[SSS14-P09] 地震波干渉法に基づく熊本地震の被災地域での余震観測による微動記録の分析
1995年兵庫県南部地震では、震度7を観測した震災の帯といわれる被害の大きい地域が生じた。その生成の原因は、堆積層から透過してきたS波と断層で回折した表面波の到着時間が重なったことによる増幅的干渉が起きたことであると考えられている(例えば、Kawase, 1996)。2016年熊本地震の場合にも益城町の近くに断層が存在し、同地域で被害が大きくなった原因が地下構造にある可能性があるが、既往研究ではあまり断層構造の影響が考慮されていない。本研究では、地震波干渉法に基づいて2016年熊本地震の余震観測による微動記録を使い被災地域である益城町の波動伝播の特徴を明らかにすることを目的としている。
まず、熊本地震の発生後に益城町周辺の布田川断層近傍5km程度の範囲における2週間の余震観測による上下成分のデータから、地震波干渉法を用いて観測点間の相互相関関数を計算した。得られた相互相関関数には表面波(レイリー波)の分散性とみられる特徴があり、これがグリーン関数の表面波成分であることを確認した。また、観測点ペアによって表面波の振幅に差があることがわかり、被災地域である益城町の中心では地下構造に変化があることを明らかにした。
次に、マルチプルフィルタ解析により相互相関関数に含まれる2点間のレイリー波群速度の推定を行った。地震調査研究推進本部の地下構造データから既往の地下構造モデル(1次元モデル)を作成し、そこから計算した群速度の1次元モデルの理論値と相互相関関数から計算した観測値との比較を行った。被災地域を含まない観測点ペアでは、観測値と1次元モデルの理論値が類似していたが、被災地域を含む観測点ペアでは観測値が理論値より大きくなってしまい、レイリー波群速度の特徴を示すことができなかった。
さらに、表層にS波速度が遅い軟弱な地盤および断層の直下に急激な段差構造をもつ断層構造の2次元モデルを作成し、レイリー波群速度の推定で用いた既往モデルとともに差分法を用いた2次元P-SV波の伝播シミュレーションを行った。レイリー波の上下成分を抽出するため基準とした観測点の地表に仮想震源を置き、上下方向に加震をした。既往モデルの計算では表面波の分散性がモデルの全域で一様な特徴を有しているが、断層構造モデルの計算では断層が存在する約1km付近から表層の軟弱層で回折してきた波など2次的な複数の波が発生し、被災地域では複雑な地震波形になることを明らかにした。また、観測相互相関関数との比較も行い、既往モデルの計算波形よりも断層構造モデルの計算波形のほうが観測相互相関関数の表面波成分に見られる特徴と類似していることがわかった。
まず、熊本地震の発生後に益城町周辺の布田川断層近傍5km程度の範囲における2週間の余震観測による上下成分のデータから、地震波干渉法を用いて観測点間の相互相関関数を計算した。得られた相互相関関数には表面波(レイリー波)の分散性とみられる特徴があり、これがグリーン関数の表面波成分であることを確認した。また、観測点ペアによって表面波の振幅に差があることがわかり、被災地域である益城町の中心では地下構造に変化があることを明らかにした。
次に、マルチプルフィルタ解析により相互相関関数に含まれる2点間のレイリー波群速度の推定を行った。地震調査研究推進本部の地下構造データから既往の地下構造モデル(1次元モデル)を作成し、そこから計算した群速度の1次元モデルの理論値と相互相関関数から計算した観測値との比較を行った。被災地域を含まない観測点ペアでは、観測値と1次元モデルの理論値が類似していたが、被災地域を含む観測点ペアでは観測値が理論値より大きくなってしまい、レイリー波群速度の特徴を示すことができなかった。
さらに、表層にS波速度が遅い軟弱な地盤および断層の直下に急激な段差構造をもつ断層構造の2次元モデルを作成し、レイリー波群速度の推定で用いた既往モデルとともに差分法を用いた2次元P-SV波の伝播シミュレーションを行った。レイリー波の上下成分を抽出するため基準とした観測点の地表に仮想震源を置き、上下方向に加震をした。既往モデルの計算では表面波の分散性がモデルの全域で一様な特徴を有しているが、断層構造モデルの計算では断層が存在する約1km付近から表層の軟弱層で回折してきた波など2次的な複数の波が発生し、被災地域では複雑な地震波形になることを明らかにした。また、観測相互相関関数との比較も行い、既往モデルの計算波形よりも断層構造モデルの計算波形のほうが観測相互相関関数の表面波成分に見られる特徴と類似していることがわかった。