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[SSS14-09] 2016年熊本地震の地表地震断層近傍の長周期地震動評価のための新しい特性化震源モデル
キーワード:特性化震源モデル、長周期強震動、強震動生成域、長周期地震動生成域
はじめに
被害地震の震源近傍での強震動は、震源インバージョンの研究から、全体の断層面積や地震モーメントよりもすべり分布の不均質性に関係していることが明らかになってきた (Irikura and Miyake, 2011)。強震動を評価するための特性化震源モデルは震源断層面の中に大きなすべりもつ領域(asperity)と相対的にすべりの小さい背景領域をもつと定義される(Miyake et al., 2003)。特に、内陸の活断層に発生する地殻地震からの加速度波形や速度波形はアスペリティとほぼ一致する強震動生成域(Strong Motion Generation Area: SMGA)からの地震動でほぼ再現可能であることが分かってきた。数秒以上の長周期も含めた地震動、特に変位地震動を評価するには背景領域からの地震動の評価が必要となる(Miyake et al. 2003;Irikura and Miyake, 2011)。2016年熊本地震の強震動も、地表震源断層の極近傍の観測点を除くと、従来の強震動生成域をもつ特性化震源モデルを用いて再現できることが分かっている(Irikura et al.,2017)。
2016年熊本地震では、地表地震断層の極近傍域の2つの自治体の震度観測点(地表地震断層から約1kmの西原村役場や2 km以内に位置する益城町役場)で強震動記録が得られた。これらの観測点の記録は永久変位をもつ顕著な長周期地震動である。西原村役場では、加速度記録の積分により、最大速度約260 cm/s、最大変位は東に約2 m、下に約2 mの沈下が得られ、益城町役場でも、最大変位として、東に約120 cm、 北に50 cm、下に 70 cmが得られた(岩田,2016)。これらの地表地震断層極近傍の顕著な長周期地震動は、従来の特性化震源モデルでは再現できない。
本研究では、断層極近傍の顕著な長周期地震動も含めて、広帯域の強震動が再現可能な新しい特性化震源モデルを提案する。
SMGAとLMGAをもつ特性化震源モデル
SMGAモデルについて、Irikura et al. (2017)は、吉田・他(2017)のインバージョン結果に基づいて3つのSMGAからなるモデルと久保・他(2016)に基づいて1つSMGAからなるモデルを構築し、SMGAの面積の総和とそこでの応力パラメータが等しいとき、震源断層の極近傍域を除いて、ほぼ同様の短周期地震動(周期3秒以下)が生成されることを示した。本研究は、震源断層の極近傍域も含む領域を対象として、地震動のシミュレーションを行うことを目的としている。
はじめに、Kubo et al.(2016)による3セグメントを設定したインバージョンによるすべり分布モデルを参考にSMGAモデルを再構築を試みた。日奈久断層沿いに1つのSMGA、布田川断層沿いに1つのSMGAを設定すると、地表断層から2km以内の観測点を除いて、加速度と速度について、合成波形と観測波形がよく一致するモデルが得られた。ここでSMGAは深さ3kmより深い強震動生成域に設定されている。
地表地震断層の極近傍域の観測点(西原村役場、益子町役場)における速度や変位の記録を再現するには、SMGAからの地震動からだけでは十分ではなく、地表面近くに長周期地震動生成域(LMGA)を設定する必要があることが分かった。ここで、LMGAからの地震動のシミュレーションには、Hisada and Bielak (2003)により開発された断層ずれによる平行層構造中の極近傍地震動の計算が可能な波数積分法を用いている。地表面と地震発生層の上端の間に長周期地震動生成域(LMGA)を設定すると、LMGA断層極近傍の3観測点[93048(西原村小森)、93051(益城町宮園)、KMMH16(KiK-net益城]の長周期地震動(速度および変位)が良く再現できる。
