日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 海洋底地球科学

2018年5月24日(木) 09:00 〜 10:30 302 (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、座長:羽入 朋子藤井 昌和(国立極地研究所)

09:15 〜 09:30

[SCG61-14] 地磁気全磁力データに基づくチリ三重点での沈み込みつつある拡大海嶺の火山活動の変遷

*松本 剛1石原 隆仙1野木 義史2 (1.琉球大学理学部、2.国立極地研究所)

キーワード:チリ三重点、地磁気異常、拡大速度

チリ三重点(CTJ)は,チリ西海岸のタイタオ半島沖の南緯46度13分・西経75度48分に位置する海嶺・海溝・海溝型三重点であり,ナスカプレートと南極プレートを産み出す拡大境界であるチリ海嶺がチリ海溝で南アメリカプレートの下の沈み込んでいる特異な海域である。2008~2009年に掛けて実施された「みらい」MR08-06航海(チリ沖の調査は2009年1月以降)では,チリ海嶺のセグメント境界に当たる断裂帯を複数通過する1本の長測線ではあるが,地磁気3成分データをもとに求められた全磁力異常の分布より,海底形成年代と拡大速度が求められ,沈み込みつつあるチリ海嶺に近付くにつれて拡大速度が遅くなっていくことが明らかにされた。その原因として,海嶺が海溝に近付く程マグマの供給量が減少することが示唆されている(Matsumoto et al, Geochemical Journal, 2013)。

 このことを作業仮説とし,2016~17年に実施された「みらい」MR16-09航海では,CTJ付近でセグメントに沿った4測線で,地磁気全磁力観測を含む海洋地球物理観測が行われた。また,1975年に実施された「コンラッド」RC1803航海,1982年に実施された「コンラッド」RC2304航海で得られた地磁気データ(ともに,NOAA/NGDCのMarine Trackline Daraを使用)のうち,CTJ付近でセグメントに沿って航走している測線を選択して使用した。これらをもとに,セグメント毎に海底年代と拡大速度を求め,海嶺が沈み込むメカニズムとCTJ周辺の広域テクトニクスを考察した。

 拡大軸セグメントは,CTJを含むものから北に向かって順番に,SCR1・SCR2・SCR3と云う名称で呼ばれている。セグメントSCR3では,11.5-8.8Ma間が47mm/yr,8.8-6.0Ma間が40mm/yrであった。セグメントSCR2では,2.6-1.8Ma間が27mm/yr,1.8-1.0Ma間が21mm/yrであった。セグメントSCR1では,4.2-3.3Ma間が30mm/yr,3.3-1.8Ma間が21mm/yrであった。以上により,拡大速度は海嶺軸に近付くほど減少する傾向があり,マグマ供給量の減少と火山活動の衰退が示唆される。形成されたばかりの若い海底が沈む原因としては,海溝付近での熱の損失により火成活動が停止した海嶺下のリソスフェアが冷却によって急激に厚くなり,周辺のリソスフェアと同化してともに抵抗なく「スラブ・プル」の力によって南アメリカプレートの下に沈み込んでいると見られる。