[U08-P10] 飛行艇を用いた臨床地球惑星科学の創成
キーワード:飛行艇、大型研究計画、海洋学
「飛行艇を用いた臨床地球惑星科学の創成」が、日本学術会議マスタープラン2017の大型研究計画案の一つとして採択され、また重点大型研究計画案のヒアリング対象にも選定された(重点大型研究計画案には不採用)。この計画は、船舶と航空機の利点を兼ね備えた日本製の大型飛行艇を、海洋や大気等の新しい観測研究推進の共同利用ツールとして導入することを目指すもので、これにより、従来は実現不可能だった観測を実現し、世界初の新しい「臨床地球惑星科学」、すなわち現場観測と実証を基本とした新しい地球惑星科学を日本発で創始することを目指している。本発表ではその計画の概要と、本構想実現の場合の利点、さらに構想実現への課題を概観する。
ここで言う大型飛行艇とは、時速400-500 km/h前後で空中を飛行する航空機の性能と、海洋上の任意の場所に離着水して、海面上で各種観測作業を実現する船舶の性能を併せ持った最新鋭の飛行艇のことで、具体的には、新明和工業製のUS-2(全長33.3 m)を想定している。US-2の場合、その離着水距離は300 m前後で済むため、海洋はもちろん、湖沼観測や極域の観測にも使用出来るポテンシャルがある。また船舶でも観測を断念する波高3 mの海況で離着水出来る。もし現状で東シナ海の海底から大量のガス噴出が突発的に発生しても、国内の観測船を利用して現場観測を実現する場合、最短でも一ヶ月かかる。しかし本計画が実現し、飛行艇が観測に利用出来る体制が構築出来れば、発見の数時間後には現場海域に着水してガス試料採取や各種観測を出来る。すなわち、噴出の原因や影響を解明する上で質的に全く異なる初動対応観測を実現出来るようになる。これは「海底からのガス噴出」を、「宇宙からの隕石の落下」や「大型タンカーの座礁」や「海底火山の噴火」に置き換えても同様のことが言える。
想定される新しい観測の具体例としては、上記のような、(1)突発イベント(地震や火山噴火、隕石落下、タンカー座礁、油田事故、原発事故等)に即応した初動観測の他にも、(2)海洋定点における繰り返し観測、(3)陸上の大型・特殊分析機器を用いた海水中の不安定物質(プランクトンや微生物等を含む)の定量、(4)島嶼部(噴火中の火山島を含む)や流氷の上陸観測、(5)台風・竜巻観測、(6)大型海洋生物や特定水塊、漂流ゴミなどの追跡観測、(7)長期観測装置(Argoや地震計など)の広域同時設置・回収、(8)無重力実験ロケットの回収、(9)人工衛星を用いた海洋観測の補完等が提案されている。これらは、船舶や航空機では実現が困難であるか、実質的に実現不可能だった観測ばかりで、飛行艇の導入によって世界初の観測が実現することが出来る。もちろん航空機として利用することも可能で、しかも低速・低空飛行可能な飛行艇の方が、高速・高高度飛行を余儀なくされる一般のジェット機より、対流圏や接地境界層の観測には好都合である。
さらに飛行艇は、現状では船舶を用いて約一ヶ月かかる海洋観測(洋上大気観測を含む)を、半日で終了させることが出来る。大学教員を中心に長期出張は年々困難になって来ており、観測に所要する時間が大幅に削減出来るのは魅力的である。実験室レベルで高い分析・解析技術を保有する優れた非海洋分野の研究者の海洋分野への参入を容易にすることになるので、国内の地球惑星科学コミュニティ全体にその利益を還元出来る。
