[MIS08-P11] コア法を用いた野島断層近傍における応力測定
キーワード:応力測定、コア法、ASR法、DCDA
震源断層とその周辺において,間震期の応力の蓄積と地震発生時の応力の急激な降下といったサイクルが繰り返され地震が発生する。しかし,応力蓄積と地震発生の定量的な関係は未だ明らかにされておらず,地震発生サイクルのメカニズム解明のためには,震源断層近傍の応力状態の把握と経時変化の評価が必須である。一方、岩盤応力の測定には大きく分けて「原位置応力測定」と「コア法」の2つがあり,前者は原位置応力の条件下で行うので、応力測定結果の信頼性が高い反面,大深度になるにつれ測定の難易度やコストが上がり、三次元応力の測定ができないといったデメリットがある。そこで比較的安価で簡易なコア法の精度を向上させることで,原位置応力測定の結果を補完する,または取って代わることが期待されている。本研究では地震発生のメカニズム解明に寄与することを目的として,1995年に兵庫県南部地震を引き起こした野島断層をターゲットにして応力測定を行い,野島断層近傍の現在の応力状態について求めた。用いた応力測定法はコア法である「非弾性ひずみ回復法(Anelastic Strain Recovery method,通称ASR法)」と「DCDA(Diametrical Core Deformation Analysis)」の2つである。ASR法はコアを用いて応力解放直後の非弾性ひずみ回復を測定し,ひずみと応力の関係から応力を求める手法であり,特徴としては3次元で応力が評価できる点が挙げられる。DCDAは、コア軸に直交する面内の二つの主応力が異なり、その応力の解放後にコアが楕円形に変形すると仮定し、その長軸と短軸を測定することで,差応力と主応力の方向を評価する手法である。DCDAではLED光源を用いてコア径を非破壊で測定可能なため,繰り返し測定を行うことが出来る。本研究では兵庫県淡路市小倉で2016年から実施されたボーリング掘削において採取された花崗岩質の岩石コアを用いた。また本研究の結果と同様の地域で地震発生後から数年以内に水圧破砕法を実施した既存の研究結果を比較することで,応力蓄積の経時変化についても議論した。その結果,地震発生から約22年経過した現在は未だ応力が蓄積されていないことが示唆された。