[SSS14-P39] 2016年熊本地震における木造建物の建築年代別被害特性
キーワード:2016年熊本地震、航空写真判読、木造建物、建築年代、被害特性
1.はじめに
地震における建物被害と建築年代の関係については、1981年の建築基準法改正を境に、1981年以前を旧耐震、それ以降を新耐震と区分した検討がこれまでに多くなされた。一方、2000年の建築基準法改正により耐震基準が強化されていることから、その前後で建設された建物では、同様の地震動に対して統計的に異なる被害を呈する可能性がある。本報告は、新耐震建物の建築年代を1981~2000年と2001年以降に区分することを試み、2016年熊本地震における木造建物の建築年代別被害特性の検討結果について述べる。
2.建物被害、建物構造及び建築年代の区分
建物被害は、自治体の罹災証明と概ね対応できるように、本震後に撮影された航空写真の目視判読により建物1棟単位の被害レベルを4つに区分した。具体的には、航空写真では被害が確認できないものをLEVEL1(無被害)、屋根瓦の一部の落下が確認できたものをLEVEL2(被害小)、建物の外形の変化はないが壁面が落下、または屋根瓦の大半が落下しているものをLEVEL3(被害中)、建物が傾斜している、層破壊がみられる、あるいは完全に倒壊しているものをLEVEL4(被害大)とした。
建物構造は、本震後航空写真の目視判読により、屋根形状が切妻、寄棟、入母屋、越屋根など木造住宅の特徴を表すものを木造とし、屋根がフラットな建物や面積が大きい建物、あるいは基盤地図情報ポリゴンに「種別=堅ろう建物、堅ろう無壁」と記載されている建物を非木造とした。
建築年代は、国土地理院のA:国土画像情報(第一期:1974~1978年撮影)及びB:簡易空中写真(2004 年~撮影)並びにC:本震後の航空写真から、各写真上の建物位置・形状・屋根色を建物1棟ごとに比較判読し区分した。具体的には、(1)A、B及びCの全ての写真に同一の建物が存在する場合は「1978年以前」の建物、(2)B及びCの写真に同一の建物が存在する場合は「1979年以降~2004年以前」の建物、(3)Cの写真だけに存在する場合は「2004年以降」の建物とした。なお、これら航空写真の撮影年と建築基準法の改正年は一致しないが、(1)区分を旧耐震、(2)区分を新耐震(1981~2000年)、(3)区分を新耐震(2001年以降)とみなした。
3.木造建物の建築年代別被害特性
熊本市(中央区及び東区)、嘉島町、益城町、西原村及び南阿蘇村の約14万棟の建物について、航空写真判読により、建物被害、建物構造及び建築年代を調査した。その結果から、木造のLEVEL4は2,144棟、非木造のLEVEL4は17棟であり、木造が99%を占める。木造のLEVEL4が1,628棟と最も多い益城町について、建築年代別のLEVEL4被害率をみると、(1)旧耐震(1981年以前)は15%、(2)新耐震(1981~2000年)は11%、(3)新耐震(2001年以降)は2%である。さらに、益城町内で震度7と推定される区域のLEVEL4被害率は、(1)旧耐震は21%、(2)新耐震は16%、(3)新耐震は3%であり、(3)新耐震の被害率は非常に小さいといえる。なお、国総研の調査報告(益城町市街地の約2,300棟対象)から木造倒壊建物の建築年代別被害率をみると、(1)旧耐震は28%、(2)新耐震は9%、(3)新耐震は2%である。
熊本市、嘉島町及び益城町にある5ケ所の地震計設置地点から半径1km以内の250mメッシュの推定震度とLEVEL3と4の建物を合計して算出した被害率から被害率曲線を求めると、同じ震度でも、建築年代が新しいと被害率は小さく、震度7.0における被害率(暫定)は、(1)旧耐震(1981年以前)は95%、(2)新耐震(1981~2000年)は70%、(3)新耐震(2001年以降)は15%であり、2001年以降の建物は明らかに被害率が低い。
今後、検討で得られた新たな年代区分を考慮した被害率曲線を、開発中の全国を対象としたリアルタイム地震被害推定システムに組み込むことで、建物被害推定の精度向上を図る予定である。
