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[SSS13-05] 2011年東北地方太平洋沖地震前の3ヶ月間に観測された発生までの3段階の過程(3)
キーワード:2011年東北地方太平洋沖地震、F-net、GNSS
はじめに
主題地震では広帯域地震観測網F-netの連続波形画像の欠測状況が2010年12月下旬から2011年5月初旬に掛けて悪化した[1]。
そこで地震の発生過程を調べ、発生前の凡そ3ヵ月が次の3つの段階からなっていたことを示した[2]。
第1段階(2010年12月中旬~2011年1月28日頃) 長年に亘る陸側プレートの歪蓄積の最終段階であり、2011年1月28日頃に歪蓄積の限界に到達し東北地方において西進を停止した。ほぼ同時に海側プレートである太平洋プレートも西進を停止した。これに先立つ凡そ1.5ヶ月間に東北および中部地方を主とした日本列島の広い領域で通常見られない動きが発生した。
第2段階(2011年1月29日頃~3月2日頃) 西進を止めた陸側プレートは、この段階で進行方向を反転させた。そして、それまでの太平洋プレートに対する従属的な動きと変わり反発力を増大させた。これはプレート境界に於いて剪断力を増加させ、結果として震源域付近のスロースリップ等の活発な地震活動を生んだ。この時、震源域に近い陸地でも変化があった。
第3段階(2011年3月9日頃~3月11日) 3月9日の三陸沖地震M7.3に始まる一連の地震活動が発生し、3月11日のM9.0地震(本震)に繋がった。尚、[2]では、開始日を“3月8日頃”としたが、その後の調査により“3月9日頃”に変更する。
調査
本研究では2011年1月に発生した各種のイベントの発生日を調べ、以下の結果を得た。
・ 岩手県奥州市江刺で、1月4日~14日に地磁気の日周期変動で異常な挙動が観測された。
・ 箱根山の地下で1月に低周波地震が、前後10年以上の期間での月毎の比較で同様の事例の無いほど多く発生した。これらは1月1日から1月31日まで発生したが、特に1月10日をピークとして1月2日~1月20日頃に多く発生した。
・ F-netの欠測観測点が2010年12月22日から2011年1月18日にかけて増加し、1月14日には最多の4観測点となった。欠測した観測点は、本震域近くの2か所(岩手県山形(IYG)、札幌(HSS))と中部地方の2か所であった。本震域近くの欠測は1月以降も継続したが、中部地方では青ヶ島(AOG)が1月3日から18日にかけて、さらに輪島(WJM)も同様の時期に欠測となり、その後は正常に復帰した。
以上を纏めると、2011年1月4日~14日に東北地方で地磁気の日周期変動で異常な挙動が観測された。F-netの欠測が何らかの振動により発生したと推測すると、ほぼ同時期の1月3日~18日頃に大きな振動が輪島・箱根山・青ヶ島で観測された。この時、振動のピークは1月10日~14日頃であった。
議論
2011年1月に発生した地磁気の日周期変動での異常な挙動が地震発生過程に関係する可能性がありさらに調査が必要であると思われる。
2010年12月22日、父島近海でM7.4の正断層型地震が発生した。父島のGNSSで観測された太平洋プレートの動きは直後に西進が加速したが、その後急減速し1月27日には西進を停止した。今回調査した地磁気や地殻の振動は、太平洋プレートの急減速と同じ時期に発生していることから関連性が推測される。
GNSS観測値に対する大変長い周期(20日~150日)の分析では、1月5日に日本全域に亘る広い領域で南方および上方への動きがあり、さらに1月23日にも東北地方の一部を除く日本全域で西方への動きがあった。これらの動きとの関連性の研究も必要であると思われる。
参考文献
[1]末 芳樹, 2013, 2011年東北地方太平洋沖地震に先行したF-net連続波形画像の欠測増加, JpGU, SSS30, P01.
[2]末 芳樹, 2017, 2011年東北地方太平洋沖地震前の3ヶ月間に観測された発生までの3段階の過程(2), JpGU, SSS04, P08.
