11:30 〜 11:45
[HGM03-09] 能登半島西岸の丘陵地における風成砂層の分布
キーワード:能登半島、風成砂、砂丘
日本海沿岸には,鳥取砂丘をはじめとして,日本でも有数の規模の大きな海岸砂丘が発達している.能登半島西岸には内灘砂丘等が分布するが,このうち富来砂丘は,延長約3 km,幅2 km,標高約45 mに達し,完新世に形成された(藤,1975).富来砂丘の南方は岩石海岸であり,その内陸側は,従来は海成段丘面の分布域と考えられていた(小池・町田,2001など). しかし,服部ほか(2014)は,富来砂丘南方の沿岸約10 kmにわたって,更新世後期の広域テフラを含む標高30~50 mの古砂丘面が点在することを明らかにした.この結果から,富来砂丘の南方一帯に更新世に供給された風成砂が分布することが示唆されるが,その分布が明らかであるのは,沿岸の標高50 m程度の地形面に限られていた.本研究では,より内陸側の丘陵地におけるボーリング調査および露頭調査から解明された表層に堆積する風成砂の分布,および埋没土壌の存在や火山灰分析の結果から推定されるそれらの堆積時期について報告する.
調査の結果,富来砂丘南方の丘陵尾根部の表層において,下位から基盤である中新世穴水累層の安山岩,砂礫層,砂層,および土壌が確認された.砂礫層の分布は局所的であり,厚さ1 m以下で,安山岩質の亜円礫を含む.砂層は厚さ5~30 mで,細~中粒砂を主体とし,しばしば粗粒部を挟むが,全体として均質で淘汰がよく,平行葉理も認められる.また,砂層中には褐色~赤色の埋没土壌層が含まれており,その枚数は内陸側ほど増え,最も内陸側の露頭では,3層の埋没土壌が含まれる.火山灰分析の結果,砂層および埋没土壌層中から,AT(2.6~2.9万年前),K-Tz(9.5万年前),SK(11~11.5万年前)の降灰層準を認定した(火山灰の年代はいずれも町田・新井,2003を参照).埋没土壌より上の砂層は,陸化した後に堆積しており,顕著な侵食面が確認されないことから,風成であると考えられる.また埋没土壌より下位の層準については,上位の砂層と層相に大きな差異がないこと,最大20 mを超える厚い砂層からなることを考慮すると,上位の砂層と一連の風成砂層である可能性が高い.
上記の結果から,富来砂丘南方の海岸付近における更新世の風成砂の分布は,少なくとも沿岸0.9 km,沿岸から内陸側へ1.6 kmの範囲に及ぶことが明らかになった.これらの砂層にK-TzやSKが含まれることと過去の温暖期を経たと考えられる赤みを帯びた土壌が埋没土壌として存在することから,本地域は,中期更新世以降,風成砂が供給される環境であったと考えられる.また,内陸側ほど砂層中に含まれる埋没土壌の枚数が増えること,K-TzとSKの降灰層準の間に分布する砂層の厚さについて,海岸に近い位置では約6 mであるのに対し(服部ほか,2014),海岸より約600 m内陸側では約2 mであり,内陸側が薄いが,SKより下位については内陸側で厚い砂層が存在することから,本地域では内陸側ほど古い時代から風成砂の堆積が起こっており,休止期を複数回挟んで,堆積場の中心が時間の経過とともに海側に移動したことが示唆される.
調査の結果,富来砂丘南方の丘陵尾根部の表層において,下位から基盤である中新世穴水累層の安山岩,砂礫層,砂層,および土壌が確認された.砂礫層の分布は局所的であり,厚さ1 m以下で,安山岩質の亜円礫を含む.砂層は厚さ5~30 mで,細~中粒砂を主体とし,しばしば粗粒部を挟むが,全体として均質で淘汰がよく,平行葉理も認められる.また,砂層中には褐色~赤色の埋没土壌層が含まれており,その枚数は内陸側ほど増え,最も内陸側の露頭では,3層の埋没土壌が含まれる.火山灰分析の結果,砂層および埋没土壌層中から,AT(2.6~2.9万年前),K-Tz(9.5万年前),SK(11~11.5万年前)の降灰層準を認定した(火山灰の年代はいずれも町田・新井,2003を参照).埋没土壌より上の砂層は,陸化した後に堆積しており,顕著な侵食面が確認されないことから,風成であると考えられる.また埋没土壌より下位の層準については,上位の砂層と層相に大きな差異がないこと,最大20 mを超える厚い砂層からなることを考慮すると,上位の砂層と一連の風成砂層である可能性が高い.
上記の結果から,富来砂丘南方の海岸付近における更新世の風成砂の分布は,少なくとも沿岸0.9 km,沿岸から内陸側へ1.6 kmの範囲に及ぶことが明らかになった.これらの砂層にK-TzやSKが含まれることと過去の温暖期を経たと考えられる赤みを帯びた土壌が埋没土壌として存在することから,本地域は,中期更新世以降,風成砂が供給される環境であったと考えられる.また,内陸側ほど砂層中に含まれる埋没土壌の枚数が増えること,K-TzとSKの降灰層準の間に分布する砂層の厚さについて,海岸に近い位置では約6 mであるのに対し(服部ほか,2014),海岸より約600 m内陸側では約2 mであり,内陸側が薄いが,SKより下位については内陸側で厚い砂層が存在することから,本地域では内陸側ほど古い時代から風成砂の堆積が起こっており,休止期を複数回挟んで,堆積場の中心が時間の経過とともに海側に移動したことが示唆される.