12:00 〜 12:15
[STT49-06] 時間領域空中電磁探査における探査領域に関する研究
キーワード:空中電磁探査、時間領域、探査深度、探査領域、smoke ring
送受信機を地上に展開し逐次的にデータ取得・観測点移動を行う従来手法に比較し,送信ループ・受信コイルを固定翼機やヘリコプターに搭載した空中電磁探査法は遥かに短時間で広大な調査領域をカバーすることが可能な探査手法である (Siemon et al., 2009).主に欧米を中心に,技術開発および事例研究が盛んであるが,日本においても周波数領域の空中電磁探査が精力的に実施されてきた.
時間領域空中電磁(Airborne TEM)探査は,周波数領域での探査に比べより大きな探査深度を有しているのが特徴であり,近年,日本においても地熱ポテンシャル評価の手法の1つとして導入が試みられている(HELITEM: JOGMEC, 2013; 2014).一方で,時間領域空中電磁探査の持つ探査深度[Depth of Investigation (DOI)]・水平領域(Footprint)は,時間経過とともに下方へ潜る電磁場伝搬(smoke ring)の特性のため,周波数領域での探査に比べあまり良く把握されていない.本研究では,時間領域空中電磁探査において探査深度・水平領域を評価するための方法を考察する.
最初のステップとして,既存の比抵抗構造に対し,外縁部に低比抵抗あるいは高比抵抗の構造ギャップを与え,ある時間における応答(dBz/dt)の変動を検討するシンプルな方法を考える.変動がある規定以上に達する時の構造ギャップの開始位置(深さあるいは水平距離)を,その時間における探査深度・水平領域と呼ぶことにする.上記を踏まえ,まず,低比抵抗・高比抵抗の構造ギャップを配置した場合,電場の地下への伝搬がどう変化するか検討を行い,その結果,以下に述べる知見を得た.
構造ギャップを置かない(半無限媒質)場合,ループコイルにより誘導されたリング状電場は,送信源から一定の角度で地表面に斜行して遠ざかるように放射状に拡散する.大気層では拡散が早いため,電場の減衰が強い.
低比抵抗の構造ギャップを水平方向(水平2層モデル)に配置した場合,リング状電場の分布は,最大強度を持つリング中心部に対し1/eの強度領域がギャップ境界に接近した辺りから,拡散形状に変化が生じる.その後,低比抵抗領域に引き込まれ,そこから新たにリング状電場の拡散・伝搬が開始する.この傾向は,本構造ギャップを鉛直方向(鉛直同軸モデル)に配置した場合も同様である.
一方,高比抵抗の構造ギャップを水平方向に配置した場合,リング状電場の分布は, 前述の場合と同様に,強度がリング中心の1/eになる領域がギャップ境界に接近した辺りから,拡散形状に変化が生じる.しかしながらその後,リング状電場は,高比抵抗領域にも電場を拡散させつつ,ギャップ境界に沿い外側に向かって伝搬する.高比抵抗の構造ギャップを鉛直方向に配置した場合,リング状電場の分布は強度がリング中心の1/eになる領域がギャップ境界に接近したぐらいからやはり形状に変化が生じる.その後,リング状電場の分布は,しばらく構造ギャップに沿って下向きに移動しているが,途中で高比抵抗域にほぼ水平にジャンプし,そこから新たにリング状電場の拡散・伝搬が開始する.
上記のように,低比抵抗の構造ギャップは水平方向・鉛直方向の配置いずれの場合もリング状電場の分布の伝搬パターンは同じであるが、高比抵抗の構造ギャップでは配置方向により異なる伝搬パターンが生じていることが分かった.本発表では,こうした伝搬パターンの違いを踏まえ,時間領域空中電磁探査における探査深度・領域を本手法によって定義する際の適切な構造ギャップの置き方(高比抵抗か低比抵抗か,コントラストはどの程度か)や,ループの高度・大きさが探査深度・水平領域に与える影響等を検討する.
時間領域空中電磁(Airborne TEM)探査は,周波数領域での探査に比べより大きな探査深度を有しているのが特徴であり,近年,日本においても地熱ポテンシャル評価の手法の1つとして導入が試みられている(HELITEM: JOGMEC, 2013; 2014).一方で,時間領域空中電磁探査の持つ探査深度[Depth of Investigation (DOI)]・水平領域(Footprint)は,時間経過とともに下方へ潜る電磁場伝搬(smoke ring)の特性のため,周波数領域での探査に比べあまり良く把握されていない.本研究では,時間領域空中電磁探査において探査深度・水平領域を評価するための方法を考察する.
最初のステップとして,既存の比抵抗構造に対し,外縁部に低比抵抗あるいは高比抵抗の構造ギャップを与え,ある時間における応答(dBz/dt)の変動を検討するシンプルな方法を考える.変動がある規定以上に達する時の構造ギャップの開始位置(深さあるいは水平距離)を,その時間における探査深度・水平領域と呼ぶことにする.上記を踏まえ,まず,低比抵抗・高比抵抗の構造ギャップを配置した場合,電場の地下への伝搬がどう変化するか検討を行い,その結果,以下に述べる知見を得た.
構造ギャップを置かない(半無限媒質)場合,ループコイルにより誘導されたリング状電場は,送信源から一定の角度で地表面に斜行して遠ざかるように放射状に拡散する.大気層では拡散が早いため,電場の減衰が強い.
低比抵抗の構造ギャップを水平方向(水平2層モデル)に配置した場合,リング状電場の分布は,最大強度を持つリング中心部に対し1/eの強度領域がギャップ境界に接近した辺りから,拡散形状に変化が生じる.その後,低比抵抗領域に引き込まれ,そこから新たにリング状電場の拡散・伝搬が開始する.この傾向は,本構造ギャップを鉛直方向(鉛直同軸モデル)に配置した場合も同様である.
一方,高比抵抗の構造ギャップを水平方向に配置した場合,リング状電場の分布は, 前述の場合と同様に,強度がリング中心の1/eになる領域がギャップ境界に接近した辺りから,拡散形状に変化が生じる.しかしながらその後,リング状電場は,高比抵抗領域にも電場を拡散させつつ,ギャップ境界に沿い外側に向かって伝搬する.高比抵抗の構造ギャップを鉛直方向に配置した場合,リング状電場の分布は強度がリング中心の1/eになる領域がギャップ境界に接近したぐらいからやはり形状に変化が生じる.その後,リング状電場の分布は,しばらく構造ギャップに沿って下向きに移動しているが,途中で高比抵抗域にほぼ水平にジャンプし,そこから新たにリング状電場の拡散・伝搬が開始する.
上記のように,低比抵抗の構造ギャップは水平方向・鉛直方向の配置いずれの場合もリング状電場の分布の伝搬パターンは同じであるが、高比抵抗の構造ギャップでは配置方向により異なる伝搬パターンが生じていることが分かった.本発表では,こうした伝搬パターンの違いを踏まえ,時間領域空中電磁探査における探査深度・領域を本手法によって定義する際の適切な構造ギャップの置き方(高比抵抗か低比抵抗か,コントラストはどの程度か)や,ループの高度・大きさが探査深度・水平領域に与える影響等を検討する.