12:00 〜 12:15
[SCG57-24] 三重県中央構造線断層帯の発展:歪の局所化と軟化について
キーワード:中央構造線、マイロナイト、カタクレーサイト、石英c軸ファブリック、歪の局所化、断層帯の軟化
中央構造線は日本最長の断層で、西南日本の前弧域において海溝と平行して800 km以上延長される。中央構造線は白亜紀末に領家花崗岩中に延性剪断帯(マイロナイト帯)として形成されたが、その発展および冷却とともに歪は局所化し、脆性変形帯(カタクレーサイト帯)が延性剪断帯をオーバープリントして発達し、最終的には地下浅部でガウジが形成され地表に露出する。このような、中央構造線断層帯における歪の局所化は断層帯の軟化が大きく関わっているが、本発表では歪局所化の過程を記述するとともに軟化の原因について議論する。
本地域の三重県松阪市飯高町月出で中央構造線は南側に分布する白亜紀の三波川変成岩と北側に分布する白亜紀の領家変成岩・花崗岩質岩を境する断層で、東西走向で約60度北に傾斜する姿勢を示す(Shigematsu et al., 2012, Tectonophysics)。北側の中央構造線断層帯は,厚さ約80 mカタクレーサイト帯で構成され、その北側には軽微に破砕されたプロトマイロナイトが分布する。ここでは、両者の境界をカタクレーサイト前縁と呼ぶ。カタクレーサイトはおそらく物質境界である中央構造線の形成以前に発達したと考えられる。カタクレーサイト中にはプロトマイロナイトの破片のほか、特に中央構造線に近接する部分にはマイロナイトやウルトラマイロナイトの破片が認められる。
本研究では中央構造線断層の北側800 mまでの範囲を調査した。その結果、中央構造線断層帯の北側には中央構造線断層帯のほかに少なくとも2条のマイロナイト帯およびそれらをオーバープリントする数条のカタクレーサイト帯が発達していることが明らかとなった。本研究ではこれらのマイロナイト帯より系統的に採取した試料について、SEM-EBSDを用いて石英微細構造(主として再結晶粒径)と石英c軸ファブリックの測定を行ったが、その結果と解釈について述べる。殆どすべての試料は石英c軸が中間主歪軸(Y)に強く集中するY-集中石英c軸ファブリックを示す。また、一部の試料ではY軸で交差する大円に石英c軸が集中するタイプIIクロスガードルも弱く発達している。このクロスガードルは非対称な強度を持ち、北盤側が西に移動する左横ずれセンスの剪断が推定される。一方、Z軸を中心とする角半径30度程度の小円ガードルとY軸を通る大円からなるタイプIクロスガードルが中央構造線断層帯の中央構造線に近接するカタクレーサイト中のウルトラマイロナイト破片中に認められるほか、プロトマイロナイトとの境界部および中央構造線から300 m離れたマイロナイト中にタイプIクロスガードルに近い石英c軸ファブリックが部分的に発達している。
石英再結晶粒径は中央構造線から500 m以上離れた厚さ100 m以上のマイロナイト帯で140ミクロンと粗粒であるが、300 m離れたマイロナイトや中央構造線断層帯と接するプロトマイロナイト中では20-30ミクロンとなり、さらにウルトラマイロナイト中で10ミクロン以下となる。ただし、プロトマイロナイト中ではいったん70ミクロン程度の粗粒の再結晶粒子が形成されて後、20-30ミクロンの細粒の再結晶粒子に上書きされている組織が明らかとなった。
以上の結果に基づき、歪の局所化の過程は以下のように推定される。Y-集中石英c軸ファブリックは400-500度の温度条件で形成されると考えられているので(例えば竹下, 1996, 地質学雑誌)、最初に上記の3条のマイロナイト帯はこの温度条件で低差応力で形成された。その後、温度低下に伴い、最も北側のマイロナイトで変形が停止し、南側の2条のマイロナイト帯のみがやや高い差応力で変形した。さらに、温度が低下し、300-400度の温度条件で形成されると考えられるタイプIクロスガードルが、中央構造線に近接するウルトラマイロナイトおよび中央構造線から300 m離れたマイロナイト中の一部に高差応力下で形成された。この段階で、中央構造線に沿う変形は、中央構造線に接して分布するウルトラマイロナイトに局所化した。変形の局所化の原因は現段階では推定の域を出ないが、もっとも北側の厚いマイロナイトの原岩がカリ長石および石英を大量に含む鉱物レオロジー的には塑性強度が低い岩石であるので、中央構造線に近接するマイロナイト帯が流体の流入により軟化したことが考えられる。
