日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-AE 天文学・太陽系外天体

[P-AE20] 系外惑星

2018年5月24日(木) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:生駒 大洋(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、成田 憲保(東京大学)

[PAE20-P05] ドップラートモグラフィー法によるWASP-33bの軌道傾斜角の測定

*渡辺 紀治1成田 憲保2ジョンソン マーシャル C.3 (1.総合研究大学院大学、2.東京大学、3.オハイオ州大学)

キーワード:系外惑星、惑星軌道

観測者から見た、恒星自転軸と惑星公転軸のなす見かけの角度である惑星軌道傾斜角λは、惑星の軌道進化を知るための重要なパラメーターの1つである。太陽系の惑星ような軌道進化を辿れば、惑星の公転が中心星の自転と揃う順行軌道(|λ|<90度)を描き、系外惑星でもその軌道をたどる惑星が多く占めている。しかし、それとは逆の場合である逆行軌道(|λ|>90度)を描く系外惑星も存在していることが明らかになっている。λを求める方法の1つとして、ドップラートモグラフィー法(DT法)という手法がある。これは、惑星がトランジットで恒星表面の一部を隠すと、中心星の自転によって広がったラインプロファイルに「惑星の影」と呼ばれる凹みが生じ、その惑星の影の移動を捉えて、λを求める方法である。この方法では、観測者から見た、恒星中心から惑星トランジットの軌道までの距離を、恒星半径で規格化したインパクトパラメーターbも導出できる。また、中心星の自転が速いほど、惑星の影が顕著に出現し、これらのパラメーターをDT法で測定しやすくなる。

ここで、先行研究[1]によるDT法の解析により、高速自転するA型の脈動星周辺を逆光軌道かつ円軌道で1.2日周期で公転するホットジュピターWASP-33bのλbが、2008年から2014年に渡ってわずかに変化していることが確認されている。この結果から、中心星の扁平による惑星軌道の歳差運動が起こっていることが示された。しかし、先行研究[1]では、2008年と2014年の2つの観測データしか使用していない。そこで、本研究では、さらに正確な歳差運動を測定するため、先行研究[1]で出したλとbの中間値が来るであろう2011年に取得された観測データからWASP-33bのλbを求めた。

本研究では、8.2mすばる望遠鏡の高分散分光器(HDS)で2011年10月19日(UT)に獲得された、WASP-33の観測データを使用した。これらのデータは、惑星トランジットの始まる約2時間前から、トランジット終了の約1時間後まで観測された35個の分光データで構成されている。まず、各々の分光データに含む幾多もある吸収線から、Least-Squares-Deconvolution(LSD)という手段で、各時刻のラインプロファイルを取得した。それらの中央値を中心星WASP-33のラインプロファイルとみなし、WASP-33bのλとbを求めるのに必要な恒星パラメーターをχ2フィッティングで算出した。さらに、各時刻のラインプロファイルから中心星のラインプロファイルの差を取ったところ、逆行軌道を示す惑星の影を確認できたが、中心星の脈動による成分も現れた。ここで、惑星パラメーターを算出しやすくするために、先行研究[1]で行われたフーリエフィルタリングという手法で惑星の影のみを取り出した。最後に、その惑星の影から、χ2フィッティングで、WASP-33bのλbを算出した。

以上の解析を行った結果から、先行研究[1]で求めた2008年と2014年のλbの値と離れていたので、本研究でも、WASP-33bの軌道が歳差運動することを確認した。また、先行研究[1]の結果から期待できる2011年のλbの期待値とも大きくずれていたことも確認でき、先行研究が想定した歳差運動と異なることが示された。

[1] Johnson et al. 2015