[AAS04-P29] GOSAT/TANSO−FTSの熱赤外バンドの観測から得られた科学的成果
キーワード:二酸化炭素、メタン、オゾン、GOSAT/TANSO-FTS
GOSAT(Greenhouse Gases Observing Satellite)は、2009年1月23日に打ち上げられて以来、10年以上にわたって温室効果ガスの観測を行っている。GOSAT搭載のTANSO–FTS(Thermal and Near Infrared Sensor for Carbon Observation–Fourier Transform Spectrometer)の熱赤外バンド(TIRバンド)は、二酸化炭素、メタン、その他の温室効果ガス濃度の高度分布を観測している。TANSO–FTSのTIRバンドのVersion 1(V1)Level 2リトリーバルアルゴリズムでは、オゾン、水蒸気、気温を二酸化炭素及びメタンのバイプロダクトとして導出している[Saitoh et al. 2016]。
TANSO–FTSのTIRバンドのV1の二酸化炭素及びメタンプロファクトのデータ質検証はすでに実施されている[Saitoh et al., 2016, 2017; Holl et al., 2016; Zou et al., 2016; Olsen et al., 2017]。まず、本研究では、評価されたバイアス補正値をTANSO–FTSのTIRバンドの二酸化炭素データに適用し、北アフリカの上部対流圏で、MOPITT(Measurement Of Pollution In The Troposphere)の一酸化炭素濃度とTANSO–FTSのTIRバンドの二酸化炭素濃度の変動を比較した。比較の結果、上空のMOPITTの一酸化炭素濃度とTANSO–FTSのTIRバンドの二酸化炭素濃度は両者とも3月から5月にかけて高くなっており、バイオマス燃焼に起因する高濃度の一酸化炭素及び二酸化炭素の空気塊が上空に輸送されたことが示唆される。
次に、TANSO–FTSのTIRバンドのV1のメタン濃度プロファイルは中低緯度の対流圏で航空機のメタン濃度プロファイルと概ね1%以内で一致していることがわかったので、本研究ではインド上空に着目し、TANSO–FTSのTIRバンドの高度層ごとのメタン濃度の変動を調べた。本研究で明らかにした高度層ごとのメタン濃度の変動はChandra et al. [2017]で示されたメタン濃度の変動と概ね同様の特徴を示していた。しかしながら、本研究のTANSO–FTSのTIRバンドのメタンデータの解析からは、下部対流圏のメタン濃度変動がカラム平均濃度(XCH4)の季節変動に及ぼす影響が、Chandra et al. [2017]の結果と比べると、より大きいという結果になった。
本研究では、ACE–FTS (Atmospheric Chemistry Experiment–Fourier Transform Spectrometer)及びオゾンゾンデデータを用いて、TANSO–FTSのTIRバンドのV1の二酸化炭素プロダクトと同時導出されたオゾンプロファイルの検証解析を行った。TANSO–FTSのTIRバンドのオゾンデータは夏期の下部対流圏に若干バイアスがあるものの、先験値データ[MacPeters et al., 2007]と比べるとACE–FTS及びオゾンゾンデデータと概ねよい一致を示していた。TANSO–FTSのTIRバンドの最下層のリトリーバル層(地上から857 hPa)のオゾン濃度には、中国大陸で濃度が高く日本の東側に行くにつれて濃度が低くなる特徴が見られ、TANSO–FTSのTIRバンドで対流圏大気汚染物質が検知できる可能性が示された。
TANSO–FTSのTIRバンドのV1の二酸化炭素及びメタンプロファクトのデータ質検証はすでに実施されている[Saitoh et al., 2016, 2017; Holl et al., 2016; Zou et al., 2016; Olsen et al., 2017]。まず、本研究では、評価されたバイアス補正値をTANSO–FTSのTIRバンドの二酸化炭素データに適用し、北アフリカの上部対流圏で、MOPITT(Measurement Of Pollution In The Troposphere)の一酸化炭素濃度とTANSO–FTSのTIRバンドの二酸化炭素濃度の変動を比較した。比較の結果、上空のMOPITTの一酸化炭素濃度とTANSO–FTSのTIRバンドの二酸化炭素濃度は両者とも3月から5月にかけて高くなっており、バイオマス燃焼に起因する高濃度の一酸化炭素及び二酸化炭素の空気塊が上空に輸送されたことが示唆される。
次に、TANSO–FTSのTIRバンドのV1のメタン濃度プロファイルは中低緯度の対流圏で航空機のメタン濃度プロファイルと概ね1%以内で一致していることがわかったので、本研究ではインド上空に着目し、TANSO–FTSのTIRバンドの高度層ごとのメタン濃度の変動を調べた。本研究で明らかにした高度層ごとのメタン濃度の変動はChandra et al. [2017]で示されたメタン濃度の変動と概ね同様の特徴を示していた。しかしながら、本研究のTANSO–FTSのTIRバンドのメタンデータの解析からは、下部対流圏のメタン濃度変動がカラム平均濃度(XCH4)の季節変動に及ぼす影響が、Chandra et al. [2017]の結果と比べると、より大きいという結果になった。
本研究では、ACE–FTS (Atmospheric Chemistry Experiment–Fourier Transform Spectrometer)及びオゾンゾンデデータを用いて、TANSO–FTSのTIRバンドのV1の二酸化炭素プロダクトと同時導出されたオゾンプロファイルの検証解析を行った。TANSO–FTSのTIRバンドのオゾンデータは夏期の下部対流圏に若干バイアスがあるものの、先験値データ[MacPeters et al., 2007]と比べるとACE–FTS及びオゾンゾンデデータと概ねよい一致を示していた。TANSO–FTSのTIRバンドの最下層のリトリーバル層(地上から857 hPa)のオゾン濃度には、中国大陸で濃度が高く日本の東側に行くにつれて濃度が低くなる特徴が見られ、TANSO–FTSのTIRバンドで対流圏大気汚染物質が検知できる可能性が示された。