[HDS10-P18] 都市地形アップスケーリングによる市街地粗度パラメタリゼーションを用いた津波遡上モデルの提案
キーワード:津波、浸水、アップスケーリング、抗力
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震により発生した想定外の巨大津波は,東北地方や関東地方に甚大な被害をもたらした.このため,沿岸災害の正確な評価を行うためには,陸上での津波の正確な把握が必要である.近年では,測地技術の向上により高解像度地形データが得られ,建物の影響を直接取り入れた津波浸水計算が行うことができるが,建物を解像する高解像度の浸水計算は,非常に長い計算時間を要するため,実務レベルでは,中解像度の粗度モデルによる計算が行われている.本研究では,高解像度の都市地形データを解像し,アップスケールすることにより,解像度を落としても計算精度を維持するための粗度パラメタリゼーションとして建物抗力モデル(DFM: Drag Force Model)を提案し,沿岸市街地模型を用いた津波浸水実験の結果を用いて精度検証を行う.
DFMでは,流水が建物から受ける抗力をx, y方向にそれぞれ定義し,運動量保存則に建物抗力項として追加することで,建物の影響を評価する.さらに,全水深Dと建物高さhの大小により場合分けを行い,抗力に上限を設定する.これらにより,DFMでは(1)建物の没水の程度(没水率)が津波の遡上に与える影響と(2)流水の向きの効果を浸水計算に取り入れることができる.
水槽実験で得られた結果を真値とし,DFMと建物を含む地形を高解像度で解く建物解像モデル:SRM(Structure Resolving Model),建物を考慮せず一様に粗度を与える一様粗度モデル:URM(Uniform Roughness Model)と油屋・今村によって提案された合成等価粗度モデル:CERM(Composite Equivalent Roughness Model)の計算結果を相互比較した.第一に,面的な評価として最大浸水範囲を,点的な評価として最大浸水深を比較検討した. DFMは最大浸水範囲について,やや危険側の評価をしているが,実験結果との整合性は良好である. また,最大浸水深をみると,DFMは沿岸部の建物高さの大きい地点で津波の遡上が抑えられ,内陸まで浸水しない傾向が見える.DFMは没水率の影響を考慮できるため,CERMより内陸部で実験結果と近い結果を示す.
DFMでは流れの向きや没水率が遡上に与える影響をある程度再現でき,SRM・CERMに対して最大水位,到達時間についての精度が向上することがわかった.一方で,一般的建物群に対する抗力係数の与え方や都市地形データのアップスケール法にはまだ課題が残っている.
DFMでは,流水が建物から受ける抗力をx, y方向にそれぞれ定義し,運動量保存則に建物抗力項として追加することで,建物の影響を評価する.さらに,全水深Dと建物高さhの大小により場合分けを行い,抗力に上限を設定する.これらにより,DFMでは(1)建物の没水の程度(没水率)が津波の遡上に与える影響と(2)流水の向きの効果を浸水計算に取り入れることができる.
水槽実験で得られた結果を真値とし,DFMと建物を含む地形を高解像度で解く建物解像モデル:SRM(Structure Resolving Model),建物を考慮せず一様に粗度を与える一様粗度モデル:URM(Uniform Roughness Model)と油屋・今村によって提案された合成等価粗度モデル:CERM(Composite Equivalent Roughness Model)の計算結果を相互比較した.第一に,面的な評価として最大浸水範囲を,点的な評価として最大浸水深を比較検討した. DFMは最大浸水範囲について,やや危険側の評価をしているが,実験結果との整合性は良好である. また,最大浸水深をみると,DFMは沿岸部の建物高さの大きい地点で津波の遡上が抑えられ,内陸まで浸水しない傾向が見える.DFMは没水率の影響を考慮できるため,CERMより内陸部で実験結果と近い結果を示す.
DFMでは流れの向きや没水率が遡上に与える影響をある程度再現でき,SRM・CERMに対して最大水位,到達時間についての精度が向上することがわかった.一方で,一般的建物群に対する抗力係数の与え方や都市地形データのアップスケール法にはまだ課題が残っている.