[PPS08-P05] 氷微惑星を模擬した氷球の斜め衝突実験
キーワード:氷微惑星、衝突破壊、斜め衝突、衝突破壊強度
太陽系の天体は,前駆天体の衝突破壊,再集積を経て,微惑星から原始惑星へと成長したと考えられている.微惑星の衝突破壊,再集積過程を考える上で重要な物理パラメータは「衝突破壊強度」と「衝突破片の飛翔速度」である.この2つのパラメータに関しては,これまで多くの研究者によって室内衝突破壊実験が行われ,標的や弾丸物質,サイズ,衝突速度などの依存性が調べられてきた.本研究では,斜め衝突に着目する.微惑星は様々な衝突角度で互いに衝突し,原始惑星へと成長したと考えられている.そのため,微惑星の衝突現象の再現には,衝突破壊強度と衝突破片の飛翔速度に対する斜め衝突の影響を明らかにすることが必要となる.これまで,Fujiwara and Tsukamoto [1980]や保井他[2016]が,岩石天体を模擬した玄武岩,石膏,ガラスを用いて斜め衝突破壊実験を行い,衝突破壊強度や衝突破片の飛翔速度に対する衝突角度の依存性を明らかにした.本研究では,氷微惑星の成長過程を再現するため,氷球を用いた斜め衝突破壊実験を行った.そして,衝突破壊強度と衝突破片の飛翔速度に対する衝突角度の影響を調べた.
実験は,神戸大学に設置されている横型二段式水素ガス銃を用いた.弾丸には直径4.7mmのポルカーボネイト球と,直径2mmのガラス球(正面衝突のみ)を用いた.標的は,直径60~80mmの氷球を用意した.氷球は水道水を凍らせて作成し,空隙率はほぼ0%である.衝突速度は,0.8~4km/sと変化させたが,衝突角度の依存性は衝突速度0.8km/sでのみ調べた.衝突角度は90oを正面衝突とし,15~90oで変化させた.実験は-15℃の低温室内で行い,真空チャンバー内に回収ボックスに入れた標的を設置した.真空チャンバーの真空度は150~200Paである.衝突の様子は高速カメラで撮影した.撮影速度は105fps,露出時間は380nsである.
最初に,破片のサイズ頻度分布と衝突破壊強度に対する衝突角度の影響を調べるため,全回収破片の質量を計測した.破片の積算個数分布は,衝突角度30o以上ではほぼ一致した.一方,衝突角度30o以下では,衝突角度が小さくなると伴に,細かい破片の個数が少なくなる傾向が見られた.実験後に回収した衝突破片の中で,最も質量の大きい破片を最大破片と呼ぶ.この最大破片の質量mlを,元の標的の質量Mtで規格化した規格化最大破片質量ml/Mtと,衝突角度θの関係を調べた.その結果,衝突角度が30~90oでは規格化最大破片質量がほぼ同じで,約0.05となった.衝突角度が30o以下では,衝突角度の減少と伴に規格化最大破片質量は急増し,衝突角度が20oで約0.25,15oで約0.8となった.
衝突破壊強度Q*は,実験後に回収した最大破片の質量が元の標的の質量の半分になるときのエネルギー密度Qで定義される.エネルギー密度Qは,単位標的質量あたりの弾丸の運動エネルギーで定義され,Q=mpVi2/2Mt(mpは弾丸質量,Viは衝突速度)と表す.この定義から,氷の正面衝突での衝突破壊強度を計算した結果,17.0J/kgと得られた.これはガラスや石膏の約1000J/kgと比べて非常に小さい値である.また,衝突角度が30o以下では,衝突角度が小さくなるほど,衝突破壊強度が大きくなることがわかった.
次に,衝突破片の飛翔速度の代表値として,衝突点から180度回転させた反対点から飛び出す破片の飛翔速度(反対点速度Va)を計測した.その結果,反対点速度は衝突角度と正の相関があった.そして,衝突角度が20°ではエネルギー密度Qが異なっても反対点速度は約1m/sとほぼ一定になるが,それより衝突角度が大きくなると,エネルギー密度が大きくなるほど反対点速度は大きくなり,衝突角度が50°ではエネルギー密度が2倍になると,反対点速度も2倍になった.
