[SGL30-P02] 東海層群大田テフラのジルコンU-Pb年代およびフィッション・トラック年代
キーワード:大田テフラ、東海層群、ジルコン、U-Pb年代測定、フィッション・トラック年代
火山列島からなる日本では堆積物中に多数のテフラが挟在し,広域テフラを年代指標とした編年技術は,地層の堆積年代の決定と対比に非常に有効である.近年は新しい分析技術の開発や各地のテフラ記載データの蓄積により,完新世や更新世のみならず鮮新世のテフラについても対比・編年指標としての適用が進められている.
東海地方に広く分布する鮮新世東海層群にも多くのテフラが挟在しており,大田テフラはこの中でも代表的な広域テフラである.大田テフラの年代については,主にジルコンを用いたフィッション・トラック年代測定が複数行われ,3.3-5.24 Maの様々な年代が報告されている[1].大田テフラの年代決定は東海層群の層序と編年の確立に加え,中部日本における同時期の地層の広域対比においても極めて重要である.そこで本研究では,大田テフラの年代をより明確にする目的で,大田テフラ相当とされている岐阜県東濃地域に分布する中津川1・2火山灰層[2]を対象として,同一ジルコンを用いたU-Pb年代測定およびフィッション・トラック年代測定を行った.
試料は岐阜県中津川市から採取した上下2層準の試料を用いた.U-Pb年代は異質粒子およびディスコーダント粒子を除いて加重平均年代計算を行い,3.78±0.1 Ma,3.90±0.11 Maの年代が得られた.フィッション・トラック年代は,U-Pb年代計算に採用した粒子から加重平均年代計算を行い,3.74±0.24 Ma,4.11±0.27 Maの年代が得られた.ジルコンの閉鎖温度は,U-Pb法では約900 °C [3],フィッション・トラック法では約240 °C [4]とされているが,本研究の測定年代は,U-Pb年代とフィッション・トラック年代がどちらも誤差の範囲で一致する.このことはジルコンが高温で結晶化してから急冷されたことを示し,これらの年代がテフラの噴出年代であると考えられる.
この年代値は,先行研究でのフィッション・トラック年代値と整合する.またこの結果は,三浦層群との対比から古地磁気層序と生層序に基づきテフラ年代を約3.9Maと推測した里口ほか(2005)[5]の検討とも一致している.本研究ではフィッション・トラックおよびU-Pbダブル年代測定で大田テフラの年代を推定したが,この結果は大田テフラの年代決定において先行研究を補完し,中部日本の鮮新統の広域層序と年代整理の上で重要な手がかりとなると考えられる.
本研究は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「地層処分技術調査等事業(地質環境長期安定性評価確証技術開発)」の成果の一部である.
引用文献: [1]中山・吉川 (1995), 地球科学, 49, 406-418. [2]陶土団体研究グループ (1985), 地団研専報,29, 101-117. [3]Cherniak and Watson (2001), Chem. Geol., 172, 5–24. [4]Hurford (1986), Contrib. Mineral. Petrol., 92, 413-427. [5]里口ほか (2005), 地質雑, 111, 74-86.
東海地方に広く分布する鮮新世東海層群にも多くのテフラが挟在しており,大田テフラはこの中でも代表的な広域テフラである.大田テフラの年代については,主にジルコンを用いたフィッション・トラック年代測定が複数行われ,3.3-5.24 Maの様々な年代が報告されている[1].大田テフラの年代決定は東海層群の層序と編年の確立に加え,中部日本における同時期の地層の広域対比においても極めて重要である.そこで本研究では,大田テフラの年代をより明確にする目的で,大田テフラ相当とされている岐阜県東濃地域に分布する中津川1・2火山灰層[2]を対象として,同一ジルコンを用いたU-Pb年代測定およびフィッション・トラック年代測定を行った.
試料は岐阜県中津川市から採取した上下2層準の試料を用いた.U-Pb年代は異質粒子およびディスコーダント粒子を除いて加重平均年代計算を行い,3.78±0.1 Ma,3.90±0.11 Maの年代が得られた.フィッション・トラック年代は,U-Pb年代計算に採用した粒子から加重平均年代計算を行い,3.74±0.24 Ma,4.11±0.27 Maの年代が得られた.ジルコンの閉鎖温度は,U-Pb法では約900 °C [3],フィッション・トラック法では約240 °C [4]とされているが,本研究の測定年代は,U-Pb年代とフィッション・トラック年代がどちらも誤差の範囲で一致する.このことはジルコンが高温で結晶化してから急冷されたことを示し,これらの年代がテフラの噴出年代であると考えられる.
この年代値は,先行研究でのフィッション・トラック年代値と整合する.またこの結果は,三浦層群との対比から古地磁気層序と生層序に基づきテフラ年代を約3.9Maと推測した里口ほか(2005)[5]の検討とも一致している.本研究ではフィッション・トラックおよびU-Pbダブル年代測定で大田テフラの年代を推定したが,この結果は大田テフラの年代決定において先行研究を補完し,中部日本の鮮新統の広域層序と年代整理の上で重要な手がかりとなると考えられる.
本研究は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「地層処分技術調査等事業(地質環境長期安定性評価確証技術開発)」の成果の一部である.
引用文献: [1]中山・吉川 (1995), 地球科学, 49, 406-418. [2]陶土団体研究グループ (1985), 地団研専報,29, 101-117. [3]Cherniak and Watson (2001), Chem. Geol., 172, 5–24. [4]Hurford (1986), Contrib. Mineral. Petrol., 92, 413-427. [5]里口ほか (2005), 地質雑, 111, 74-86.