16:45 〜 17:00
[SEM16-12] IGRFを基礎とした日本周辺の地磁気時間変化モデル(1):国土地理院モデルとの比較
キーワード:地磁気変化モデル
阿部・宮原(2015)が主成分分析を用いて構築した日本周辺の地磁気変化モデル(国土地理院モデル)においては、地磁気が一般的には無発散とはならない。本研究では、気象庁地磁気観測所及び国土地理院によって得られた5観測所及び10地点における2005年から10年間の地磁気データを用いて、日本周辺の地磁気変化を磁気スカラーポテンシャルによって表現する係数を推定して地磁気変化モデルを構築した。磁気スカラーポテンシャルの表現式は日本付近の地球を平坦と近似した上で地表の原点からのデカルト座標系における空間座標の3次までの冪関数とする。水平座標の座標軸の方向は北向き、東向きとする。地磁気水平2成分、鉛直成分をそれぞれ9個、6個の係数で表現する表現式を用いて、地磁気データのIGRFからの差を表現する係数を最小二乗法で推定する。地磁気データは、日本時間22時から24時の3時間の毎時値の平均値とした日値を用いる。各地点における地磁気データとIGRFとの差を、その10年平均値として定義するオフセットと残差に分解し、残差を初期残差とする。地磁気変化のモデル化ではまず、初期残差の各年の年平均を表現する年モデルを求める。次に初期残差の年モデルからの差の各月の月平均を表現する月モデルを求める。最後に年モデルと月モデルとの合成に対する初期残差の差を表現する各日の日モデルを求める。年モデル、月モデル、日モデルの合成を地磁気変化モデルとする。初期残差と地磁気変化モデルとの差を最終残差とする。モデルを表現する係数の最小二乗推定では5箇所の観測所のデータに対して、それ以外の10地点のデータより大きな重みを与える。異なる重み付けに加えてロバスト最小二乗法により、5箇所の観測所データよりも10地点のデータに混入し易いノイズの係数推定への影響を軽減する。得られた最終残差から得られるRMSEは15地点の平均で3成分とも2nTを下回り、阿部・宮原(2015)の結果よりも1nT程度小さい値となった。またLOOCV(一個抜き交差検証)の結果、RMSの15地点の平均は最大でY成分の約2.5nTで阿部・宮原(2015)の結果よりも約2nT小さい値が得られた。