとなった.断層サイズはさほど拘束できていないと考えられるものの,断層長さの上限はほぼ同程度となり,また沿岸からの反射を用いることで極端に小さい断層 (L < ~ 30 km) は不適であることが分かった.このときの解析結果を用いると,地震時の応力降下量は ~ 0.5 – 3.0 MPa程度となり,おおむね一般的な値 (e.g., Kanamori and Anderson, 1975) が得られた.