本地域の三重県松阪市飯高町月出で中央構造線は南側に分布する白亜紀の三波川変成岩と北側に分布する白亜紀の領家変成岩・花崗岩質岩を境する断層で、東西走向で約60度北に傾斜する姿勢を示す(Shigematsu et al., 2012, Tectonophysics)。北側の中央構造線断層帯は,厚さ約80 mカタクレーサイト帯で構成され、その北側には軽微に破砕されたプロトマイロナイトが分布する。ここでは、両者の境界をカタクレーサイト前縁と呼ぶ。カタクレーサイトはおそらく物質境界である中央構造線の形成以前に発達したと考えられる。カタクレーサイト中にはプロトマイロナイトの破片のほか、特に中央構造線に近接する部分にはマイロナイトやウルトラマイロナイトの破片が認められる。
本研究では中央構造線断層の北側800 mまでの範囲を調査した。その結果、中央構造線断層帯の北側には中央構造線断層帯のほかに少なくとも2条のマイロナイト帯およびそれらをオーバープリントする数条のカタクレーサイト帯が発達していることが明らかとなった。本研究ではこれらのマイロナイト帯より系統的に採取した試料について、SEM-EBSDを用いて石英微細構造(主として再結晶粒径)と石英c軸ファブリックの測定を行ったが、その結果と解釈について述べる。殆どすべての試料は石英c軸が中間主歪軸(Y)に強く集中するY-集中石英c軸ファブリックを示す。また、一部の試料ではY軸で交差する大円に石英c軸が集中するタイプIIクロスガードルも弱く発達している。このクロスガードルは非対称な強度を持ち、北盤側が西に移動する左横ずれセンスの剪断が推定される。一方、Z軸を中心とする角半径30度程度の小円ガードルとY軸を通る大円からなるタイプIクロスガードルが中央構造線断層帯の中央構造線に近接するカタクレーサイト中のウルトラマイロナイト破片中に認められるほか、プロトマイロナイトとの境界部および中央構造線から300 m離れたマイロナイト中にタイプIクロスガードルに近い石英c軸ファブリックが部分的に発達している。
石英再結晶粒径は中央構造線から500 m以上離れた厚さ100 m以上のマイロナイト帯で140ミクロンと粗粒であるが、300 m離れたマイロナイトや中央構造線断層帯と接するプロトマイロナイト中では20-30ミクロンとなり、さらにウルトラマイロナイト中で10ミクロン以下となる。ただし、プロトマイロナイト中ではいったん70ミクロン程度の粗粒の再結晶粒子が形成されて後、20-30ミクロンの細粒の再結晶粒子に上書きされている組織が明らかとなった。
以上の結果に基づき、歪の局所化の過程は以下のように推定される。Y-集中石英c軸ファブリックは400-500度の温度条件で形成されると考えられているので(例えば竹下, 1996, 地質学雑誌)、最初に上記の3条のマイロナイト帯はこの温度条件で低差応力で形成された。その後、温度低下に伴い、最も北側のマイロナイトで変形が停止し、南側の2条のマイロナイト帯のみがやや高い差応力で変形した。さらに、温度が低下し、300-400度の温度条件で形成されると考えられるタイプIクロスガードルが、中央構造線に近接するウルトラマイロナイトおよび中央構造線から300 m離れたマイロナイト中の一部に高差応力下で形成された。この段階で、中央構造線に沿う変形は、中央構造線に接して分布するウルトラマイロナイトに局所化した。変形の局所化の原因は現段階では推定の域を出ないが、もっとも北側の厚いマイロナイトの原岩がカリ長石および石英を大量に含む鉱物レオロジー的には塑性強度が低い岩石であるので、中央構造線に近接するマイロナイト帯が流体の流入により軟化したことが考えられる。