日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] 活断層と古地震

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所、共同)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)、座長:近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、石山 達也(東京大学地震研究所)

14:45 〜 15:00

[SSS08-22] 松江地域周辺のレス堆積物を対象とした遊離酸化鉄分析による年代推定手法の分解能に関する検討

*田中 雅章1中村 克1清水 雄一1田中 竹延2 (1.中国電力株式会社、2.株式会社阪神コンサルタンツ)

キーワード:遊離酸化鉄分析、結晶化指数、土壌年代、レス堆積物、赤色土、松江地域周辺

断層の活動性を評価するために,放射性炭素年代測定法の適用範囲を超える時代の堆積物の年代推定には主にテフロクロノロジーを用いた手法が利用されているが,テフラが認識されない地域における断層活動性評価には堆積物の年代推定手法が大きな課題となっている。
テフラに代わる年代指標として,日本列島に普遍的に分布する土壌に着目し,遊離酸化鉄分析結果から年代を推定する手法が提案されている。永塚(1973)は,赤色土化(土壌化)程度の定量的指標に基づく土壌分類手法を示し,またNagatsuka and Maejima(2001),佐々木(2011)等は,レスとされた風成堆積物は結晶化指数が0.5以上であれば赤色土に分類され,赤色土化には約12.5万年の時間を要するとしている。一方,永塚(1973)は,土壌分類手法の提案に際し,東海地方および近畿地方の様々な地形における母材から生成された土壌等を対象に,遊離酸化鉄の活性度と結晶化指数の分布領域を示しているが,特に相対的に古い堆積物である赤色土の分布領域の値のばらつきが大きい傾向が認められ,結晶化指数が0.5未満を示すデータも含まれている。したがって,これらの年代推定手法の信頼性向上のためには,層序学的な検証事例からその分解能についても把握しておく必要がある。
本検討に先立ち,田中ほか(2016)は,松江地域周辺に分布するレス堆積物を対象に,遊離酸化鉄分析による年代推定手法の検証を行っている。松江地域周辺では,三瓶山起源の三瓶木次テフラ(SK,約10.5万年前)や大山起源の大山松江テフラ(DMP,約13万年前)が保存されていることから,段丘堆積物を覆うDMPより下位のレス堆積物について本手法を適用した結果,DMPより下位のレス堆積物は,概ね赤色土に分類されることを確認している。
今回の報告では,田中ほか(2016)が調査した箇所と同一の2地点(中位段丘(松江市坂本町坂本下),高位段丘(松江市玉湯町本郷))において,段丘堆積物を覆うレス堆積物を対象に,DMP直下から深さ方向に連続採取した試料の遊離酸化鉄の結晶化指数と活性度との関係を求めた。その結果,レス堆積物の結晶化指数の範囲は,中位段丘の場合0.67~0.78(深さ方向0.7mの範囲),高位段丘の場合0.59~0.70(深さ方向0.4mの範囲)となり,いずれも深さ方向に値が大きくなることが確認された。これらは,堆積過程を考慮した相対編年が反映されており,本手法は,少なくとも生物擾乱等の影響を受けない環境下においては,高い分解能を有していることが確認された。