衝突破壊強度および反対点速度と衝突角度の関係を定量的に示すため,本研究では新たに有効エネルギー密度Qeffを導入した.有効エネルギー密度Qeffは,エネルギー密度Qを用いて,Qeff=Qsin2θと表す.その結果,規格化最大破片質量ml/Mtおよび反対点速度Vaに関して,有効エネルギー密度Qeffを用いた経験式を得ることができた.それぞれ,ml/Mt=7.54Qeff-1.06, Va=0.05Qeff0.94となり,有効エネルギー密度を用いた衝突破壊強度Qeff*(定義はQ*と同じ)は12.8J/kgとなった.
[参考文献]Fujiwara and Tsukamoto [1980], Icarus 44, 142-153; 保井他[2016], DPS meeting #48, id. 318.12.
実験は,神戸大学に設置されている横型二段式水素ガス銃を用いた.弾丸には直径4.7mmのポルカーボネイト球と,直径2mmのガラス球(正面衝突のみ)を用いた.標的は,直径60~80mmの氷球を用意した.氷球は水道水を凍らせて作成し,空隙率はほぼ0%である.衝突速度は,0.8~4km/sと変化させたが,衝突角度の依存性は衝突速度0.8km/sでのみ調べた.衝突角度は90oを正面衝突とし,15~90oで変化させた.実験は-15℃の低温室内で行い,真空チャンバー内に回収ボックスに入れた標的を設置した.真空チャンバーの真空度は150~200Paである.衝突の様子は高速カメラで撮影した.撮影速度は105fps,露出時間は380nsである.
最初に,破片のサイズ頻度分布と衝突破壊強度に対する衝突角度の影響を調べるため,全回収破片の質量を計測した.破片の積算個数分布は,衝突角度30o以上ではほぼ一致した.一方,衝突角度30o以下では,衝突角度が小さくなると伴に,細かい破片の個数が少なくなる傾向が見られた.実験後に回収した衝突破片の中で,最も質量の大きい破片を最大破片と呼ぶ.この最大破片の質量mlを,元の標的の質量Mtで規格化した規格化最大破片質量ml/Mtと,衝突角度θの関係を調べた.その結果,衝突角度が30~90oでは規格化最大破片質量がほぼ同じで,約0.05となった.衝突角度が30o以下では,衝突角度の減少と伴に規格化最大破片質量は急増し,衝突角度が20oで約0.25,15oで約0.8となった.
衝突破壊強度Q*は,実験後に回収した最大破片の質量が元の標的の質量の半分になるときのエネルギー密度Qで定義される.エネルギー密度Qは,単位標的質量あたりの弾丸の運動エネルギーで定義され,Q=mpVi2/2Mt(mpは弾丸質量,Viは衝突速度)と表す.この定義から,氷の正面衝突での衝突破壊強度を計算した結果,17.0J/kgと得られた.これはガラスや石膏の約1000J/kgと比べて非常に小さい値である.また,衝突角度が30o以下では,衝突角度が小さくなるほど,衝突破壊強度が大きくなることがわかった.
次に,衝突破片の飛翔速度の代表値として,衝突点から180度回転させた反対点から飛び出す破片の飛翔速度(反対点速度Va)を計測した.その結果,反対点速度は衝突角度と正の相関があった.そして,衝突角度が20°ではエネルギー密度Qが異なっても反対点速度は約1m/sとほぼ一定になるが,それより衝突角度が大きくなると,エネルギー密度が大きくなるほど反対点速度は大きくなり,衝突角度が50°ではエネルギー密度が2倍になると,反対点速度も2倍になった.
衝突破壊強度および反対点速度と衝突角度の関係を定量的に示すため,本研究では新たに有効エネルギー密度Qeffを導入した.有効エネルギー密度Qeffは,エネルギー密度Qを用いて,Qeff=Qsin2θと表す.その結果,規格化最大破片質量ml/Mtおよび反対点速度Vaに関して,有効エネルギー密度Qeffを用いた経験式を得ることができた.それぞれ,ml/Mt=7.54Qeff-1.06, Va=0.05Qeff0.94となり,有効エネルギー密度を用いた衝突破壊強度Qeff*(定義はQ*と同じ)は12.8J/kgとなった.
[参考文献]Fujiwara and Tsukamoto [1980], Icarus 44, 142-153; 保井他[2016], DPS meeting #48, id. 318.12.