[SSS08-P26] スマトラ断層北端部の断層変位地形と活動履歴
スマトラ断層は,海洋性のインド−オーストラリアプレートがスンダ海溝で斜めに沈み込むために,上盤側のスンダプレート内に生じた右横ずれ断層である.スマトラ島の西部の火山弧にほぼ沿って分布し,長さ約1900kmで横ずれ変位速度は約20mm/yrに達する(Sieh and Natawidjaja, 2000).プレートの斜め沈み込みに伴う島弧中央横ずれ断層としては,フィリピン断層と並ぶ大断層である.地震活動も活発で,過去120年間にM7.0以上の大地震が10発生している.しかしながら,断層の北端部に位置するAcehセグメントとSeulimeumセグメントではそのような大地震は発生しておらず,地震の空白域とされている(Hurukawa et al., 2014).
2012年より,Aceh州においてスマトラ断層北端部の断層変位地形調査と活動履歴調査を行っている.まず北緯4°以北の地域について,ALOSのPRISMセンサーで撮影された実体視可能な衛星画像を購入・加工し,それを判読することで活断層分布図を作成した.その後,変位地形が明瞭でアクセス可能な箇所を中心に現地調査を行った.2015年には,Seulimeumセグメント上で断層の活動履歴を解明するためのトレンチ掘削調査を行った.
断層トレースの分布の概要は,Sieh and Natawidjaja(2000)とほぼ同様である.南東から延びてくるAcehセグメントの変位地形はTangse盆地以北で徐々に不明瞭になり,それに代わってその北東を並走するSeulimeumセグメントが明瞭な変位地形を伴う.断層トレースは,河谷の系統的な右屈曲・閉塞尾根・直線状谷・段丘面や火山斜面を切る低断層崖などによって特徴付けられる.現地調査では変位地形を確認するとともに,基盤岩や河川性の半固結の堆積物を切る断層露頭やプレッシャーリッジの内部構造を観察した.またスマトラ島の北西約17kmの沖合に位置するWeh Islandにおいても現地調査を行い,Seulimeumセグメントの延長部の断層変位地形や未固結の堆積物を変位させる断層露頭を確認した.
Seulimeumセグメントの活動履歴を明らかにするために,2015年6 月にLamtamotでトレンチ掘削調査を行った.深さ約2mのトレンチの壁面には,河川性の砂層や礫層とそれらを累積的に南西落ちに変位させるほぼ垂直な数条の断層が現れた.各断層の上端の位置や地層の上下変位量の違いに基づき,3回の断層活動の痕跡を認定した.壁面から得られた6試料についての放射性炭素年代測定結果に基づいて,OxCalを用いた活動履歴のモデリングを行った.その結果,西暦1280年以降で歴史記録の残っている1892年以前に3回の断層活動があったことが明らかとなった.最新活動とその前の断層活動の時期を詳細に絞り込むことができなかったので,個々のイベントの間隔を算出することはできなかったが,平均活動間隔は300年以下であることが判明した.
調査地域のスマトラ断層周辺では,2013年のTanah Gayo地震(Mw6.1)や2016年のPidie Jaya地震(Mw6.5)などの中規模地震が発生しており,それぞれ約50名と約100名の死者を出している.スマトラ断層の活動に伴う地震はさらに大規模になると予想され,さらに州都であるBanda Acehの近傍を通過するため甚大な被害が生じる恐れがある.断層の変位速度や最新活動時期に関するさらなる調査が必要である.
2012年より,Aceh州においてスマトラ断層北端部の断層変位地形調査と活動履歴調査を行っている.まず北緯4°以北の地域について,ALOSのPRISMセンサーで撮影された実体視可能な衛星画像を購入・加工し,それを判読することで活断層分布図を作成した.その後,変位地形が明瞭でアクセス可能な箇所を中心に現地調査を行った.2015年には,Seulimeumセグメント上で断層の活動履歴を解明するためのトレンチ掘削調査を行った.
断層トレースの分布の概要は,Sieh and Natawidjaja(2000)とほぼ同様である.南東から延びてくるAcehセグメントの変位地形はTangse盆地以北で徐々に不明瞭になり,それに代わってその北東を並走するSeulimeumセグメントが明瞭な変位地形を伴う.断層トレースは,河谷の系統的な右屈曲・閉塞尾根・直線状谷・段丘面や火山斜面を切る低断層崖などによって特徴付けられる.現地調査では変位地形を確認するとともに,基盤岩や河川性の半固結の堆積物を切る断層露頭やプレッシャーリッジの内部構造を観察した.またスマトラ島の北西約17kmの沖合に位置するWeh Islandにおいても現地調査を行い,Seulimeumセグメントの延長部の断層変位地形や未固結の堆積物を変位させる断層露頭を確認した.
Seulimeumセグメントの活動履歴を明らかにするために,2015年6 月にLamtamotでトレンチ掘削調査を行った.深さ約2mのトレンチの壁面には,河川性の砂層や礫層とそれらを累積的に南西落ちに変位させるほぼ垂直な数条の断層が現れた.各断層の上端の位置や地層の上下変位量の違いに基づき,3回の断層活動の痕跡を認定した.壁面から得られた6試料についての放射性炭素年代測定結果に基づいて,OxCalを用いた活動履歴のモデリングを行った.その結果,西暦1280年以降で歴史記録の残っている1892年以前に3回の断層活動があったことが明らかとなった.最新活動とその前の断層活動の時期を詳細に絞り込むことができなかったので,個々のイベントの間隔を算出することはできなかったが,平均活動間隔は300年以下であることが判明した.
調査地域のスマトラ断層周辺では,2013年のTanah Gayo地震(Mw6.1)や2016年のPidie Jaya地震(Mw6.5)などの中規模地震が発生しており,それぞれ約50名と約100名の死者を出している.スマトラ断層の活動に伴う地震はさらに大規模になると予想され,さらに州都であるBanda Acehの近傍を通過するため甚大な被害が生じる恐れがある.断層の変位速度や最新活動時期に関するさらなる調査が必要である.