[SSS14-P11] 微動探査の位相速度特性に基づく強震動予測のための地盤の類型化
キーワード:地盤の類型化、強震動予測、位相速度曲線、常時微動
1.はじめに
防災科研では、総合科学技術・イノベーション会議のSIPにおいて、関東・東海・熊本の各地域で、強震動予測のための地盤モデルの作成および高度化のために、約1kmの間隔で総計約25,000箇所で極小アレイ・不規則アレイ観測、大アレイ観測も約5km間隔で、約1,000箇所以上で実施してきている。地震動の増幅、建物・人的被害に影響の大きい地下浅部の弾性波速度(S波速度、以下Vs)構造モデルを作成している。ここで得られた稠密なデータから、微動探査で得られる位相速度(以下、Pv)と微地形区分、地盤の地質構成との対応関係について、ボーリングデータのみでは得られない新たな知見も含め、地盤モデル作成に有効な情報が整理できた。
2.微動探査結果にもとづく地盤の類型化
今回実施した極小アレイによる微動探査では、一般に周波数2Hz~30HzのPv曲線が得られる。一般に高周波数域のpVは、地下のごく浅部(深度数m~10m)の、また、低周波数域のものは、地下のやや深い部分(深度数10m)の地盤構成をそれぞれ反映しているので、低周波数域から高周波数域(3Hz、6Hz、10Hz、20Hz)までのPvを抽出して微地形区分(若松・松岡,2013)や地盤の地質構成との対応を検討した。得られた速度構造も参照して、地盤の類型化を試みた。
1) 大地形区分との対応:微動探査は、主に低地と台地で実施されている。一般に今回検討している周波数域では、低地ではPvが小さく、台地では低周波数域でPvが大きくなる傾向がある。この結果として、低地では台地に比べて工学的基盤相当のVs(350m/s層)の上面深度が深い。
2) 台地との対応:ローム台地と砂礫質台地を比べると後者のほうがPvが大きい。 また、形成時代が同じ台地(段丘面)でも地域的に相違がみられ、天竜川両岸の 磐田原と三方が原では、後者のほうが広い周波数域でPvが小さく、Vs500m/秒層の 上面深度が浅い。荒川右岸の台地においても、狭山市付近では、その両側に比べ てPv速度が大きい傾向がみられる。このような地域性は、ボーリングの地質・ N値柱状図からは読み取りにくい。
3) 低地との対応:沖積低地を細区分した微地形では、次のような特徴がある。
a.扇状地:全体にPvが大きく、近傍の台地よりも大きい箇所も多い。天竜川、大井川のようなfan-deltaでは、海岸に近い地域から上流側にかけてPvが大きくなる傾向が明瞭である。
b.自然堤防、後背湿地、三角州・海岸低地、(旧河道):いずれもpVは広い周波数域で小さく、曲線の傾向はおおむね同様である。地表の微地形の相違に対応する相違はみられない。河川勾配の小さい河川流域(中川低地)では、上下流方向でのpVの変化傾向は明瞭ではないが、勾配のやや大きい河川流域(濃尾平野、熊本平野)では、上流側へPvが大きくなり、工学的基盤相当の速度層の上面が浅くなる傾向がみられる。海岸に近いが後背地となる山地、丘陵との距離も近い地域(天竜川、大井川付近)では、周辺の地形に拘束されて広い後背湿地が発達しており、このような地域ではPvがかなり小さい。
c.砂州、砂丘等:自然堤防等に比べて高周波数域でPvが大きい。
d.干拓地、埋立地:Pvは広い周波数域で小さく、自然堤防等のPv曲線に類似する。
e.谷底低地:b、dに比べてPvは大きい。Pvと山地、丘陵、台地の斜面との距離との相関がうかがえる。
また、低地の縁の台地や山地、丘陵に近い地域では、Pvが、特に低周波数域で大きくなる傾向がある。これは、周辺に分布するPvの大きい地盤から成る段丘・斜面・波食台が地下に埋没していることによる。これは、微地形区分のみでは把握できない傾向である。
4) その他の地形・地盤との対応:熊本平野の東方には、Aso-4火砕流堆積物(8万~9万年前に噴出)が広く分布し火砕流台地を形成している。このような地域では、Pv曲線の形状が周辺の低地や台地と異なる傾向を示す。
3.まとめと今後の課題
以上のように、広域・稠密な微動探査により、Pv速度と地盤の特性の対応関係の類型化が可能になった。この結果は、地盤モ デル作成作業をAIにより支援させる際の学習の基礎となる情報としても必要なものである。今後、この類型化の成果を地盤モデル作成の具体的な作業方法(Vs構造の設定、データの補間方法など)に反映させ、強震動予測のための地盤モデルを改良していく予定である。
