[SVC41-P18] 焼岳火山南部中ノ湯登山道に分布する火山性堆積物
キーワード:火山灰、マグマ水蒸気爆発、焼岳
北アルプス南部に位置する焼岳は約2400年前のマグマ噴火以降,水蒸気噴火を繰り返してきた活動的な活火山である。過去3000年間の活動については,焼岳北東の上高地登山道沿いで1枚のガラス質火山灰層(Ykd-TNkb)を含む11枚の火山灰層の存在が確認されている(及川ほか,2002)。しかし,焼岳南部での火山灰層に関する報告は少ない。そこで本研究では,焼岳南麓に南北に伸びる中ノ湯登山道沿いで火山噴出物の調査を行い,各層の対比を行うとともに,噴火様式や噴火年代について検討した。
中ノ湯登山道沿いでは10層の火山灰層(下位からYKD-1∼YKD-10と命名)と1層の火砕流の産状を示す堆積物(YKD-f1)が確認できた。登山道の南部に分布するYKD-1とYKD-2の0.250-0.045mmでは,火山ガラスがそれぞれ約30%と約20%含まれており,マグマの噴出を伴う噴火に由来すると考えられる。また,2層の間の泥炭層の放射性炭素年代測定を行ったところ,2459calBP∼2339calBPという値が得られた。Ykd-TNkbの年代は約2400年前と推定されており(及川ほか,2002),YKD-2と対比できると考える。一方,YKD-1に相当する火山灰については報告されておらず,約2400年前にある程度の時間間隙を挟んで2度のマグマの噴出を伴う噴火が発生した可能性がある。XRD分析の結果,正賀池火口西縁に分布するYKD-10は,今回の試料の中で唯一スメクタイトを含むことが分かった。また熱磁気分析の結果,パイライトの磁気的シグナルが唯一確認された。小坂(2003)によると,最近の噴出物の中では,1962∼1963年の噴出物にのみスメクタイトとパイライトが含まれる。このことからYKD-10は1962∼1963年の噴出物であると考えられる。
登山道中腹で確認された火砕流の産状を示したYKD-f1の直下の泥炭層からは,74calBP∼32calBPの放射性炭素年代値が得られた。1900年代前半には水蒸気噴火が繰り返し起こり,1915年の噴火では泥流が流下し梓川をせき止めて大正池が形成されている。YKD-f1はそのような時期の火山堆積物の可能性がある。
中ノ湯登山道沿いでは10層の火山灰層(下位からYKD-1∼YKD-10と命名)と1層の火砕流の産状を示す堆積物(YKD-f1)が確認できた。登山道の南部に分布するYKD-1とYKD-2の0.250-0.045mmでは,火山ガラスがそれぞれ約30%と約20%含まれており,マグマの噴出を伴う噴火に由来すると考えられる。また,2層の間の泥炭層の放射性炭素年代測定を行ったところ,2459calBP∼2339calBPという値が得られた。Ykd-TNkbの年代は約2400年前と推定されており(及川ほか,2002),YKD-2と対比できると考える。一方,YKD-1に相当する火山灰については報告されておらず,約2400年前にある程度の時間間隙を挟んで2度のマグマの噴出を伴う噴火が発生した可能性がある。XRD分析の結果,正賀池火口西縁に分布するYKD-10は,今回の試料の中で唯一スメクタイトを含むことが分かった。また熱磁気分析の結果,パイライトの磁気的シグナルが唯一確認された。小坂(2003)によると,最近の噴出物の中では,1962∼1963年の噴出物にのみスメクタイトとパイライトが含まれる。このことからYKD-10は1962∼1963年の噴出物であると考えられる。
登山道中腹で確認された火砕流の産状を示したYKD-f1の直下の泥炭層からは,74calBP∼32calBPの放射性炭素年代値が得られた。1900年代前半には水蒸気噴火が繰り返し起こり,1915年の噴火では泥流が流下し梓川をせき止めて大正池が形成されている。YKD-f1はそのような時期の火山堆積物の可能性がある。