日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL29] 泥火山と地球化学的・地質地形学的・生物学的関連現象

2018年5月24日(木) 13:45 〜 15:15 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:浅田 美穂(国立研究法人海洋研究開発機構)、土岐 知弘(琉球大学理学部)、井尻 暁(国立研究開発法人海洋研究開発機構、共同)、辻 健(九州大学工学研究院)、座長:井尻 暁浅田 美穂

14:40 〜 15:00

[SGL29-04] 新潟県の泥火山および地表ガス徴から産出するガスの起源・移動・変質

★招待講演

*早稲田 周1奥村 文章1井尻 暁2 (1.石油資源開発株式会社、2.海洋研究開発機構)

キーワード:泥火山、炭素同位体組成、地表ガス徴

新潟県内の泥火山2箇所(蒲生、八石)および地表ガス徴5箇所(黒川、新発田、新津、妙法寺、大沢)からガス試料を採取した。ガス組成および炭素同位体組成からガスの起源、熟成度、二次的変質作用の有無について考察する。新発田の水田からのガスは微生物起源、妙法寺は熱分解起源、黒川は混合ガスと推定される。蒲生および八石の泥火山、新津および大沢の地表ガス徴については、メタン炭素同位体組成は-50‰よりも重く、熱分解起源を示唆するが、炭化水素組成[C1/(C2+C3)]は100以上を示し、通常の熱分解起源ガスよりもメタンに富む。このようなガスは熱分解起源ガスが地表への移動途中に炭化水素組成のみが変化した可能性が高い。その他の可能性として、微生物起源ガスがバクテリアによる酸化分解を受けてメタン炭素同位体組成が重い方向に変化した可能性と、原油が微生物分解を受けて二酸化炭素が生成し、その二酸化炭素をメタン生成菌が還元することによってメタンが生成した可能性が考えられる。後者のプロセスは二次的メタン生成と呼ばれる。蒲生、八石、新津ではガス中のメタンと二酸化炭素の炭素同位体組成の差δ13C(CH4-CO2)が-50~-65‰程度となっており、二次的メタン生成が起こっている可能性を示す。一方、大沢と新発田については、メタンと二酸化炭素の同位体組成の差が小さく、メタンが酸化されている可能性を示す。特に大沢はC1/(C2+C3)が高いことから、元々微生物起源の可能性もある。メタンとエタンの炭素同位体組成の関係から新発田のガスはほぼ純粋な微生物起源ガスであることを示す。エタンとプロパンの炭素同位体組成の関係から、八石、蒲生、新津についてはプロパンが微生物分解を受けていると推定される。熱分解成分の熟成度については、エタン炭素同位体組成から、黒川、八石はビトリナイト反射率(Ro)換算で0.9%、妙法寺1%、新津1.1~1.2%、蒲生1.6%程度と推定される。

ガスに付随して産出する水については、蒲生・八石の泥火山および大沢の地表ガス徴から試料を採取した。水のイオン組成、酸素・水素安定同位体組成から蒲生、大沢についてはほぼ地表水と考えられる。八石は酸素同位体組成が最も重く海水起源を示唆するが、塩化物イオン濃度は海水の1/3程度である。本試料は粘土鉱物の層間水により希釈されている可能性が高い。