日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS03] Induced and triggered seismicity: case-studies, monitoring and modeling techniques

2018年5月23日(水) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:Francesco Grigoli(ETH-Zurich, Swiss Seismological Service)、青木 陽介(東京大学地震研究所)、Enescu Bogdan(京都大学 大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻 地球物理学教室、共同)、Luca Urpi(Swiss Seismological Service - ETH Zurich)

[SSS03-P01] 室内水圧破砕実験中に生じるAEの絶対規模推定

*直井 誠1今北 啓一1山本 和畝1川方 裕則2陳 友晴1森重 有矢1堤 直史1石田 毅1田中 浩之3有馬 雄太郎3兵藤 大祐3 (1.京都大学、2.立命館大学、3.石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

キーワード:水圧破砕、アコースティックエミッション、絶対規模推定、亀裂観察、誘発地震

近年活発になっているシェールガス・オイル開発においては,岩盤の透水性を水圧破砕によって上昇させることで資源を回収する.実際の生産現場においては,しばしば微小地震活動から水圧破砕の影響領域の推定が行なわれており,微小地震と亀裂造成の関係のより深い理解が求められている.これまで我々のグループでは,破砕流体に紫外線照射下で発光する樹脂を用いた室内水圧破砕実験を行い,試験後の供試体を切断して観察した流体浸入領域と実験中に生じたAcoustic Emission(AE)活動を比較することで,亀裂造成メカニズムと地震性イベントの誘発プロセスの関係を議論してきた.


蛍光樹脂の浸入領域の観察では,数十μmオーダーの亀裂形状を詳細に観察することが可能であり,これらがどれくらいの規模のAEに関係するかは,亀裂とAEの関係の理解に重要と考えられる.しかし,一般にAEセンサは複雑で,かつ貼り付け状態によって変化する周波数特性を持つために,AEの絶対規模を求めることは困難であり,多くの既往研究では波形の振幅値から相対規模のみを求めて議論を行っている.そこで本研究では,微小振動の速度を直接測定できるレーザードップラー速度計(以下,LDV)を用いてAEセンサの絶対感度および周波数特性を測定し,実験中に得られたAE波形を補正することで,個々のAEのモーメント・マグニチュード(Mw)の推定を行った.絶対規模の推定を行なうことで,個々のAEがどれくらいの大きさのクラックに対応するかを推定でき,亀裂観察結果と比較することが可能となる.


実験には,実際にシェールガス・オイル開発が行われている米国イーグルフォード層の露頭から採取したサンプルを65 x 65 x 130 mmの直方体に整形したものを用いた.供試体中央に穿孔した直径6 mmの破砕孔を用いて水圧破砕を実施し,その際に生じるAEを,供試体に貼り付けた24個のAEセンサで,サンプリングレート10 MS/sで連続収録した.連続記録から切り出したAEに対して,自動走時検測結果を元に震源を決定した後,波形相関を用いて走時の高精度読み取りとDouble Difference法による相対震源決定を実施した.3供試体に対して行った実験において,厚み1 mm以下の非常に薄い二次元的な分布を示す,415–466個のAE震源が得られた.蛍光観察においては,これらの震源分布と調和的なき裂が明瞭に描き出された.


得られたAE記録に対し,以下の方法でMwの推定を行った.まず,アルミ供試体の底面に発振子を取り付けてパルス波を発振し,対面における振動速度をLDVで測定した.その後,同じ信号をAEセンサでも記録し,これをLDVの記録でデコンボリューションしてAEセンサの周波数特性を求めた.AEセンサの周波数特性は供試体とのカップリング状況に依存すると考えられるので,受振子については16回センサを貼り直して試験を繰り返し,得られたデータの平均をとって以降の解析に用いた.一方,発振子のカップリングは一定にするため,LDVによる計測からAEセンサでの計測を追えるまで貼りなおしは行わなかった.


水圧破砕試験中に得られたAE記録を,上記の手法で得られた周波数特性に加えセンサの指向性を補正することで,個々のAEの地動スペクトルを推定した.これらに対してω2モデルを仮定した理論スペクトルをフィッティングすることで,個々のAEの地震モーメントMoならびにMwを求めた.得られたMwは−8.5から−7.5で,応力降下量3 MPaを仮定するとクラックサイズは0.3–1 mmと推定される.また,サイズ分布は概ねGutenberg Richter則に従うことが確認でき,1.3程度のb値が得られた.