[PCG23-P07] 電離層の影響を除去した我が銀河中心からのデカメータ波ブラックホール電波源方位の実証
キーワード:電離層の影響、デカメータ波電波、銀河中心方向、ブラックホール・バイナリー
1.序 東北大学・デカメータ電波干渉計により我が銀河中心部より到来するデカメータ波電波パルスの観測により銀河中心部超巨大ブラックホールの究明を行っている。自転するブラックホールの極めて近傍より放射されるデカメータ電波はその自転に対応し強度変動しつつ放射されるため、自転周期と同期するパルスを形成すると理解され、観測されるパルス周期等をもとに、ブラックホールバイナリーの存在を結論するに至っている。観測されるパルス電波源の方位はバイナリーBHの位置を決定する重要な課題であるが、観測するデカメータ波電波21.86MHzでは電離層の影響を大きく受ける。本研究では、電離層を脱した宇宙空間に移動した等価干渉計システムによって直接電波源方位を決定することに成功したが、その方法論と結果を報告する。
2. 現在までの研究の概要 デカメータ電波干渉計による観測は各観測日毎5時間継続し、対象とする電波源パルスは7観測日にわたるFFT解析結果の平均スペクトルを用いて表現している。FFT解析の結果は天空からの白色雑音が主体であるが、誤差評価となる標準偏差0.012を有意に超えるスペクトル群が存在している。このスペクトル群にはi)干渉計の方位決定のために導入された基準とする人為的干渉計フリンジに起因する成分、ii)宇宙起源電波に対するフリンジスペクトル群があり、本研究におけるデータ処理においてii)の成分を取り出し、得られた実観測スペクトル群に対しシミュレーション法によって電波源パルスの示す基本パラメターを得ている。即ち、電波源はGaa およびGab (本研究にて仮称)によるバイナリー・ブラックホールを形成していて、そのスピン周期はGaa、174+-2sec, Gab, 147+-1sec で両者は2200 secで公転し合っている。ケプラー軌道から結論されるGaaおよびGabの質量は軌道面と視線方向が一致すると仮定するとき、それぞれ、太陽質量単位で2.34E6+-4E4 および1.98E6+-2E4となる。
3.等価電離層脱出干渉計法による電波源方位の決定法 観測対象とする21,86MHzの電波伝搬は電離層の影響を受け、観測時の電波源方位が地平線近傍になるときは到来方位角が5度以上も偏移する。したがって電離層の影響下で真の電波源方位を決定することが不可欠となる。方法論の一つとして実電離層密度分布に対する、電波伝播経路を算出し、干渉計の各観測局への到来方位を決定することが考えうる。しかし、これは、同時に電波伝搬路に沿った完璧な電子密度分布を得ることが不可能で現実的な方法ではない。そこで本研究では地上の干渉計システムを等価的に電離層の影響を脱した宇宙空間に移動し、この宇宙空間での等価干渉計(以下宇宙空間干渉計)によって直接電波源方位を決定することを行った。この方法の要点は以下の3点となる。即ち1)宇宙空間干渉計の基線位置ベクトル(各観測点間の相対位置ベクトル)は地上の干渉計の基線位置ベクトルと全く等しくとること、2)宇宙空間干渉計の絶対位置は電波源を出て電離層を経て地上干渉計に到来する電波のRay Path上に置くこと、および3)宇宙空間干渉計を通過して地上干渉計に到達する電波の電離層伝搬中に生ずる位相差を未知数のまま消去できる解析アルゴリズムを採用すること、となる。この方法の実行上、1)は容易に実現可能であるが、2)の実現には探査法で解析信号が最大になる点を探り当てる必要がある。本研究では宇宙空間干渉計の設定のための出発点を電離層の影響がないと仮定したRay Path上に置き、電離層の影響をうけた実際のRay Path上に移動するため、地心と観測点を結ぶ単位ベクトルと観測点と電波源を結ぶ単位ベクトルを含む大円内で方位決定基準関数と観測データの相関値が最大となる点を求めて位置を移動させた。3)については干渉計の各局のアンテナへの到来位相と干渉計の相関解析を可能とする最終出力点までの信号位相差を未知数のまま消去出来るアルゴリズムを採用しているため(詳細は発表時に譲る)宇宙空間干渉計と地上干渉計の間の電位層伝搬位相差は観測局の信号位相差に組み入れることによって消去することが出来た。
