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[SVC43-15] 地質記録に残りにくい高頻度小規模噴火の湖底イベント流堆積物を用いた履歴復元:安達太良火山・磐梯火山と猪苗代湖の例
キーワード:小規模噴火、ラハール・火山泥流、水蒸気噴火、マグマ熱水噴火、磐梯火山、安達太良火山
2014年御嶽火山,2018年草津白根(本白根)火山で発生したような小規模噴火による噴出物は,分布が山頂を含めた給源近傍に限られ風化・侵食を受けやすいこと,また噴出量が少ないことから,地層中の保存は極めて悪い.このような小規模噴火の発生は,現在起きているあるいは史実として残されていたら認識できるが,有史以前の古い時代に遡れば,テフラ層序学的手法で検出されている小規模噴火はごく一部と言える.そのため,個別の火山における小規模噴火の発生頻度はより高く,噴火間隔も短く,発生プロセスも変化に富むと考えられる.一方,小規模噴火であっても,噴火時および噴火直後の水流作用を介した集合的火山物質の輸送は,とくにラハール(火山泥流)という形で発生し,より下流域の陸水成層・湖成層に挟まる.このラハール堆積物の層序・編年を用いることで,これまで見落とされてきたあるいは解読できなかった,小規模でも高頻度の噴火の履歴を復元できる可能性は非常に高い(片岡ほか,2015).本研究では,猪苗代湖底堆積物に挟まるイベント流堆積物(event flow deposits)が,陸上の噴火に関わる密度流とラハールに由来することを議論する.高時間分解能な湖底堆積物を用いることで,湖に流入したイベント流(=噴火イベント)の編年を行い,その発生頻度および火山の活動度を評価する.
対象とする安達太良火山および磐梯火山は双方が近接して位置し,安達太良火山では1900年の水蒸気噴火,磐梯火山では1888年水蒸気噴火と岩屑なだれにおいて多数の犠牲を出したことで知られる.両火山の下流には,猪苗代湖が位置する.湖心部(水深90m)で掘削されたINW2012コア(29m長)は過去5万年間に堆積した,イベント流堆積物(以下,イベント層)を多数挟む.これらイベント層は主として堆積相に基づき区分でき,記載岩石学,粒度組成,鉱物組成(XRD),化学組成(micro-XRF)においてそれぞれ特徴を示す.また バックグランド堆積を示す湖底堆積物とは明らかに異なる.そのうち,1)青灰色泥質層(Gm),2)青灰色砂質層(Gs),3)褐色泥質層(Bm),4)褐色砂質層(Bs)については,安達太良火山・磐梯火山における過去の噴火と深く関わる. Gm・Gsは粘土分に富む,層厚数mmから数cmの密度流堆積物で,黄鉄鉱や硫酸塩鉱物,粘土鉱物を含み,高い硫黄含有量で特徴付けられる.これらは,安達太良火山の酸川で見られる噴火時あるいは地質学的にほぼ同時期に発生した粘着性泥質ラハール堆積物の遠方相に相当し,水蒸気噴火堆積物や火口周辺の熱水変質帯の岩石に由来する.Bm・Bsは1~6cmの層厚で,基底部は明瞭な侵食面を呈し,正級化する密度流堆積物である.摩耗のほとんど無い新鮮な火山ガラス片と有機物片が普遍的に含まれ,一部は沸石などの低度の変質鉱物を含む.新鮮な火山ガラス片およびその化学組成からは,これらが古いテフラ層の再堆積ではなく,磐梯火山の新たな噴火起源を示す.このことは,湖底密度流の発生には,若干のマグマの関与がある水蒸気噴火とそれに関わる小規模な山体崩壊が直接関与した可能性が高い.コアの年代モデルからは,過去5万年間のイベント層に関わる噴火やラハール発生時期が高い時間分解能で特定でき,とくに高湖水準期である5万年前から2万7000年前の時期に,良く記録されている.両火山は,陸上の地質記録で理解されてきた噴火史よりも,はるかに活動的であったと言え,小規模噴火を含めてより高頻度な噴火・ラハール履歴を有する.
対象とする安達太良火山および磐梯火山は双方が近接して位置し,安達太良火山では1900年の水蒸気噴火,磐梯火山では1888年水蒸気噴火と岩屑なだれにおいて多数の犠牲を出したことで知られる.両火山の下流には,猪苗代湖が位置する.湖心部(水深90m)で掘削されたINW2012コア(29m長)は過去5万年間に堆積した,イベント流堆積物(以下,イベント層)を多数挟む.これらイベント層は主として堆積相に基づき区分でき,記載岩石学,粒度組成,鉱物組成(XRD),化学組成(micro-XRF)においてそれぞれ特徴を示す.また バックグランド堆積を示す湖底堆積物とは明らかに異なる.そのうち,1)青灰色泥質層(Gm),2)青灰色砂質層(Gs),3)褐色泥質層(Bm),4)褐色砂質層(Bs)については,安達太良火山・磐梯火山における過去の噴火と深く関わる. Gm・Gsは粘土分に富む,層厚数mmから数cmの密度流堆積物で,黄鉄鉱や硫酸塩鉱物,粘土鉱物を含み,高い硫黄含有量で特徴付けられる.これらは,安達太良火山の酸川で見られる噴火時あるいは地質学的にほぼ同時期に発生した粘着性泥質ラハール堆積物の遠方相に相当し,水蒸気噴火堆積物や火口周辺の熱水変質帯の岩石に由来する.Bm・Bsは1~6cmの層厚で,基底部は明瞭な侵食面を呈し,正級化する密度流堆積物である.摩耗のほとんど無い新鮮な火山ガラス片と有機物片が普遍的に含まれ,一部は沸石などの低度の変質鉱物を含む.新鮮な火山ガラス片およびその化学組成からは,これらが古いテフラ層の再堆積ではなく,磐梯火山の新たな噴火起源を示す.このことは,湖底密度流の発生には,若干のマグマの関与がある水蒸気噴火とそれに関わる小規模な山体崩壊が直接関与した可能性が高い.コアの年代モデルからは,過去5万年間のイベント層に関わる噴火やラハール発生時期が高い時間分解能で特定でき,とくに高湖水準期である5万年前から2万7000年前の時期に,良く記録されている.両火山は,陸上の地質記録で理解されてきた噴火史よりも,はるかに活動的であったと言え,小規模噴火を含めてより高頻度な噴火・ラハール履歴を有する.