防災科研では、総合科学技術・イノベーション会議のSIPにおいて、関東・東海・熊本の各地域で、強震動予測のための地盤モデルの作成および高度化のために、約1kmの間隔で総計約25,000箇所で極小アレイ・不規則アレイ観測、大アレイ観測も約5km間隔で、約1,000箇所以上で実施してきている。地震動の増幅、建物・人的被害に影響の大きい地下浅部の弾性波速度(S波速度、以下Vs)構造モデルを作成している。ここで得られた稠密なデータから、微動探査で得られる位相速度(以下、Pv)と微地形区分、地盤の地質構成との対応関係について、ボーリングデータのみでは得られない新たな知見も含め、地盤モデル作成に有効な情報が整理できた。
2.微動探査結果にもとづく地盤の類型化
今回実施した極小アレイによる微動探査では、一般に周波数2Hz~30HzのPv曲線が得られる。一般に高周波数域のpVは、地下のごく浅部(深度数m~10m)の、また、低周波数域のものは、地下のやや深い部分(深度数10m)の地盤構成をそれぞれ反映しているので、低周波数域から高周波数域(3Hz、6Hz、10Hz、20Hz)までのPvを抽出して微地形区分(若松・松岡,2013)や地盤の地質構成との対応を検討した。得られた速度構造も参照して、地盤の類型化を試みた。
1) 大地形区分との対応:微動探査は、主に低地と台地で実施されている。一般に今回検討している周波数域では、低地ではPvが小さく、台地では低周波数域でPvが大きくなる傾向がある。この結果として、低地では台地に比べて工学的基盤相当のVs(350m/s層)の上面深度が深い。
2) 台地との対応:ローム台地と砂礫質台地を比べると後者のほうがPvが大きい。 また、形成時代が同じ台地(段丘面)でも地域的に相違がみられ、天竜川両岸の 磐田原と三方が原では、後者のほうが広い周波数域でPvが小さく、Vs500m/秒層の 上面深度が浅い。荒川右岸の台地においても、狭山市付近では、その両側に比べ てPv速度が大きい傾向がみられる。このような地域性は、ボーリングの地質・ N値柱状図からは読み取りにくい。
3) 低地との対応:沖積低地を細区分した微地形では、次のような特徴がある。
a.扇状地:全体にPvが大きく、近傍の台地よりも大きい箇所も多い。天竜川、大井川のようなfan-deltaでは、海岸に近い地域から上流側にかけてPvが大きくなる傾向が明瞭である。
b.自然堤防、後背湿地、三角州・海岸低地、(旧河道):いずれもpVは広い周波数域で小さく、曲線の傾向はおおむね同様である。地表の微地形の相違に対応する相違はみられない。河川勾配の小さい河川流域(中川低地)では、上下流方向でのpVの変化傾向は明瞭ではないが、勾配のやや大きい河川流域(濃尾平野、熊本平野)では、上流側へPvが大きくなり、工学的基盤相当の速度層の上面が浅くなる傾向がみられる。海岸に近いが後背地となる山地、丘陵との距離も近い地域(天竜川、大井川付近)では、周辺の地形に拘束されて広い後背湿地が発達しており、このような地域ではPvがかなり小さい。
c.砂州、砂丘等:自然堤防等に比べて高周波数域でPvが大きい。
d.干拓地、埋立地:Pvは広い周波数域で小さく、自然堤防等のPv曲線に類似する。
e.谷底低地:b、dに比べてPvは大きい。Pvと山地、丘陵、台地の斜面との距離との相関がうかがえる。
また、低地の縁の台地や山地、丘陵に近い地域では、Pvが、特に低周波数域で大きくなる傾向がある。これは、周辺に分布するPvの大きい地盤から成る段丘・斜面・波食台が地下に埋没していることによる。これは、微地形区分のみでは把握できない傾向である。
4) その他の地形・地盤との対応:熊本平野の東方には、Aso-4火砕流堆積物(8万~9万年前に噴出)が広く分布し火砕流台地を形成している。このような地域では、Pv曲線の形状が周辺の低地や台地と異なる傾向を示す。
3.まとめと今後の課題
以上のように、広域・稠密な微動探査により、Pv速度と地盤の特性の対応関係の類型化が可能になった。この結果は、地盤モ デル作成作業をAIにより支援させる際の学習の基礎となる情報としても必要なものである。今後、この類型化の成果を地盤モデル作成の具体的な作業方法(Vs構造の設定、データの補間方法など)に反映させ、強震動予測のための地盤モデルを改良していく予定である。