[SVC41-P37] 2016年10月の阿蘇火山の爆発的噴火に先行した長周期パルス その2
キーワード:阿蘇山、水蒸気噴火、長周期パルス
2016年10月8日の午前01時46分に、阿蘇火山中岳第一火口で爆発的な噴火が発生した。噴火のタイプは、マグマ水蒸気爆発である可能性が高いと考えられている(気象庁,2016)。
長周期パルス(LPP)と呼ばれる地震波が二つ、それぞれ爆発的噴火の6分前と2分前に観測された(以降、これらをLPP1、LPP2と呼ぶ)。LPPの発生機構には爆発的噴火の準備過程などの情報が含まれると考えられるため、本研究では主に広帯域地震記録を分析し、LPPの震源過程を明らかにすることを目的とする。
使用したデータは、中岳第一火口周辺の8観測点(火口からの距離は約0.3km~2.3km)の広帯域地震記録および1観測点の傾斜計記録である。
各観測点での地動の粒子軌跡をもとに震源位置を推定したところ、LPP1,2どちらもKawakatsu et al. (2000)で推定されたLPP震源から100m程度の距離であった。この違いは誤差範囲内であり、同一の震源域で発生した波であると考えられる。Yamamoto et al. (1999)で推定された火口下のクラック状火道の位置と比較すると、求めた二つの震源はクラック内あるいはクラックのごく近傍に位置する。また、LPPのフーリエ振幅スペクトルには、クラックの共鳴を示す複数のスペクトルピークが見られた。LPP振幅の空間分布を調べると、Yamamoto et al. (1999)が得た長周期微動(LPT)の振幅分布とよく似たパターンが見られた。したがって、Yamamoto et al. (1999)がLPTを説明したのと同様に、同じクラック状火道の挙動がLPPを説明すると推測される。なお、LPPとLPTのモーメントテンソル解が類似していることがLegrand et al. (2000)で明らかになっている。
LPP1,2どちらも、その前後で静的な傾斜変動が生じていた。本堂(火口から南西に約800m)で観測された変動は、LPP1ではN15°W方向に0.012μradの隆起、LPP2ではN49°W方向に0.026μradの隆起であり、いずれも火口方向を向いていない。これらの傾斜変動は火口下の球状圧力源の膨張だけでは説明ができない。Yamamoto et al. (1999)が推定した開口クラックによる地表の傾斜変動をOkada et al. (1992)の理論で計算したところ、本堂ではW10°S方向に隆起する傾斜になる。この計算結果もまた観測された傾斜変動とは合わない。しかし、開口クラックによる傾斜と球状圧力源による火口方向の傾斜を重ね合わせると、観測を説明するように見える。両者が起こっていたのではないかと考えている。
長周期パルス(LPP)と呼ばれる地震波が二つ、それぞれ爆発的噴火の6分前と2分前に観測された(以降、これらをLPP1、LPP2と呼ぶ)。LPPの発生機構には爆発的噴火の準備過程などの情報が含まれると考えられるため、本研究では主に広帯域地震記録を分析し、LPPの震源過程を明らかにすることを目的とする。
使用したデータは、中岳第一火口周辺の8観測点(火口からの距離は約0.3km~2.3km)の広帯域地震記録および1観測点の傾斜計記録である。
各観測点での地動の粒子軌跡をもとに震源位置を推定したところ、LPP1,2どちらもKawakatsu et al. (2000)で推定されたLPP震源から100m程度の距離であった。この違いは誤差範囲内であり、同一の震源域で発生した波であると考えられる。Yamamoto et al. (1999)で推定された火口下のクラック状火道の位置と比較すると、求めた二つの震源はクラック内あるいはクラックのごく近傍に位置する。また、LPPのフーリエ振幅スペクトルには、クラックの共鳴を示す複数のスペクトルピークが見られた。LPP振幅の空間分布を調べると、Yamamoto et al. (1999)が得た長周期微動(LPT)の振幅分布とよく似たパターンが見られた。したがって、Yamamoto et al. (1999)がLPTを説明したのと同様に、同じクラック状火道の挙動がLPPを説明すると推測される。なお、LPPとLPTのモーメントテンソル解が類似していることがLegrand et al. (2000)で明らかになっている。
LPP1,2どちらも、その前後で静的な傾斜変動が生じていた。本堂(火口から南西に約800m)で観測された変動は、LPP1ではN15°W方向に0.012μradの隆起、LPP2ではN49°W方向に0.026μradの隆起であり、いずれも火口方向を向いていない。これらの傾斜変動は火口下の球状圧力源の膨張だけでは説明ができない。Yamamoto et al. (1999)が推定した開口クラックによる地表の傾斜変動をOkada et al. (1992)の理論で計算したところ、本堂ではW10°S方向に隆起する傾斜になる。この計算結果もまた観測された傾斜変動とは合わない。しかし、開口クラックによる傾斜と球状圧力源による火口方向の傾斜を重ね合わせると、観測を説明するように見える。両者が起こっていたのではないかと考えている。