謝辞:本研究の一部は、総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施された。
地震における建物被害と建築年代の関係については、1981年の建築基準法改正を境に、1981年以前を旧耐震、それ以降を新耐震と区分した検討がこれまでに多くなされた。一方、2000年の建築基準法改正により耐震基準が強化されていることから、その前後で建設された建物では、同様の地震動に対して統計的に異なる被害を呈する可能性がある。本報告は、新耐震建物の建築年代を1981~2000年と2001年以降に区分することを試み、2016年熊本地震における木造建物の建築年代別被害特性の検討結果について述べる。
2.建物被害、建物構造及び建築年代の区分
建物被害は、自治体の罹災証明と概ね対応できるように、本震後に撮影された航空写真の目視判読により建物1棟単位の被害レベルを4つに区分した。具体的には、航空写真では被害が確認できないものをLEVEL1(無被害)、屋根瓦の一部の落下が確認できたものをLEVEL2(被害小)、建物の外形の変化はないが壁面が落下、または屋根瓦の大半が落下しているものをLEVEL3(被害中)、建物が傾斜している、層破壊がみられる、あるいは完全に倒壊しているものをLEVEL4(被害大)とした。
建物構造は、本震後航空写真の目視判読により、屋根形状が切妻、寄棟、入母屋、越屋根など木造住宅の特徴を表すものを木造とし、屋根がフラットな建物や面積が大きい建物、あるいは基盤地図情報ポリゴンに「種別=堅ろう建物、堅ろう無壁」と記載されている建物を非木造とした。
建築年代は、国土地理院のA:国土画像情報(第一期:1974~1978年撮影)及びB:簡易空中写真(2004 年~撮影)並びにC:本震後の航空写真から、各写真上の建物位置・形状・屋根色を建物1棟ごとに比較判読し区分した。具体的には、(1)A、B及びCの全ての写真に同一の建物が存在する場合は「1978年以前」の建物、(2)B及びCの写真に同一の建物が存在する場合は「1979年以降~2004年以前」の建物、(3)Cの写真だけに存在する場合は「2004年以降」の建物とした。なお、これら航空写真の撮影年と建築基準法の改正年は一致しないが、(1)区分を旧耐震、(2)区分を新耐震(1981~2000年)、(3)区分を新耐震(2001年以降)とみなした。
3.木造建物の建築年代別被害特性
熊本市(中央区及び東区)、嘉島町、益城町、西原村及び南阿蘇村の約14万棟の建物について、航空写真判読により、建物被害、建物構造及び建築年代を調査した。その結果から、木造のLEVEL4は2,144棟、非木造のLEVEL4は17棟であり、木造が99%を占める。木造のLEVEL4が1,628棟と最も多い益城町について、建築年代別のLEVEL4被害率をみると、(1)旧耐震(1981年以前)は15%、(2)新耐震(1981~2000年)は11%、(3)新耐震(2001年以降)は2%である。さらに、益城町内で震度7と推定される区域のLEVEL4被害率は、(1)旧耐震は21%、(2)新耐震は16%、(3)新耐震は3%であり、(3)新耐震の被害率は非常に小さいといえる。なお、国総研の調査報告(益城町市街地の約2,300棟対象)から木造倒壊建物の建築年代別被害率をみると、(1)旧耐震は28%、(2)新耐震は9%、(3)新耐震は2%である。
熊本市、嘉島町及び益城町にある5ケ所の地震計設置地点から半径1km以内の250mメッシュの推定震度とLEVEL3と4の建物を合計して算出した被害率から被害率曲線を求めると、同じ震度でも、建築年代が新しいと被害率は小さく、震度7.0における被害率(暫定)は、(1)旧耐震(1981年以前)は95%、(2)新耐震(1981~2000年)は70%、(3)新耐震(2001年以降)は15%であり、2001年以降の建物は明らかに被害率が低い。
今後、検討で得られた新たな年代区分を考慮した被害率曲線を、開発中の全国を対象としたリアルタイム地震被害推定システムに組み込むことで、建物被害推定の精度向上を図る予定である。
謝辞:本研究の一部は、総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施された。