飛行艇を利用した地球惑星科学研究は世界に前例が無く、従って日本の大型研究計画にありがちな「欧米ではあたりまえ」が導入の口実としては使えない。しかし日本の飛行艇建造技術は世界一の水準にあり、飛行艇を研究に導入出来るポテンシャルが最も高いのは日本である。また四方を海に囲まれた日本では、迅速な移動による海洋観測実現への需要が、増えることはあっても減ることは無い。世界に前例が無いことは飛行艇導入の促進要因となっても、障害となるべきでは無いと考え、提案者らは、この計画を手弁当で推進している。他の計画と違って現状では大規模研究機関のバックアップは皆無であり、これが計画実現の最大の課題となっているが、地球惑星科学研究コミュニティ内に地道に賛同者を増やすことで実現への道筋をつけたいと考えている。
ここで言う大型飛行艇とは、時速400-500 km/h前後で空中を飛行する航空機の性能と、海洋上の任意の場所に離着水して、海面上で各種観測作業を実現する船舶の性能を併せ持った最新鋭の飛行艇のことで、具体的には、新明和工業製のUS-2(全長33.3 m)を想定している。US-2の場合、その離着水距離は300 m前後で済むため、海洋はもちろん、湖沼観測や極域の観測にも使用出来るポテンシャルがある。また船舶でも観測を断念する波高3 mの海況で離着水出来る。もし現状で東シナ海の海底から大量のガス噴出が突発的に発生しても、国内の観測船を利用して現場観測を実現する場合、最短でも一ヶ月かかる。しかし本計画が実現し、飛行艇が観測に利用出来る体制が構築出来れば、発見の数時間後には現場海域に着水してガス試料採取や各種観測を出来る。すなわち、噴出の原因や影響を解明する上で質的に全く異なる初動対応観測を実現出来るようになる。これは「海底からのガス噴出」を、「宇宙からの隕石の落下」や「大型タンカーの座礁」や「海底火山の噴火」に置き換えても同様のことが言える。
想定される新しい観測の具体例としては、上記のような、(1)突発イベント(地震や火山噴火、隕石落下、タンカー座礁、油田事故、原発事故等)に即応した初動観測の他にも、(2)海洋定点における繰り返し観測、(3)陸上の大型・特殊分析機器を用いた海水中の不安定物質(プランクトンや微生物等を含む)の定量、(4)島嶼部(噴火中の火山島を含む)や流氷の上陸観測、(5)台風・竜巻観測、(6)大型海洋生物や特定水塊、漂流ゴミなどの追跡観測、(7)長期観測装置(Argoや地震計など)の広域同時設置・回収、(8)無重力実験ロケットの回収、(9)人工衛星を用いた海洋観測の補完等が提案されている。これらは、船舶や航空機では実現が困難であるか、実質的に実現不可能だった観測ばかりで、飛行艇の導入によって世界初の観測が実現することが出来る。もちろん航空機として利用することも可能で、しかも低速・低空飛行可能な飛行艇の方が、高速・高高度飛行を余儀なくされる一般のジェット機より、対流圏や接地境界層の観測には好都合である。
さらに飛行艇は、現状では船舶を用いて約一ヶ月かかる海洋観測(洋上大気観測を含む)を、半日で終了させることが出来る。大学教員を中心に長期出張は年々困難になって来ており、観測に所要する時間が大幅に削減出来るのは魅力的である。実験室レベルで高い分析・解析技術を保有する優れた非海洋分野の研究者の海洋分野への参入を容易にすることになるので、国内の地球惑星科学コミュニティ全体にその利益を還元出来る。
飛行艇を利用した地球惑星科学研究は世界に前例が無く、従って日本の大型研究計画にありがちな「欧米ではあたりまえ」が導入の口実としては使えない。しかし日本の飛行艇建造技術は世界一の水準にあり、飛行艇を研究に導入出来るポテンシャルが最も高いのは日本である。また四方を海に囲まれた日本では、迅速な移動による海洋観測実現への需要が、増えることはあっても減ることは無い。世界に前例が無いことは飛行艇導入の促進要因となっても、障害となるべきでは無いと考え、提案者らは、この計画を手弁当で推進している。他の計画と違って現状では大規模研究機関のバックアップは皆無であり、これが計画実現の最大の課題となっているが、地球惑星科学研究コミュニティ内に地道に賛同者を増やすことで実現への道筋をつけたいと考えている。