注: 本文中の情報は上記文献を参照ください。
主題地震では広帯域地震観測網F-netの連続波形画像の欠測状況が2010年12月下旬から2011年5月初旬に掛けて悪化した[1]。
そこで地震の発生過程を調べ、発生前の凡そ3ヵ月が次の3つの段階からなっていたことを示した[2]。
第1段階(2010年12月中旬~2011年1月28日頃) 長年に亘る陸側プレートの歪蓄積の最終段階であり、2011年1月28日頃に歪蓄積の限界に到達し東北地方において西進を停止した。ほぼ同時に海側プレートである太平洋プレートも西進を停止した。これに先立つ凡そ1.5ヶ月間に東北および中部地方を主とした日本列島の広い領域で通常見られない動きが発生した。
第2段階(2011年1月29日頃~3月2日頃) 西進を止めた陸側プレートは、この段階で進行方向を反転させた。そして、それまでの太平洋プレートに対する従属的な動きと変わり反発力を増大させた。これはプレート境界に於いて剪断力を増加させ、結果として震源域付近のスロースリップ等の活発な地震活動を生んだ。この時、震源域に近い陸地でも変化があった。
第3段階(2011年3月9日頃~3月11日) 3月9日の三陸沖地震M7.3に始まる一連の地震活動が発生し、3月11日のM9.0地震(本震)に繋がった。尚、[2]では、開始日を“3月8日頃”としたが、その後の調査により“3月9日頃”に変更する。
調査
本研究では2011年1月に発生した各種のイベントの発生日を調べ、以下の結果を得た。
・ 岩手県奥州市江刺で、1月4日~14日に地磁気の日周期変動で異常な挙動が観測された。
・ 箱根山の地下で1月に低周波地震が、前後10年以上の期間での月毎の比較で同様の事例の無いほど多く発生した。これらは1月1日から1月31日まで発生したが、特に1月10日をピークとして1月2日~1月20日頃に多く発生した。
・ F-netの欠測観測点が2010年12月22日から2011年1月18日にかけて増加し、1月14日には最多の4観測点となった。欠測した観測点は、本震域近くの2か所(岩手県山形(IYG)、札幌(HSS))と中部地方の2か所であった。本震域近くの欠測は1月以降も継続したが、中部地方では青ヶ島(AOG)が1月3日から18日にかけて、さらに輪島(WJM)も同様の時期に欠測となり、その後は正常に復帰した。
以上を纏めると、2011年1月4日~14日に東北地方で地磁気の日周期変動で異常な挙動が観測された。F-netの欠測が何らかの振動により発生したと推測すると、ほぼ同時期の1月3日~18日頃に大きな振動が輪島・箱根山・青ヶ島で観測された。この時、振動のピークは1月10日~14日頃であった。
議論
2011年1月に発生した地磁気の日周期変動での異常な挙動が地震発生過程に関係する可能性がありさらに調査が必要であると思われる。
2010年12月22日、父島近海でM7.4の正断層型地震が発生した。父島のGNSSで観測された太平洋プレートの動きは直後に西進が加速したが、その後急減速し1月27日には西進を停止した。今回調査した地磁気や地殻の振動は、太平洋プレートの急減速と同じ時期に発生していることから関連性が推測される。
GNSS観測値に対する大変長い周期(20日~150日)の分析では、1月5日に日本全域に亘る広い領域で南方および上方への動きがあり、さらに1月23日にも東北地方の一部を除く日本全域で西方への動きがあった。これらの動きとの関連性の研究も必要であると思われる。
参考文献
[1]末 芳樹, 2013, 2011年東北地方太平洋沖地震に先行したF-net連続波形画像の欠測増加, JpGU, SSS30, P01.
[2]末 芳樹, 2017, 2011年東北地方太平洋沖地震前の3ヶ月間に観測された発生までの3段階の過程(2), JpGU, SSS04, P08.
注: 本文中の情報は上記文献を参照ください。