4.結論 本研究での電離層の影響を脱出する宇宙空間での等価干渉計を用いた相関解析により、ブラックホール・バイナリーの極く近傍より放射されると推論されていたデカメータ電波パルスの正確な電波源方位は+-0.1度の精度でSgrA*(RA 17h45m40s) Dec(-29度00分28秒)と実証された。
2. 現在までの研究の概要 デカメータ電波干渉計による観測は各観測日毎5時間継続し、対象とする電波源パルスは7観測日にわたるFFT解析結果の平均スペクトルを用いて表現している。FFT解析の結果は天空からの白色雑音が主体であるが、誤差評価となる標準偏差0.012を有意に超えるスペクトル群が存在している。このスペクトル群にはi)干渉計の方位決定のために導入された基準とする人為的干渉計フリンジに起因する成分、ii)宇宙起源電波に対するフリンジスペクトル群があり、本研究におけるデータ処理においてii)の成分を取り出し、得られた実観測スペクトル群に対しシミュレーション法によって電波源パルスの示す基本パラメターを得ている。即ち、電波源はGaa およびGab (本研究にて仮称)によるバイナリー・ブラックホールを形成していて、そのスピン周期はGaa、174+-2sec, Gab, 147+-1sec で両者は2200 secで公転し合っている。ケプラー軌道から結論されるGaaおよびGabの質量は軌道面と視線方向が一致すると仮定するとき、それぞれ、太陽質量単位で2.34E6+-4E4 および1.98E6+-2E4となる。
3.等価電離層脱出干渉計法による電波源方位の決定法 観測対象とする21,86MHzの電波伝搬は電離層の影響を受け、観測時の電波源方位が地平線近傍になるときは到来方位角が5度以上も偏移する。したがって電離層の影響下で真の電波源方位を決定することが不可欠となる。方法論の一つとして実電離層密度分布に対する、電波伝播経路を算出し、干渉計の各観測局への到来方位を決定することが考えうる。しかし、これは、同時に電波伝搬路に沿った完璧な電子密度分布を得ることが不可能で現実的な方法ではない。そこで本研究では地上の干渉計システムを等価的に電離層の影響を脱した宇宙空間に移動し、この宇宙空間での等価干渉計(以下宇宙空間干渉計)によって直接電波源方位を決定することを行った。この方法の要点は以下の3点となる。即ち1)宇宙空間干渉計の基線位置ベクトル(各観測点間の相対位置ベクトル)は地上の干渉計の基線位置ベクトルと全く等しくとること、2)宇宙空間干渉計の絶対位置は電波源を出て電離層を経て地上干渉計に到来する電波のRay Path上に置くこと、および3)宇宙空間干渉計を通過して地上干渉計に到達する電波の電離層伝搬中に生ずる位相差を未知数のまま消去できる解析アルゴリズムを採用すること、となる。この方法の実行上、1)は容易に実現可能であるが、2)の実現には探査法で解析信号が最大になる点を探り当てる必要がある。本研究では宇宙空間干渉計の設定のための出発点を電離層の影響がないと仮定したRay Path上に置き、電離層の影響をうけた実際のRay Path上に移動するため、地心と観測点を結ぶ単位ベクトルと観測点と電波源を結ぶ単位ベクトルを含む大円内で方位決定基準関数と観測データの相関値が最大となる点を求めて位置を移動させた。3)については干渉計の各局のアンテナへの到来位相と干渉計の相関解析を可能とする最終出力点までの信号位相差を未知数のまま消去出来るアルゴリズムを採用しているため(詳細は発表時に譲る)宇宙空間干渉計と地上干渉計の間の電位層伝搬位相差は観測局の信号位相差に組み入れることによって消去することが出来た。
4.結論 本研究での電離層の影響を脱出する宇宙空間での等価干渉計を用いた相関解析により、ブラックホール・バイナリーの極く近傍より放射されると推論されていたデカメータ電波パルスの正確な電波源方位は+-0.1度の精度でSgrA*(RA 17h45m40s) Dec(-29度00分28秒)と実証された。