日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] 活断層と古地震

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所、共同)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)

[SSS08-P27] ALOS 30 DEM画像判読によるヒマラヤ南縁の活断層マッピング

*中田 高1熊原 康博2後藤 英昭2 (1.広島大学名誉教授、2.広島大学)

キーワード:ヒマラヤ、活断層、ALOS 30

発表者らは、アジアの国々の地震災害の軽減に資するために、広域的に整備された数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)から実体視可能な3D画像(アナグリフ)を作成し、それを判読することによって広い地域の活断層の分布を統一的な基準で網羅的に明らかにし、「アジアの詳細デジタル活断層図」の作成を目指している。
広範囲の地形を把握するためにALOS 30などの1秒(30m)メッシュのDEMを利用し、活断層分布域ではWorld DEMなど、数m~10m程度の詳細データを併用することで、日本と同等の精度を有する質の高い活断層図の作成が期待される。活断層判読に用いるALOS30などの1秒(30m)メッシュのDEMは、通常の活断層地形判読に用いる空中写真に比較すると解像度は高いとは言えないが、2016年から新たに利用可能となったものであり、それまで最も解像度が高いとされてきた3秒(90m)メッシュのSRTMと比較すれば圧倒的に高い地形解像度を持つ。空中写真の利用はアジアのほとんどの国々で現地に赴いても容易でないことから、ALOS 30などの1秒(30m)メッシュのDEMの利用は極めて有効で効率的といえる。このために、インターネットを通してALOS 30およびSRTM 1などのフリーのDEMをダウンロードし、これを3D画像作成ソフトによってアナグリフ画像を作成した。
Nakata(1972)のインドヒマラヤの変動地形学的研究では、主として地形図判読と現地調査によって活断層が認定された。また、Nakata(1989)やNakata et.al.(1991)では、空中写真判読によってネパールヒマラヤおよびパキスタン全域の活断層分布図が作成されているが、インド領内のヒマラヤ南縁地域では活断層の詳細な分布が明らかではない地域が残されている。
本報告では、ALOS 30のアナグリフ画像の有効性を検討する地域として、ヒマラヤ南縁地域(ネパール南東部~インド・ベンガル州北部)を選び、航空写真やCORONA衛星画像の判読結果の比較を行い、広域的な詳細活断層図作成の可能性を検討した。まず、90mグリッドDEMであるSRTM 3から作成したアナグリフ画像は、5万分の1地形図と同等あるいはそれ以上の地形分解能を持つ。これは、SRTM 3から作成した等高線図が5万分の1地形図とほぼ同程度のものであることから判断できる。SRTM 1やALOS 30は30mグリッドDEMであることから、分解能の高いアナグリフ画像を作成することができ、SRTM 3によるアナグリフ画像や地形図と比較にならないほどの詳細な地形判読が可能である。しかしながら、これらの画像は縮尺5万分の1程度の空中写真と比較すると、分解能は圧倒的に劣る。また、分解能が10万分の1程度と推定されるCORONA衛星画像と比較しても、SRTM 1やALOS 30の分解能は明らかに低い。
その一方で、断層変位地形の判読については、空中写真によって判読されてきた活断層を容易に認定することが可能であった。また、これまで活断層の詳細な分布が明らかでなかったインド北東部のヒマラヤ南縁などで新たな活断層が発見された。DEMから作成する3D画像は、空中写真とは異なり縮尺を自由に変化させて広域的な地形を効率的に観察することが可能であることに加え、水平:垂直倍率の異なる画像や傾斜の付与の工夫などによって、低断層崖などの起伏の小さな地形も認識することが可能であり、活断層分布の検討に重要な役割を果たすことが確認された。