日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 水惑星学

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 105 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:関根 康人(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、玄田 英典(東京工業大学 地球生命研究所、共同)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、座長:渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、福士 圭介関根 康人(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

14:30 〜 14:45

[MIS18-10] エンセラダス熱水環境下での水-岩石-有機物相互作用によるペプチド合成

*高萩 航1,2瀬尾 海渡2,3高野 淑識1渋谷 岳造1斎藤 誠史4島村 繁1松井 洋平1藤島 皓介5冨田 勝2,3高井 研1 (1.海洋研究開発機構、2.慶應義塾大学先端生命科学研究所、3.慶應義塾大学環境情報学部、4.サンテティエンヌ・ジャン・モネ大学、5.東京工業大学地球生命研究所)

キーワード:エンセラダス、水-岩石-有機物相互作用、熱水噴出系、ペプチド、化学進化

化学進化とは,単純な物質から複雑な化合物が無機的に進行する反応の連鎖であると考えられている.土星の衛星エンセラダスは直径が500km 程であるにも関わらず今現在でも熱水活動を維持している特異な天体であり,その環境で化学進化が起こりうるのかということは生命科学/惑星科学における大きな疑問の一つである.エンセラダスは初期地球の熱水噴出孔に似た環境を持っていると言われており,地球の深海化学合成生態系に見られるような生命活動が存在できる可能性も議論されている.本研究では,アミノ酸が岩石-熱水相互作用を通してエンセラダス環境中でペプチド化するか,つまりは脱水縮合過程が存在するか否かを検証した.脱水縮合は複雑な有機物を無機的に合成していく手段であり,生命の化学進化論に基づくと,生命が誕生するための重要な条件の一つであると言える.本研究ではエンセラダスの岩石コア成分,海水成分,温度圧力条件を耐高温高圧リアクター内に再現し,模擬的にエンセラダス熱水環境を構築した.その模擬エンセラダス熱水環境に6 種類のアミノ酸(Gly,Ala,Glu,Val,Ser,Asp) を加え,耐高温高圧リアクターで約150 日間の化学反応実験を行った.その結果,アミノ酸の初期量の1%程度がジペプチド化し,さらにGly のC 末端が露出したジペプチドが多く合成される傾向が見られた.得られた結果より,同環境における脱水縮合過程の存在が示され,さらにGly-Gly を起点とした自己触媒反応により有機物の多様化が起こることが強く示唆された.本研究は,エンセラダスのアルカリ熱水環境下で脱水縮合が起こりうることを初めて実験的に証明したものである.