LMGAの震源パラメータを検証するためには、LMGAの面積(長さと幅)と位置、そこでの最大すべり量を変えて、地表面の空間的変位分布を計算し、ALOS-2/PALSAR-2 data によるすべり分布 (Himematsu and Furuya, 2016) との比較を試みた。
被害地震の震源近傍での強震動は、震源インバージョンの研究から、全体の断層面積や地震モーメントよりもすべり分布の不均質性に関係していることが明らかになってきた (Irikura and Miyake, 2011)。強震動を評価するための特性化震源モデルは震源断層面の中に大きなすべりもつ領域(asperity)と相対的にすべりの小さい背景領域をもつと定義される(Miyake et al., 2003)。特に、内陸の活断層に発生する地殻地震からの加速度波形や速度波形はアスペリティとほぼ一致する強震動生成域(Strong Motion Generation Area: SMGA)からの地震動でほぼ再現可能であることが分かってきた。数秒以上の長周期も含めた地震動、特に変位地震動を評価するには背景領域からの地震動の評価が必要となる(Miyake et al. 2003;Irikura and Miyake, 2011)。2016年熊本地震の強震動も、地表震源断層の極近傍の観測点を除くと、従来の強震動生成域をもつ特性化震源モデルを用いて再現できることが分かっている(Irikura et al.,2017)。
2016年熊本地震では、地表地震断層の極近傍域の2つの自治体の震度観測点(地表地震断層から約1kmの西原村役場や2 km以内に位置する益城町役場)で強震動記録が得られた。これらの観測点の記録は永久変位をもつ顕著な長周期地震動である。西原村役場では、加速度記録の積分により、最大速度約260 cm/s、最大変位は東に約2 m、下に約2 mの沈下が得られ、益城町役場でも、最大変位として、東に約120 cm、 北に50 cm、下に 70 cmが得られた(岩田,2016)。これらの地表地震断層極近傍の顕著な長周期地震動は、従来の特性化震源モデルでは再現できない。
本研究では、断層極近傍の顕著な長周期地震動も含めて、広帯域の強震動が再現可能な新しい特性化震源モデルを提案する。
SMGAとLMGAをもつ特性化震源モデル
SMGAモデルについて、Irikura et al. (2017)は、吉田・他(2017)のインバージョン結果に基づいて3つのSMGAからなるモデルと久保・他(2016)に基づいて1つSMGAからなるモデルを構築し、SMGAの面積の総和とそこでの応力パラメータが等しいとき、震源断層の極近傍域を除いて、ほぼ同様の短周期地震動(周期3秒以下)が生成されることを示した。本研究は、震源断層の極近傍域も含む領域を対象として、地震動のシミュレーションを行うことを目的としている。
はじめに、Kubo et al.(2016)による3セグメントを設定したインバージョンによるすべり分布モデルを参考にSMGAモデルを再構築を試みた。日奈久断層沿いに1つのSMGA、布田川断層沿いに1つのSMGAを設定すると、地表断層から2km以内の観測点を除いて、加速度と速度について、合成波形と観測波形がよく一致するモデルが得られた。ここでSMGAは深さ3kmより深い強震動生成域に設定されている。
地表地震断層の極近傍域の観測点(西原村役場、益子町役場)における速度や変位の記録を再現するには、SMGAからの地震動からだけでは十分ではなく、地表面近くに長周期地震動生成域(LMGA)を設定する必要があることが分かった。ここで、LMGAからの地震動のシミュレーションには、Hisada and Bielak (2003)により開発された断層ずれによる平行層構造中の極近傍地震動の計算が可能な波数積分法を用いている。地表面と地震発生層の上端の間に長周期地震動生成域(LMGA)を設定すると、LMGA断層極近傍の3観測点[93048(西原村小森)、93051(益城町宮園)、KMMH16(KiK-net益城]の長周期地震動(速度および変位)が良く再現できる。
LMGAの震源パラメータを検証するためには、LMGAの面積(長さと幅)と位置、そこでの最大すべり量を変えて、地表面の空間的変位分布を計算し、ALOS-2/PALSAR-2 data によるすべり分布 (Himematsu and Furuya, 2016) との比較を試みた。