[SMP38-P02] 温度,圧力によるhydromagnesite Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O の構造変化
キーワード:CO2地中貯留、ハイドロマグネサイト Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O、構造変化、高温XRD測定、高圧XRD測定
【はじめに】
近年,地球温暖化現象は,最も重要な環境問題の1つとなっている.CO2の地中貯留には,化石燃料の燃焼によって排出された大気中のCO2を除去する大きな可能性がある(薛,中尾 2008).鉱物としてCO2を隔離する際,CO2は炭酸塩岩として貯留され,magnesite MgCO3, dolomite CaMg(CO3)2, calcite CaCO3, and aragonite CaCO3 といったマグネシウム,カルシウム炭酸塩がCO2地中貯留に適した鉱物であるという認識がなされてきた.しかしながら,炭酸マグネシウム水和物は,0から200 oCの温度範囲において水溶液中から直接沈澱するので(Cheng et al. 2009; Yamamoto et al. 2017),我々は,CO2地中貯留に関して,炭酸マグネシウム水和物が最も適した鉱物であると考えている.水溶液から形成される主要な炭酸マグネシウム水和物には,nesquehonite, MgCO3·3H2Oとhydromagnesite, Mg5(CO3)4(OH)2·4H2O がある.これらの鉱物の物性を理解するとは,地質学的な時間スケールにおいて,環境的な安全性や鉱物相の安定性を評価する上で重要な要因となる.しかしながら,hydromagnesite の温度や圧力に対する評価を行った先行研究はほとんどない.従って,本研究では,高温XRD測定,熱重量,示差熱分析(TG-DTA),高圧XRD測定を行うことにより,hydromagnesiteの構造変化を明らかにする.
【実験方法】
実験には,合成hydromagnesiteを用いた.in-situ 高温XRD測定は,国立研究開発法人物質・材料研究機構において,室温から550 oCの範囲で行った.in-situ 高圧XRD測定は高エネルギー加速器研究機構の放射光科学研究施設にあるBL-18Cステーションにおいて,DACを用いて行った.
【結果と考察】
in-situ 高温XRD測定の結果から,170 oCまでピークに大きな変化はなかった.温度の増加に伴い,200 oCからピークの強度が減少し始め,290 oCでは,hydromagnesiteのピークは消失した.さらに温度が上昇すると,periclase, MgOのピークが出現し,periclase単相となった.TG-DTAの結果では,200から340 oC,340から500 oCの範囲において吸熱ピークが認められ,質量損失計算からそれぞれ脱水と脱炭酸によるものであった.従って,hydromagnesiteはmagnesiteへと変化することなく,periclase,二酸化炭素,水へと分解され,hydromagnesiteの熱分解過程においては以下の反応が生じている.Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O → 5MgO + 4CO2 + 5H2O
in-situ 高圧XRD測定の結果から,圧力の増加に伴い,hydromagnesiteのピークが徐々に減少し,6.4GPaにおいて,ほとんどのピークが消失した.その後,圧力を4.2GPaまで脱圧させると,hydromagnesiteのピークが再び出現した.よって,少なくとも6.4GPaまでhydromagnesiteは脱水しないことが示唆される.加圧することによって生じるhydromagnesiteの非晶質化は,結晶構造中のMgO6八面体とCO3の配列が無秩序化するためであると考えられる.
近年,地球温暖化現象は,最も重要な環境問題の1つとなっている.CO2の地中貯留には,化石燃料の燃焼によって排出された大気中のCO2を除去する大きな可能性がある(薛,中尾 2008).鉱物としてCO2を隔離する際,CO2は炭酸塩岩として貯留され,magnesite MgCO3, dolomite CaMg(CO3)2, calcite CaCO3, and aragonite CaCO3 といったマグネシウム,カルシウム炭酸塩がCO2地中貯留に適した鉱物であるという認識がなされてきた.しかしながら,炭酸マグネシウム水和物は,0から200 oCの温度範囲において水溶液中から直接沈澱するので(Cheng et al. 2009; Yamamoto et al. 2017),我々は,CO2地中貯留に関して,炭酸マグネシウム水和物が最も適した鉱物であると考えている.水溶液から形成される主要な炭酸マグネシウム水和物には,nesquehonite, MgCO3·3H2Oとhydromagnesite, Mg5(CO3)4(OH)2·4H2O がある.これらの鉱物の物性を理解するとは,地質学的な時間スケールにおいて,環境的な安全性や鉱物相の安定性を評価する上で重要な要因となる.しかしながら,hydromagnesite の温度や圧力に対する評価を行った先行研究はほとんどない.従って,本研究では,高温XRD測定,熱重量,示差熱分析(TG-DTA),高圧XRD測定を行うことにより,hydromagnesiteの構造変化を明らかにする.
【実験方法】
実験には,合成hydromagnesiteを用いた.in-situ 高温XRD測定は,国立研究開発法人物質・材料研究機構において,室温から550 oCの範囲で行った.in-situ 高圧XRD測定は高エネルギー加速器研究機構の放射光科学研究施設にあるBL-18Cステーションにおいて,DACを用いて行った.
【結果と考察】
in-situ 高温XRD測定の結果から,170 oCまでピークに大きな変化はなかった.温度の増加に伴い,200 oCからピークの強度が減少し始め,290 oCでは,hydromagnesiteのピークは消失した.さらに温度が上昇すると,periclase, MgOのピークが出現し,periclase単相となった.TG-DTAの結果では,200から340 oC,340から500 oCの範囲において吸熱ピークが認められ,質量損失計算からそれぞれ脱水と脱炭酸によるものであった.従って,hydromagnesiteはmagnesiteへと変化することなく,periclase,二酸化炭素,水へと分解され,hydromagnesiteの熱分解過程においては以下の反応が生じている.Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O → 5MgO + 4CO2 + 5H2O
in-situ 高圧XRD測定の結果から,圧力の増加に伴い,hydromagnesiteのピークが徐々に減少し,6.4GPaにおいて,ほとんどのピークが消失した.その後,圧力を4.2GPaまで脱圧させると,hydromagnesiteのピークが再び出現した.よって,少なくとも6.4GPaまでhydromagnesiteは脱水しないことが示唆される.加圧することによって生じるhydromagnesiteの非晶質化は,結晶構造中のMgO6八面体とCO3の配列が無秩序化するためであると考えられる.