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[SSS08-12] DInSAR解析による2016年熊本地震の地表地震断層の変位量分布
キーワード:2016年熊本地震、地表地震断層、断層変位、差分干渉SAR
1.はじめに
2016年熊本地震では,地表地震断層の抽出に差分干渉SAR(DInSAR)が本格的に活用され,布田川-日奈久断層帯のほか,阿蘇北西部や熊本市街地まで広範囲にわたって複雑に地表地震断層が出現したことが明らかになった(Fujiwara et al.,2016)。断層主部から離れた地表変位は,DInSARの結果に基づいて,現場の地表踏査で追認されたものも多い。こうしたリモセン技術は,広範囲に見落としなく地表地震断層を抽出できるために,変位量をデータベース化する上で,非常に有効なツールとなると思われる。本研究では,DInSARに基づく3成分の地殻変動分布から,熊本地震の地表地震断層の変位量分布を整理した。
2.DInSAR解析から得られた地殻変動
ALOS-2 PALSAR-2の2016/3/7-2016/4/18のペア(南行軌道,西向き),および2016/3/29-2016/4/26のペア(北行軌道,東向き)を用いて,地震に伴う地殻変動の3成分を求めた。準東西成分と準上下成分は,差分干渉処理から得られる各ペアのLOS変位を組み合わせて求めた。また,南北成分は,MAI処理によって得られる各ペアの衛星飛翔方向の変位成分を組み合わせて求めた。地表での分解能(画素サイズ)は東西,上下成分が約10m,南北成分が約50mである。解析には,これを10mグリッドに内挿した上で,3成分を求めた。
得られた変動分布には,布田川断層の北側のほか,布田川断層西方延長と日奈久断層に挟まれた領域にも沈降が認められる。水平成分では,布田川-日奈久断層帯を挟んで北側が東から北東側へ,南側が南西から南側へ移動する傾向が認められる。この傾向は,近傍のGNSS観測点の地震時変位と調和的である。また,小林ほか(2017)がSAR画像のピクセルオフセット法で求めた3成分変位の分布ともよく似ており,地震に伴う地殻変動を適切に捉えられたと考えられる。
3.断層変位量の計測
得られた3成分の地殻変動データを用いて,Fujiwara et al.(2016)によって抽出された228断層の変位量を計測した。各断層トレース上で200m間隔に横断測線を設け,各測線で断層から±100mの範囲内で断層変位量を計測した。具体的には,(1)この測線上で10m毎に計測点を設け,(2)隣接する計測点の差が最大となる区間を断層と評価した上で,(3)断層を挟んで同じ傾向が続く最遠方の2計測点での相対変位を断層変位量と定義した。このとき,同一プロファイル上で非干渉の領域が多数を占めている場合には,計測対象から除外した。この結果,布田川断層帯に沿う断層変位量はほとんど得ることができなかったが,同断層帯から離れた地域では多数の変位データを取得できた。断層変位量は,多くの地点で,上下成分が卓越している。布田川-日奈久断層帯から離れた地点では,熊本市街地で10~20cm程度である。一方,阿蘇北西部で比較的大きく,80cm近くの変位が推定された地点も見られる。
4.断層変位と活断層との空間的な関係
既知の活断層(活断層研究会,1991)からの距離に対して,得られた変位量をプロットすると,地表地震断層の変位量が,既知の活断層からの距離に応じて指数関数的に減少する傾向が認められる。この傾向は,筆者らが2011年福島県浜通り地震について行った検討結果でも得られている(青柳・大沼,2017)。また,地表に変位を生じた国内の16地震について,副断層の変位量を主断層からの距離に応じて整理した高尾ほか(2013)の結果とも類似している。したがって,地表地震断層の変位量は,一般に活断層から離れるほど小さくなる。ただし,布田川-日奈久断層帯を主断層として考えた場合には,阿蘇北西側の地表地震断層は主断層からかなり遠方に発生したことになる。阿蘇北西側の地表地震断層の成因については検討が必要であるが,合理的な断層変位予測には,変位の累積性が認められる活断層からの位置関係を総合的に検討することが重要と思われる。
