14:45 〜 15:00
[SSS14-16] 浅部・深部統合地盤モデルを用いたシナリオ地震動予測地図
キーワード:浅部・深部統合地盤モデル、詳細法、シナリオ地震動予測値図
関東地域を対象として構築された浅部・深部統合地盤モデルを、全国地震動予測地図の詳細法による「震源断層を特定した地震動予測地図(シナリオ地震動予測地図)」の作成にどのように活用するかについて検討した。この地盤モデルは、広帯域地震動(0.1~10秒)の予測精度を向上するために、大量のボーリングデータおよび物性値データ(主に微動観測データ)を収集し、Vs=350m/s層を工学的基盤として、浅部地盤と深部地盤とを接合した上でチューニングがなされている。現状のシナリオ地震動予測地図では、詳細法工学的基盤(Vs=600m/s層)上の時刻歴をハイブリッド合成法により求め、微地形区分によるAVS30を用いた増幅計算に基づき地表の計測震度を求めているが、浅部・深部統合地盤モデルを用いる場合に詳細法工学的基盤の設定や、浅部地盤による増幅評価をどうするか、具体的には、関東地域においてVs=350m/s層上面を詳細法工学的基盤と設定した場合、地表において、どの地震動指標値を、どのように計算するかについての検討が必要である。
そこで、浅部・深部統合地盤モデルを活用した詳細法計算の方法について、詳細法工学的基盤を(1)Vs=350m/s層上面とした場合、(2)Vs=600m/s層上面とした場合の2通り、浅部地盤による増幅計算を(a)微地形区分によるAVS30に基づく増幅率を用いた場合、(b)1次元応答解析により評価した場合(統計的グリーン関数法で浅部モデルを考慮)、(c)地盤モデルによるAVS30に基づく増幅率を用いた場合の3通り設定し、これらを組み合わせた複数の手法により、関東地域の3つの断層帯を対象として算出した地表の最大速度、計測震度などについて比較した。なお、従来手法は(2)と(a)の組合せに対応しており、浅部・深部統合地盤モデルを最大限に活用できると考えられる方法(提案手法)は(1)と(b)の組合せである。
(1)と(a)の組合せでは、計算領域全域でAVS30=350m/sの層が存在していないため、増幅率が過小評価となっていることが示唆された。また、浅部地盤の増幅を(a)または(c)により評価した場合には、低地から山地にかけて地震動指標値が急激に変化する傾向が見られ、山地部の工学的基盤のAVS30の過小評価が原因と考えられた。工学的基盤の設定を(1)とした場合、(c)の手法は(a)の手法にくらべ震度増分の大きい領域が局在化し、(b)の手法では、(a)、(c)に比べて震度増分の地域的な変化が小さいことが分かった。提案手法は、従来手法にくらべ地表の最大速度、計測震度が同等か小さめの計算結果となっており、地点ごとの地盤モデルの違いを考慮した増幅評価を行った結果、従来手法よりもより平均値に近い評価となったと考えられる。一方で、250mメッシュの詳細な地盤モデルを用いたとはいえ、メッシュ内での不均質性は依然として残っていることなどを考えれば、提案手法による評価を平均像とし、これにばらつきを考慮した結果(例えば、+1σとした結果)とセットで結果を提示することが予測地図として必要だと考えられる。
謝辞:浅部・深部統合地盤モデルは、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)の(5)「リアルタイム被害推定・災害情報収集・分析・利活用システム開発」の成果を活用したものです。
そこで、浅部・深部統合地盤モデルを活用した詳細法計算の方法について、詳細法工学的基盤を(1)Vs=350m/s層上面とした場合、(2)Vs=600m/s層上面とした場合の2通り、浅部地盤による増幅計算を(a)微地形区分によるAVS30に基づく増幅率を用いた場合、(b)1次元応答解析により評価した場合(統計的グリーン関数法で浅部モデルを考慮)、(c)地盤モデルによるAVS30に基づく増幅率を用いた場合の3通り設定し、これらを組み合わせた複数の手法により、関東地域の3つの断層帯を対象として算出した地表の最大速度、計測震度などについて比較した。なお、従来手法は(2)と(a)の組合せに対応しており、浅部・深部統合地盤モデルを最大限に活用できると考えられる方法(提案手法)は(1)と(b)の組合せである。
(1)と(a)の組合せでは、計算領域全域でAVS30=350m/sの層が存在していないため、増幅率が過小評価となっていることが示唆された。また、浅部地盤の増幅を(a)または(c)により評価した場合には、低地から山地にかけて地震動指標値が急激に変化する傾向が見られ、山地部の工学的基盤のAVS30の過小評価が原因と考えられた。工学的基盤の設定を(1)とした場合、(c)の手法は(a)の手法にくらべ震度増分の大きい領域が局在化し、(b)の手法では、(a)、(c)に比べて震度増分の地域的な変化が小さいことが分かった。提案手法は、従来手法にくらべ地表の最大速度、計測震度が同等か小さめの計算結果となっており、地点ごとの地盤モデルの違いを考慮した増幅評価を行った結果、従来手法よりもより平均値に近い評価となったと考えられる。一方で、250mメッシュの詳細な地盤モデルを用いたとはいえ、メッシュ内での不均質性は依然として残っていることなどを考えれば、提案手法による評価を平均像とし、これにばらつきを考慮した結果(例えば、+1σとした結果)とセットで結果を提示することが予測地図として必要だと考えられる。
謝辞:浅部・深部統合地盤モデルは、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)の(5)「リアルタイム被害推定・災害情報収集・分析・利活用システム開発」の成果を活用したものです。