[SSS14-P32] 内陸地殻地震を対象にした地震発生層以浅のすべり量に関する検討
キーワード:地震発生層以浅の浅部すべり域、震源スケーリング則、断層変位、永久変位
1995年兵庫県南部地震(Mw6.9)以降、日本国内では強震観測網(K-NET, KiK-net等)や自治体の震度計ネットワークが整備され、これまでほとんど観測されなかった震源極近傍の地震動データが得られるようになってきた。2016年熊本地震の本震(Mw7.1;4月16日1時25分)では、自治体震度計が設置されている西原村小森で約2m、益城町宮園で約1mの永久変位(水平成分)が観測されている(岩田、2016)。松元・他(2016)は各観測点の地表近くにすべり量が約2~4mの大すべり域(LMGA;Long-period Motion Generation Area)を設定することで観測永久変位を説明できることを示した。なお、大すべり域のライズタイムは2~3秒程度であった。本研究では地殻内陸地震を対象に地表近くの浅部のすべり量について検討する。
松田(1975)は気象庁マグニチュード(Mj)と地表に現れた断層変位(Ds)の経験的関係式を求めているが、それに武村(1990)による気象庁マグニチュード(Mj)と地震モーメント(Mo)の経験的関係を用いると、下記の断層変位(Ds)と地震モーメント(Mo)の関係式(1)が得られる。
log Ds [m] = 0.5123 × log Mo [Nm] – 9.4974 (1)
(1)式に対して、Murotani et al. (2015)及びWesnousky (2008)による主に活断層調査に基づいた断層変位データと比較した結果、両者は整合的であった。なお、用いた断層変位データには地表に現れる最大の断層変位 (max. surface displacement)が含まれている(Murotani et al., 2015)。
次に、断層近傍の地震計で得られた永久変位(Dp)と(1)式の比較を行った。地震計の永久変位(Dp)は断層を挟んだ片側のずれの量であり、一方、活断層調査による地表の断層変位(Ds)は断層を挟んだ両側のずれの量であるため、両者の関係はDs ≅ 2Dpとなる。なお、地震計の永久変位の2倍(2Dp)は地中の断層運動(浅部すべり域)によるすべり量に相当する。本検討では、2016年熊本地震の本震(Mw7.1)以外に、海外の地表地震断層による地震計の永久変位データとして、Xio et al. (2010)やBoore (2010)のデータを用いた。その結果、(1)式は断層近傍の観測点(約2km以内)の永久変位(主に水平成分)の2倍(2Dp)と調和的であることが確認できた。すなわち、(1)式は浅部すべり域のすべり量に相当する。例えば、2016年熊本地震の本震(Mw7.1)の地震モーメント(4.4E+19[Nm](F-net))に基づけば、(1)式から浅部すべり域のすべり量は約3.7mと予想されるが、これは松元・他(2016)によるLMGAのすべり量(4m)とほぼ一致する。
ところで、(1)式(Ds-Mo)は約1/2(0.5123)の傾きを持つことを意味しているが、これはSomerville et al.(1999)による断層破壊領域の平均すべり量(D)の経験則(D-Mo)の傾き(1/3)とは異なる。一方、地震本部(2017)による3-stageの断層破壊領域(S)と地震モーメント(Mo)のスケーリング則に基づけば、2nd-stgaeでは、平均すべり量(D)に対して地震モーメント(Mo)は下記式(2)に示すように1/2(0.5)の傾きをもつ。
log D [m] = 0.5 × log Mo [Nm] – 9.6297 (Mw>6.5) (2)
