09:15 〜 09:30
[HQR04-01] ペルー・ナスカの地上絵のキャンバスは何でできているか
★招待講演
キーワード:ナスカ地上絵、海成層、キャンバス
南米ペルー・ナスカの地上絵は、リマの南約400kmの乾燥した台地の上に描かれている。地上絵は、紀元前500年から500年間のナスカ文明の時代に描かれたとされている。地上絵の発見以来、その特異な形状や巨大さが注目され、分布の詳細やその解釈についての研究が進み、保護活動も徹底されている。一方、地上絵の描かれた地層に関する地球科学的な調査は殆どなされておらず、その詳細は不明であった。
本研究の目的は、ナスカ地上絵が描かれたキャンバスがどのような地層から構成されているかを明らかすることである。この地域への立入は厳しく制限されており、地層の収集は不可能であったため、露頭観察と地形解析からナスカ台地の形成過程を調べた。
Nasca台地は、標高1000m級の海岸山脈とアンデス山脈に挟まれた海抜約400mの台地である。台地周辺の谷沿いの露頭には、砂泥からなる水平の堆積層が100m以上の厚さで露出する。生痕化石を含む海成層と、これを覆う湖成・河川成堆積物が分布する。谷壁に厚さ数十メートルに及ぶ礫層が確認されるが、これは谷沿いの局所的な河川流路堆積物である。台地表面の多くは薄い礫で覆われ、海底が隆起する過程で山脈側から供給された。
地上絵は、暗赤色の平原に白っぽい線で描かれている。白い線は、礫層の下の粘土層である。粘土は収縮限界近くまで乾燥すると、灰白色を呈し、固くなる。ナスカの乾燥気候が、粘土層の固化と白色化を促進させた。礫は風で動かないが、砂は動く。線の凹みに貯まった砂塵は風で容易に吹き飛ばされ、線が維持される。このようにして描かれた線は消えることなく維持され、何千年もの保存が可能となった。
本研究の目的は、ナスカ地上絵が描かれたキャンバスがどのような地層から構成されているかを明らかすることである。この地域への立入は厳しく制限されており、地層の収集は不可能であったため、露頭観察と地形解析からナスカ台地の形成過程を調べた。
Nasca台地は、標高1000m級の海岸山脈とアンデス山脈に挟まれた海抜約400mの台地である。台地周辺の谷沿いの露頭には、砂泥からなる水平の堆積層が100m以上の厚さで露出する。生痕化石を含む海成層と、これを覆う湖成・河川成堆積物が分布する。谷壁に厚さ数十メートルに及ぶ礫層が確認されるが、これは谷沿いの局所的な河川流路堆積物である。台地表面の多くは薄い礫で覆われ、海底が隆起する過程で山脈側から供給された。
地上絵は、暗赤色の平原に白っぽい線で描かれている。白い線は、礫層の下の粘土層である。粘土は収縮限界近くまで乾燥すると、灰白色を呈し、固くなる。ナスカの乾燥気候が、粘土層の固化と白色化を促進させた。礫は風で動かないが、砂は動く。線の凹みに貯まった砂塵は風で容易に吹き飛ばされ、線が維持される。このようにして描かれた線は消えることなく維持され、何千年もの保存が可能となった。