2016年熊本地震では,地表地震断層の抽出に差分干渉SAR(DInSAR)が本格的に活用され,布田川-日奈久断層帯のほか,阿蘇北西部や熊本市街地まで広範囲にわたって複雑に地表地震断層が出現したことが明らかになった(Fujiwara et al.,2016)。断層主部から離れた地表変位は,DInSARの結果に基づいて,現場の地表踏査で追認されたものも多い。こうしたリモセン技術は,広範囲に見落としなく地表地震断層を抽出できるために,変位量をデータベース化する上で,非常に有効なツールとなると思われる。本研究では,DInSARに基づく3成分の地殻変動分布から,熊本地震の地表地震断層の変位量分布を整理した。
2.DInSAR解析から得られた地殻変動
ALOS-2 PALSAR-2の2016/3/7-2016/4/18のペア(南行軌道,西向き),および2016/3/29-2016/4/26のペア(北行軌道,東向き)を用いて,地震に伴う地殻変動の3成分を求めた。準東西成分と準上下成分は,差分干渉処理から得られる各ペアのLOS変位を組み合わせて求めた。また,南北成分は,MAI処理によって得られる各ペアの衛星飛翔方向の変位成分を組み合わせて求めた。地表での分解能(画素サイズ)は東西,上下成分が約10m,南北成分が約50mである。解析には,これを10mグリッドに内挿した上で,3成分を求めた。
得られた変動分布には,布田川断層の北側のほか,布田川断層西方延長と日奈久断層に挟まれた領域にも沈降が認められる。水平成分では,布田川-日奈久断層帯を挟んで北側が東から北東側へ,南側が南西から南側へ移動する傾向が認められる。この傾向は,近傍のGNSS観測点の地震時変位と調和的である。また,小林ほか(2017)がSAR画像のピクセルオフセット法で求めた3成分変位の分布ともよく似ており,地震に伴う地殻変動を適切に捉えられたと考えられる。
3.断層変位量の計測
得られた3成分の地殻変動データを用いて,Fujiwara et al.(2016)によって抽出された228断層の変位量を計測した。各断層トレース上で200m間隔に横断測線を設け,各測線で断層から±100mの範囲内で断層変位量を計測した。具体的には,(1)この測線上で10m毎に計測点を設け,(2)隣接する計測点の差が最大となる区間を断層と評価した上で,(3)断層を挟んで同じ傾向が続く最遠方の2計測点での相対変位を断層変位量と定義した。このとき,同一プロファイル上で非干渉の領域が多数を占めている場合には,計測対象から除外した。この結果,布田川断層帯に沿う断層変位量はほとんど得ることができなかったが,同断層帯から離れた地域では多数の変位データを取得できた。断層変位量は,多くの地点で,上下成分が卓越している。布田川-日奈久断層帯から離れた地点では,熊本市街地で10~20cm程度である。一方,阿蘇北西部で比較的大きく,80cm近くの変位が推定された地点も見られる。
4.断層変位と活断層との空間的な関係
既知の活断層(活断層研究会,1991)からの距離に対して,得られた変位量をプロットすると,地表地震断層の変位量が,既知の活断層からの距離に応じて指数関数的に減少する傾向が認められる。この傾向は,筆者らが2011年福島県浜通り地震について行った検討結果でも得られている(青柳・大沼,2017)。また,地表に変位を生じた国内の16地震について,副断層の変位量を主断層からの距離に応じて整理した高尾ほか(2013)の結果とも類似している。したがって,地表地震断層の変位量は,一般に活断層から離れるほど小さくなる。ただし,布田川-日奈久断層帯を主断層として考えた場合には,阿蘇北西側の地表地震断層は主断層からかなり遠方に発生したことになる。阿蘇北西側の地表地震断層の成因については検討が必要であるが,合理的な断層変位予測には,変位の累積性が認められる活断層からの位置関係を総合的に検討することが重要と思われる。