以上から、(1)式の適用範囲を地表に断層が現れるような2nd-stgaeの規模の地震に仮定すると、(1)と(2)式から浅部すべり域のすべり量は断層破壊領域の平均すべり量の2倍程度となる。すなわち、LMGAのすべり量はアスペリティ領域のすべり量とほぼ同程度であることが示唆される。本研究では、地震発生層以浅のすべり量について検討したが、これは観測点直下の浅部のすべり量である。今後は、活断層調査等による地表地震断層の変位データなどを参照して浅部すべり域のすべり量のスケーリング則を検証するとともに、浅部すべり域のすべり量の深さ依存性やその領域がどの程度の広がり(面積)をもつのかを検討する必要がある。
謝辞:本研究は、平成29年度原子力施設等防災対策等委託費(内陸型地震による地震動の評価手法の検討)業務による成果の一部である。
松田(1975)は気象庁マグニチュード(Mj)と地表に現れた断層変位(Ds)の経験的関係式を求めているが、それに武村(1990)による気象庁マグニチュード(Mj)と地震モーメント(Mo)の経験的関係を用いると、下記の断層変位(Ds)と地震モーメント(Mo)の関係式(1)が得られる。
log Ds [m] = 0.5123 × log Mo [Nm] – 9.4974 (1)
(1)式に対して、Murotani et al. (2015)及びWesnousky (2008)による主に活断層調査に基づいた断層変位データと比較した結果、両者は整合的であった。なお、用いた断層変位データには地表に現れる最大の断層変位 (max. surface displacement)が含まれている(Murotani et al., 2015)。
次に、断層近傍の地震計で得られた永久変位(Dp)と(1)式の比較を行った。地震計の永久変位(Dp)は断層を挟んだ片側のずれの量であり、一方、活断層調査による地表の断層変位(Ds)は断層を挟んだ両側のずれの量であるため、両者の関係はDs ≅ 2Dpとなる。なお、地震計の永久変位の2倍(2Dp)は地中の断層運動(浅部すべり域)によるすべり量に相当する。本検討では、2016年熊本地震の本震(Mw7.1)以外に、海外の地表地震断層による地震計の永久変位データとして、Xio et al. (2010)やBoore (2010)のデータを用いた。その結果、(1)式は断層近傍の観測点(約2km以内)の永久変位(主に水平成分)の2倍(2Dp)と調和的であることが確認できた。すなわち、(1)式は浅部すべり域のすべり量に相当する。例えば、2016年熊本地震の本震(Mw7.1)の地震モーメント(4.4E+19[Nm](F-net))に基づけば、(1)式から浅部すべり域のすべり量は約3.7mと予想されるが、これは松元・他(2016)によるLMGAのすべり量(4m)とほぼ一致する。
ところで、(1)式(Ds-Mo)は約1/2(0.5123)の傾きを持つことを意味しているが、これはSomerville et al.(1999)による断層破壊領域の平均すべり量(D)の経験則(D-Mo)の傾き(1/3)とは異なる。一方、地震本部(2017)による3-stageの断層破壊領域(S)と地震モーメント(Mo)のスケーリング則に基づけば、2nd-stgaeでは、平均すべり量(D)に対して地震モーメント(Mo)は下記式(2)に示すように1/2(0.5)の傾きをもつ。
log D [m] = 0.5 × log Mo [Nm] – 9.6297 (Mw>6.5) (2)
以上から、(1)式の適用範囲を地表に断層が現れるような2nd-stgaeの規模の地震に仮定すると、(1)と(2)式から浅部すべり域のすべり量は断層破壊領域の平均すべり量の2倍程度となる。すなわち、LMGAのすべり量はアスペリティ領域のすべり量とほぼ同程度であることが示唆される。本研究では、地震発生層以浅のすべり量について検討したが、これは観測点直下の浅部のすべり量である。今後は、活断層調査等による地表地震断層の変位データなどを参照して浅部すべり域のすべり量のスケーリング則を検証するとともに、浅部すべり域のすべり量の深さ依存性やその領域がどの程度の広がり(面積)をもつのかを検討する必要がある。
謝辞:本研究は、平成29年度原子力施設等防災対策等委託費(内陸型地震による地震動の評価手法の検討)業務による成果の一部である。