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[HGM03-02] 付加体堆積岩山地における表層崩壊の発生条件―2014年広島豪雨の事例―
キーワード:1 m DEM、透水性、難透水性粘土層、集水面積、斜面安定解析
2014年8月20日に広島県で発生した豪雨により,広島市内の安佐南区・安佐北区に位置する阿武山では,花崗岩斜面,堆積岩斜面,変成岩斜面において多数の表層崩壊が発生した.本研究では,阿武山の付加体堆積岩山地(以下,堆積岩山地)において,崩壊地の地形学的特徴を調査し,表層崩壊の発生条件を検討した.また,比較対象として,近辺の花崗岩山地においても同様の調査を行った.合計54箇所の崩壊地を対象に1 m解像度DEMを用いて傾斜や集水面積などの地形量を測定した.また現地観察と土壌サンプリングを7箇所の崩壊地において実施した.さらに,3箇所の崩壊地においてすべり面試料を採取し,実験室にて一面せん断試験を行った.現地観察の結果,堆積岩山地における崩壊地の形態を平板型と漏斗型の2種類に分類した.DEMを用いた地形計測によると,堆積岩山地では崩壊形態に関わらず多くの崩壊地の傾斜が30°以上であり,崩壊源頭部の集水面積が103 m2以上であった.堆積岩山地の2箇所の平板型崩壊地ではすべり面以深に粘土層が存在し,その飽和透水係数は10-7~10-5 cm/sであった.また,堆積岩斜面のすべり面のせん断強度は,花崗岩斜面のすべり面と比較して大きかった.2箇所の平板型崩壊地を対象に無限長斜面安定解析を適用したところ,傾斜30°~35°の斜面において厚さ1.5~2 mの土層が全飽和状態になることで不安定になった.したがって,難透水性粘土層の上位土層が飽和したことにより,いくつかの平板型崩壊が発生したと推定される.また漏斗型崩壊地では,難透水性粘土層は確認されずすかし礫層が存在していたことから,地下水流の局所的な集中が崩壊発生の原因であったと推測される.