[HDS10-P05] 津波堆積物の分布から求めた12世紀北海道南西沖地震の断層モデル
キーワード:津波、地震、津波堆積物
津波堆積物調査より, 北海道奥尻島南部や北海道南西部の檜山沿岸には, 繰り返し津波が襲来していることがわかった. この地域では1993年北海道南西沖地震による津波を超えるような高い場所, より内陸側に津波堆積物が残されている. 北海道奥尻島沿岸では, 過去3000年間に5層ほどの津波堆積物が残されており, テフラおよびC14年代値による対比から, 最新のものは1741年渡島大島津波, その1つ前は12世紀頃の津波と推定された. 津波堆積物の分布範囲が, 北海道奥尻島沿岸や檜山沿岸などの複数の地点で相伴うことから, 1741年と12世紀頃の2つの津波の波源域も近接すると推定された. 1741年の津波は渡島大島の噴火―山体崩壊に起因する. 一方12世紀頃の津波は, 同時期に奥尻島の陸上で大規模斜面崩壊が発生していること, 後志トラフや奥尻海嶺, および日本海盆東縁に同時期の地震性タービダイトが知られていること, 津波堆積物調査より津波発生に繰り返し性があること, また北海道日本海域に海底活断層が存在することより, 地震性の津波である可能性が高い. そこで本研究では12世紀頃の地震について, 津波堆積物の確認地点5地域と計算された浸水域を比較することにより, 断層モデルを構築した. 基本となるモデルは, 渡島大島近傍の海底活断層として示される断層モデルF17を採用した (北海道防災会議, 2017). このモデルをもとに断層パラメーターを調整し, 非線形長波近似式による津波の浸水計算を行い, 断層モデルの最適解を見つけ出した. 北海道奥尻島沿岸や檜山沿岸5地域の津波堆積物分布を最も良く説明できるモデルは, 断層モデルF17の断層長104 km, すべり量18 mである. この断層モデルの地震のモーメントは 9.95 × 1020 Nm (Mw 7.9) と計算された. 剛性率は3.43 × 1010 N/m2 を使用した. またこの推定された断層モデルは, 1993年北海道南西沖地震と1983年日本海中部地震の間をつなぐ場所に位置する.